2012年12月22日土曜日

【読書メモ】日本を滅ぼす消費税増税 (講談社現代新書)

日本を滅ぼす消費税増税 (講談社現代新書)
菊池 英博
講談社
売り上げランキング: 17,148

今回はHONZとは関係なしに経済についての本を読んでみた。
著者は経済学者の菊池英博氏。 納税者として消費税が上がることは気が重い。だから反対と言いたいが、もう少し掘り下げて知りたいと思った。なぜ消費増税なのか、そして、著者はそれに対してどのような施策があるのか。

先日(2012年12月16日)には衆議院選挙もあり、各政党が消費税に対しては大きく増税容認と反対とにわかれている。ただ闇雲に反対する政党を支持するのもどうかと思った次第である。
本書では、現在の日本経済を平成恐慌であるとし、過去の昭和恐慌、米大恐慌にふれながら、日本が如何に深刻な状況か、消費増税が如何に間違っているかを過去の政策とグラフを持って具体的に教えてくれる。本書を読み終わった後は、現在はデフレに対して真逆の政策を行なっていること、そして、その原因の一端は政府・役人・御用学者の自虐的発想やら、財務省の見栄の問題など、なんだかな~と思わせる原因が見えてくる。最後に著者は、速やかに現在の自虐的発想を捨て、過去の歴史に学びながら適切な緊急政策を取るべきであると結んでいる。


消費増税に対しての理由と一つとして、日本もいずれギリシャのようになるという説明がなされているらしい。しかし、著者はこれは誤りと指摘する。ギリシャは債務国であり、国債の70%は海外投資家が保有する一方、日本は体外債権国であり、国債の95%は日本国民が保有する。経済の体質が全く異なるのである。(なるほど)

歴史に触れる中で、米緊急大恐慌や昭和恐慌にも触れており、現状の経済状況が如何に深刻なものかもグラフを交えて説明している。本書を読んだあとでは、経済についてちょっとわかったような気がする。まぁ、わかった気がするだけでも僕にとっては大進歩だ。新書でこの内容は充分お得だ。

以下、個人的なメモ


 本書では、米国大恐慌と昭和恐慌についても説明している。本書のいろいろな解説を踏まえて書この歴史をなぞるとなるほどと納得させられるところが多い。今時分はWIKIペディアで調べればだいたい分かる内容だが、整理したかったのでざっとメモをしておく。

【米国大恐慌について】
第一次世界大戦後の結果を受けて1919年以降、好景気に湧く。結果、株価の上昇ブームが起こる。いわゆるバブル景気である。そして1929年ニューヨーク株式市場の大暴落。次々と銀行・企業が破綻してくなかで、当時のフーバー大統領は市場原理主義にもとづき特別な救済策を講じなかった。
その結果、税収が減っていく。1932年、ここで大統領のとった政策は連邦税(国税)への初めての増税である。結果、物流へも増税の影響が波及し、米経済は大恐慌へ発展していった。

では、どのような対策を講じたか。
1933年に就任したルーズベルト大統領は金本位制を廃止し、管理通貨制度へ移行する。更に国債を増発して公共投資を増やした。ニューディール政策である。結果は、1935年から36年にかけて物価は上昇、GDPも増加して税収も増加した。1940年には名目GDPも恐慌前の水準に戻り、恐慌は解消した。
【昭和恐慌】こちらも第一次世界大戦の結果を受けて米同様、バブル景気に沸き、1920年に崩壊。更に追い打ちで1923年に関東大震災。恐慌と震災対応のまずさから1925年からデフレになり、中小の銀行が取り付け騒ぎで相次いで倒産。(う~ん、この辺は歴史でやったな。それと、恐ろしいほど今と重なる。。。。)

では、政府はどのような政策をとったか。1929年に首相に就任した浜口雄幸は井上準之助大蔵大臣とデフレ政策を進めていく。緊縮財政と金本位制の復帰である。金本位制は自国通貨を金の量で通貨の供給量をコントロールすることになるので、金を購入しないと必然的にデフレとなる。だから、金を購入しようとしてバランスを取るにはお金が必要だったが、当時はお金が足りないので無駄遣いをしないよう緊縮財政を徹底することになる。
結果はGDPが前年比で10%近く下落してしまった。さらに、浜口首相と、井上大蔵相は相次いで暗殺されてしまう有様。(怖い・・・)

どういうわけか、当時のマスコミ(主に大新聞)はデフレ政策を支持。不思議だ。結果的にこのまま戦争に突き進んでいくわけである。

その後、1931年に犬養毅内閣が組閣する。蔵相は高橋是清。ここからデフレ政策の全面的な転換が行われる。金本位制の取りやめと金融緩和。その結果、1932年にはデフレは解消した。

2012年11月18日日曜日

【読書メモ】アメリカは本当に「貧困大国」なのか?

アメリカは本当に「貧困大国」なのか?
冷泉彰彦
阪急コミュニケーションズ
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本書は堤未果氏の『ルポ 貧困大国アメリカ』とあわせて読んでみた。同じアメリカを語る二冊の本だが、こちらは、堤氏の著書への反証という形をとる内容となっているらしい。つまり、アメリカの格差社会は本当に絶望的なのか?である。

著者にとって、堤氏の著作は格差・貧困を告発しておいて、それらの被害者に対する心からの同情や連帯感が感じられない点や、それらの単なる観察で済ませてしまった点に違和感を覚えたとしている。
また、悪い面ばかり強調して、「アメリカの機会の均等」制度についての説明がほとんどされていないといった点も気になるらしい。そこで本書では、機会均等を実現するための各種の奨学金制度についても説明している。

本書を読んで、堤氏の本を読んだ後の悲壮感がどこまで緩和されるのかなと思ったが、制現状が厳しい状況であることに変わりはないといったのが読んでみた感想である。ただ、奨学金制度についての具体的な説明は興味深い。

読み進めると堤氏への反証はそれほど厳しくないといった印象だ。むしろ、本書の発売時(2010年7月)時点でのオバマ政権の対応について苦しいながらもうまくやっているといった内容である。「チェンジ」を掲げたオバマ政権の国際社会への発信内容について、「抽象的な理念と具体的な施策との間に連続性を持たせたメッセージで、それらはしっかり伝わっている」と褒めている。また、医療保険改革も、本書発売時に上院案を可決したことを評価をしている。このあたりは、本書にも触れられているとおり、本書発売時点で具体的な政策が発表される前であるため、読んだ感じではぼんやりする。メッセージを評価するといっても(政治的には重要かもしれないが)イマイチ実感がわきにくい。

本書では、ティーパーティーについてもふれられている。貧困や格差を語る上で、ティーパーティーのような草の根保守について語ることはアメリカ社会を語る上で重要だという。たしかに、ティーパーティーは町山氏の著書『99%対1%アメリカ格差ウォーズ』でも紙面を割いて解説されている。

本書の最後では、移民の問題にもふれているが、色々あって大変な国である。

【読書メモ】99%対1% アメリカ格差ウォーズ

99%対1% アメリカ格差ウォーズ
町山 智浩
講談社
売り上げランキング: 379

ちょうど本書を読んでいるタイミングでアメリカ大統領選挙が行われた。本書の知識を踏まえて選挙をみると、単にどっちが勝った、負けただけでなく、どのような支持団体が、なぜ、その政党を支持するのかがわかってくる。

僕のアメリカについての知識は義務教育、そして、高校の日本史と世界史の時にならったアメリカと、あとはメディア(映画含む)からの断片的かつ偏った知識のみ。はて、この知識でもって、本書を読むと、自分はアメリカについて何も知らなかったなと痛感。(それはそうかもしれないが(笑))

かいつまんでいうと、アメリカ大統領選挙では、東部と西部に支持者の多い民主党と南部と中西部に支持者の多い共和党という二大政党が争っている。

民主党支持基盤には人口の多い大都市があり、経済・文化の中心を占める地域だ。つまり、多民族であり、平均年収も比較的高く、人口中絶や同性愛者の権利も守り、銃規制も求める「リベラル」な人が多い。
一方、共和党支持者の多い地域は、農業や製造業が中心の大きな田舎がほとんど。白人率も多く、平均年収も低い。人工中絶、同性愛にも反対。銃規制も反対。保守と言われる人たちが多い。


共和党=保守と聞くと、なんだか規則やら、旧い考えやら頭が硬そうなイメージだが、実は共和党の理念は「自由」。自由市場、自由競争、小さな政府なのだ。そう考えれば、たしかに銃規制に反対というのは、つまり、銃を持つ自由を主張するのもわかる話しである。
民主党の理念は「平等」。だから、福祉は充実してみんなを満足させる。そして、公共事業も増やして雇用を創出して貧困を減らしたい。さらに富裕層からは税金もたくさんとって貧しい人たちへ分配。
以上から、「自由」の共和党と「平等」の民主党がバランスを取りながらアメリカは成り立つ国家なのだ。

次に、支持基盤について。南北戦争では、奴隷制度廃止を主張した共和党と、奴隷制度維持を主張した南部連合政府との戦争であり、南部連合政府は民主党である。だから、南部はもともと民主党の支持基盤だった。

では、なぜ今、南部は共和党支持層が多いのか。それは、1929年の大恐慌がきっかけだった。当時、ニューディール政策を行なって経済を建てなおしたのはご存知、ルーズベルトで、民主党だ。ニューディール政策は政府の積極介入と富の再配分によって貧富の差を縮めようとするものだから、社会主義と資本主義の間のようなもの。社会民主主義だ。この政策は人種にも拡大して適用されたから、労働者には支持される一方、南部の自由主義者には受け入れがたかった。そのため、民主党支持だった南部の人たちは共和党支持へと回ることになる。

共和党はさらに、ニューディール政策の社会自由主義から、規制緩和、福祉削減、富裕層への減税、公共事業の民営化などを訴える新自由主義が提唱される。

このあたりの知識を踏まえて本書の本編に入る。
まず、驚いたのがTV局であるFOXニュース。日本で放送局というと形だけは中立、公平を歌っているが、FOXニュースには当てはまらない。ここは、メディアという手段を使った翼賛団体なのだ。民主党のオバマ大統領をテトリス・人種差別主義者と呼んだりやりたい放題だ。そして、しまいには巧みな映像編集を行なって公然と捏造報道を行うのである。(事実が明らかになると後に謝罪する場合はあるが)

それから、ティーパーティーという支持団体の存在だ。この団体の名前は1773年のボストン・ティーパーティー事件(茶会事件)からきている。本国イギリスからの紅茶などのかけた高額の税金に反発した事件である。オバマ大統領が掲げた増税政策、医療保険改革に対する強力な反対運等を繰り広げる。

医療保険改革が出てきたので触れておくと、日本では当たり前の公的な医療保険がアメリカにはない。だから、お金のある人が自前で保険に入れればよいが、所得の低い人は保険に入れない。つまり、高額の医療費を払って治療するか、治療を諦めるしかないのである。この公的な医療保険政策に反対する共和党や、ティーパーティーの存在自体が日本にいると不思議でならないかもしれないが、本書を読んで共和党の由来、ティーパーティーの支持母体を見てみると、その理由もわかってくる。

本書では、他にも、凄まじい中傷CMや、メディアのバトルなど、こんな国が世界のリーダーなのかと思うと若干不安に思ってしまうが、まぁ、日本もひどい状況なので、選挙で少しでも良くしていきましょう(笑)

2012年11月10日土曜日

【読書メモ】アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)
町山 智浩
集英社 (2012-07-20)
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著者は映画評論でお馴染みの町山智浩氏。TBSラジオの番組での町山さんの映画批評は毎回話しに引き込まれてしまう。そんな町山さんの本を前々から読みたいと思っていた。

本書は、集英社のスポーツ雑誌「Sportiva」に連載されたエッセイを集めた単行本『アメリカ人は今日もステロイドを打つ』(2009年2月)の文庫化。内容自体は3年前のものとなるが、本書も登場する人物が僕の世代にドンピシャなのであっという間に読んでしまった。

僕にとってカンセコは当時、TVゲームでバカスカ打つキャラクターだったから凄い選手というイメージを持っていたし、マグワイアもテレビでホームランを量産する映像を見たからお馴染みの選手だ。ただこの二人、ステロイドを打つ仲だったというのはショックだ。




アメリカにおけるステロイドの実態について本書で触れられていることを簡単に書くと、ステロイドの使用者の15%はプロアスリート。残りの85%はアマチュアに広まっている。そう、アマチュアの方にむしろステロイドの使用が広まっているのだ。ステロイドの一番の危険性は、「ロイドレイジ」といわれる。これは、怒り・憂うつ、自殺衝動を誘発する副作用のことで、有名WWEレスラーが妻子を殺して自分も自殺するという悲惨な事件があったが、これも、ステロイドが原因らしい。
(その後の取材調査で、「ロイドレイジ」のような副作用が起こる可能性はステロイド使用者の5%に過ぎないことが判明するが)
薬物という反則を使って大きく、強くなるという男性の欲望だけでなく、女性も整形とそして、ステロイドいう手段を使ってきれいになろうとするひともいる。ステロイドは手軽に利用できる環境なのだろう。

僕が洋楽にハマった80年台から90年台はアメリカのドラマや映画を貪るように見たから、そのイメージは自由の国、誰でも夢を叶えられる国という漠然としたイメージができあがっていた。ただ、本書でも触れているとおり、スポーツや俳優などでスターになれる人、食べていける人はほんのひとにぎり。実際は悲惨な事件が起きたり、いろいろ大変である。

【読書メモ】鉄道と国家

鉄道と国家─「我田引鉄」の近現代史 (講談社現代新書)
小牟田 哲彦
講談社
売り上げランキング: 161943

本書は鉄道と政治にまつわるエピソードを紹介する。 著者は小牟田哲彦氏で、鉄道に関する著作や紀行文の連載を多数執筆している。

日本の鉄道網はおよそ二万七千キロ。その中には路線単独で赤字の路線も存在する。資本主義の観点から見ると、そのような路線が存在することは不思議なことである。しかし、著者は、鉄道は経済原理以外の要素、公共交通機関という性格を帯びているためであり、公共性が存廃の要素に関わることは政治の力に左右されるのは必然と著者は語る。特に、日本の鉄道は「政治路線」と言っても過言でないらしい。

 新幹線に使用されている線路の幅は国際標準軌であるのに対し、他の国内の在来線はそのほとんどが、それよりも狭い狭軌と呼ばれる規格にそって建設されている。それななぜだろうか。
鉄道敷設を進めた明治以降、日本は一刻も早く欧米列強に追いつかなければならない。そうなると、なるべく安く、より広い地域に鉄道を普及する必要がある。一方で、確実な輸送力を確保するためにしっかりした路線建設が必要となる。結局、当時は一刻も早く整備をすすめることを優先したようである。

軍事にとって、鉄道輸送の重要度は極めて高い。我が国がそのような認識を持ったのは西南戦争で、兵員や物資の輸送に活用したのがきっかけとなった。また、当時、それまでのフランス軍制から、普仏戦争で勝利したプロイセン(ドイツ)軍制に移行し、そのプロイセンが鉄道輸送を活用していたことも、鉄道輸送に着目するポイントになったのである。
日清・日露戦争の頃には軍事輸送体制がほぼ確立する。そして、その頃の路線は、現在のJRの主要な営業路線となって今に至る。今日の鉄道も戦争が元となっているのである。

鉄道誘致は地域に利益をもたらすと考えられたことからその地域の政治家は必死になって誘致合戦を繰り広げた。それは、我田引水をもじって我田引鉄と揶揄されるほどの露骨な誘致合戦だった。東京と新潟を結ぶ上越新幹線。新潟が田中角栄の故郷だからというのは有名な話。また、我田引鉄による停車駅設定の例として、岩手県と宮城県を走るJR大船渡線が挙げられている。大船渡線は、そのいびつな線形は、びっくりするほど露骨であり、これらの露骨な政治的な駆け引きを読むと、えげつない政治家がいるんだなと思ってしまう。

利用者が少ない路線は当然赤字に陥る。地方の赤字ローカル線が廃止される昨今、これらを何とかしなければならないという考えも当時はあった。しかし、当時鉄道建設審議会の小委員長であった田中角栄元首相が赤字を出しても良い。国鉄の役割であるという主張をした。これが元で赤字路線はそのまま赤字を垂れ流し続けたのである。

最後は、海外への鉄道進出に触れられており、今後の日本の鉄道のあり方について触れられている。個人的には、せっかく世界に輸出された日本の車両が某国のいい加減な運行で事故を起こして、しまいには埋められちゃうような映像は見たくない。輸出先は民度も含めて慎重に選んだほうがいいんじゃないかと思います(笑)

2012年9月30日日曜日

【ちょっと休憩】電子書籍について

楽天から7月に電子書籍端末「kobo Touch」が発売された。2010年暮れに佐々木俊尚氏の『電子書籍の衝撃』を読んで以来、著作権でもめているはなしなど、なかなか日本で普及しそうもない状況だったけれども、やっと日本に表立って電子書籍が騒がれるようになったと感じた。

楽天koboは、個人的に手軽に電子書籍に入れるかなとかなり期待していて、チェックをしていた。しかし、実際は8月末時点で日本語書籍6万コンテンツを目標にしていたが、実際はそれに届かなかったり、設定ソフトの不備で購入した人が初期設定できなかったり、いろいろ騒がれて(不評?)いて残念だけれども、個人的には電子書籍はかなり気になっているのでここで一旦整理しておこうと思う。

【巷の反応】
 楽天以外にもすでにソニーからReaderも発売されていて、アマゾンのKindleも日本で発売を控えている状況である。(2012年9月現在) 電子書籍端末については色々なサイトでレビュー記事が上げられているので参考にするとよいだろう。
一方で、巷のレビューではどうも、そのスペックにポイントが行きがちだ。(やむを得ないかもしれないけど)自分にとって何が必要で何が必要ないかを整理しておく。使わない機能があってももったいないだけなのだ。

【そもそも自分は何を重視するか】
 ●軽さ・手軽さ
 これは電子書籍端末の最大の魅力でしょう。読書にハマると常に本を読みたい衝動がある一方、重たい本を持ち歩くのが苦になってくる。あと、保存場所にも苦慮する。本は絶対に捨てない主義なのでとっておきたい。一方で、悲しいかな、本棚を確保できる十分なスペースも限られる。そんな中で、この要素はとても大事。つまり、端末が重くなってしまっては意味が無いわけで、より軽い機種が欲しいかなと。

 ●バッテリーの持ち
 そうなってくると、バッテリーの持ちも大事になってくる。スマホみたいに常に充電しないとダメなんていうのは、論外なのだ。(この点でiPadは候補から。。。。)

 ●値段
 安いに越したことはない。このあたりだと、kobo TouchとReaderの一部機種、Kindleの一部機種がターゲットになってくる。7千円から1万円前後かな。

 ●3Gは・・・いらないかも
  3G回線機能があればどこでも書籍を購入できる。。。。って今では書店でもWIFI使えるからいらないかな。基本は自宅で買って、外出先ではひたすら読むだけだから。

 ●やっぱりコンテンツが揃っていないと話にならない
 液晶がきれいに越したことはないし、処理速度が早いほうがいいに決まってるけど、なんといっても、読みたい本がないというのはダメでしょう(笑)
 僕の読むノンフィクションモノは残念ながら楽天のラインナップにもなく、koboはちょっと残念だが、今後のコンテンツの充実度合いに期待したい。

【求める機能】
 ってことで、整理すると、以下のようになる。至ってシンプルだと思うのだが。
 ・軽くて、バッテリーの持ちがいいもの。
 ・値段は安い方がいい。
 ・画面は白黒で十分→E inkの画面でよい。
 ・メモや付箋機能など、気になったところをチェックできる機能、そして、それらを後で見れるような機能

【出回っている機種は?】
楽天 kobo Touch
SONY Reader
Amazon kindle

【気になること】
 楽天の電子書店「Raboo」閉鎖のニュースがあった。これによっていろいろと問題が明らかになった。上記書店で購入したコンテンツは、ダウンロードできなくなるというもの。これ、「ダウンロードできるんだからいいじゃん」と思うなかれ。ストレージって寿命があるのよ。結局割り切りなのかな。。。。
 あとは、コロコロとサービスを変更しないところ、という意味ではAMAZONかと。

 この点については関連記事があったのでリンクを張っておきます。
鷹野 凌氏のブログ
IT media 2012/9/26
Impress watch 2012/9/26

【結局何がおすすめ?】
 現時点では、どの端末も一長一短で、自分では機種を絞りきれていない状況。2012年9月現在、AMAZON Kindleがまだ発売前なのでこれが発売されたら状況を見極めたいと思う今日この頃なのであります。


電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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2012年9月3日月曜日

【読書メモ】牡蛎と紐育(ニューヨーク)

牡蛎と紐育(ニューヨーク)
マーク カーランスキー
扶桑社
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 著者は25カ国に翻訳される著書があるベストセラー作家。「鱈-世界を変えた魚の歴史」(飛鳥新社)や「塩」の世界史-歴史を動かした、小さな粒」(扶桑社)などがある。

本書は、ニューヨークではかつて、かつてたくさん牡蠣が食べられていた話から、その豊富なレシピとニューヨークの歴史を紹介してくれる。 僕自身、牡蠣とニューヨークは結びつかなかった。豊かな自然でとれる牡蠣と大都市ニューヨークはあまりにもかけ離れ過ぎている。

以前読んだ「鉄と魔法使い」にも豊かな山々がもたらす栄養豊かな海で牡蠣は育つとあったし、「コンテナ物語」では、大型船が行き来して発展するニューヨークの姿を読んだので、開発が進んでいる大都市:ニューヨークで牡蠣なんかとれるの?という印象だった。

だが、港には大量の食べ終わったあとの牡蠣の殻が積み上がっている当時の様子の絵など、本書を読んで、当時、大量の牡蠣がニューヨークで食べられていたことを知った。

本書では、当時食べられていた様々な牡蠣料理が臨場感いっぱいに描かれていて、牡蠣が食べたくなる。ただ、Rのつかない月の牡蠣は食べないほうがいいようです。(これは、痛むというより、産卵期に入ってしまうため、味が落ちるという事らしいです)

2012年8月4日土曜日

【読書メモ】スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質
ジェイ・バーレサン
中央公論新社
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この本は、身近な17の化学物質について、構造と働きについて説明した本である。化学構造式を元に説明するが、最初に構造式の読み方をわかり易く説明している。
さらに面白いのは、その化学物質と歴史との関わりについて説明している点である。

大航海時代、まだ冷蔵庫などの保存技術がない当時は、船員は栄養不足による壊血病に悩まされた。塩漬けの牛肉や豚肉だけでは十分な栄養は取れないのである。だが、それを解決する物質が発見された。アスコルビン酸である。これはビタミンcという名前で有名である。この物質の発見は大航海時代を大きく変えた。
15世紀の航海では、航海中の壊血病で多くの乗員が命を落としている。ポルトガルの探検家、バスコ・ダ・ガマの航海では、アフリカの南端を回ったときに上院160名中100名が壊血病で命を落としている。実に半数以上である。壊血病で乗員全員が死亡して船だけ漂っていたという記録も多く残っているのである。この話を聞いただけでも当時の航海が命がけだったことが伝わってくる。

シルクは蚕からとれる糸である。昔から重宝され、それらの織物を身にまとうことは裕福な人々に限られた。夏は涼しく、冬は温かい。そして、滑らかな肌触りと特徴ある光沢はその魅力にもなっている。それらはすべて、シルクの化学構造に起因する。その構造は人口での作成を困難なものにしたが、ついに成功する。それは、ロープやパラシュートなどの軍事用を始め、衣服、スキーウェア、カーペット、船の帆などに使われている。

・・・などなど、エピソードがいっぱい。

2012年7月23日月曜日

【読書メモ】ウナギ 大回遊の謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)

ウナギ 大回遊の謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)
塚本 勝巳
PHP研究所
売り上げランキング: 375


本書は長年謎だったニホンウナギの産卵場所を特定し、その生態を明らかにするまでをドラマチックに語ってくれる。新書だがカラーページもあってわかりやすい。
著者は海洋生命科学者。世界で初めてウナギの卵を採集しニホンウナギの産卵場を特定する「世界的ウナギ博士」である。

ウナギは海で生まれ、成長するに従って、プレレプトセファルス、レプトセファルス、シラスウナギ、クロコウナギ、黄ウナギ、そして銀ウナギという形態をとる。シラスウナギは川の河口でよく獲られるものだ。卵から孵化して河口に到達するまで半年を要する。

では卵はどこで生まれるのか?世界には十九種・亜種のウナギが生息するが、そのうち半数については産卵場が推定されている。そう、推定されているのであって、特定はされていないのである。発育のすすんだレプトセファルスが採取された場所であり、卵や産卵直前の親が存在する地点は残念ながら特定された種類は少ない。

1922年にヨーロッパウナギの卵が大西洋のサルガッソ海で孵化していることが論文で発表されるが、ここはヨーロッパからはるか数千キロも離れたところに位置する。ウナギは孵化してから数千キロを旅しているのである。そして、数千キロの旅には海流が多大に影響する。

日本では、1967年のレプトセファルスの発見をきっかけに研究が進んでいく。ウナギの産卵場所は、レプトセファルスの耳石という年輪状に刻まれる小さな石の分析と海流の緻密な計算により徐々に特定されていく。そこでは、大型の調査船を使った航海が何度も行われ、失敗を繰り返しつつ徐々に産卵場所を特定していく過程が読んでいて、とても引き込まれる。
最終的に、産卵場所が日本から遠く離れたグアム島の西側の地点に特定されるが、その場所は日本からはるか2300kmも離れたところである。

ウナギは海流に揺られながら長旅を経て日本へやって来る。海流の流れが少しでも変われば日本には到達できないわけで、大変デリケートな生き物ではないだろうか。今うなぎがとれないらしい。本書を読んだ2012年7月もウナギが高騰している。そんなウナギは人間がちょっとやそっとやったぐらいではどうにもならないのかもしれない。


2012年6月20日水曜日

【読書メモ】『医者は現場でどう考えるか』

医者は現場でどう考えるか
ジェローム グループマン
石風社
売り上げランキング: 47470

今年読んだ本の中で個人的に一番のヒット。高度な医学知識を身につけた医者は、それらの知識を実際の現場で様々に応用して、的確な治療方法を瞬時に判断し、治療に当たらなければならない。ちょっとしたミスは、患者の人命にも関わることもあるのである。

患者はコンピューターではなく、千差万別な生きている人間だから、症状を話す言葉もそれぞれ。同じ患者でも話す言葉、単語が異なる。そして、医師もまた人間であり、ミスをゼロにすることはできない。

本書は、医師である著者が、過酷な医療現場でどのように学び、そして、医療の現場で起こりうる(または起きてしまった)失敗、そしてそれらの失敗をどうやって減らしていくのかといった点について、実際に取られているいろいろな現場での取組みを医師の声を元に「現場の医師はどう考えるのか」を明らかにしてくれる。

この本では、治療効果もなく、具体的な原因の分からない「やっかい」な患者を見事な方法でその症状の原因を特定し、適切な治療を行った医師が登場する。

彼らは単にスーパーマンなのだろうか。そして、彼らはなぜ、原因の特定に至ることができたのだろうか。彼らに共通するのは、過去の苦い経験を忘れずに覚えこみ、思考に組み込む。まず、失敗を忘れずに覚えるということが大事なのだ。嫌なことは忘れて・・・・これでは一向に問題は解決しないのだ。(耳が痛い。。。)失敗の原因を追求するのは業種が違えど同じだと思う。失敗の解決法のアプローチとして、としても参考になるかもしれない。

医師は患者と患者と挨拶を交わした瞬間から診断のことを考える。顔色、目や口の動き、座り方、立ち方、声の響き、呼吸の深さなど。研究によると、ほとんどの医師は患者とあった時点で即座に二、三の診断の可能性を思いつくらしい。病院の先生は頭がフル回転なのだ。

珍しい症例は、「症例報告」という会議で医療関係者に共有される。そこでは、実際にその症例に立ち会わなかった医師も症例を学ぶことができる。ただ、ここでは、医療のミスの経過については細かく分析されることはないらしい。だから、本書では、これらの場で徹底的に医療のミスについて究明されるように分析が必要であるとしている。

医療現場は、効率的に患者をまわすことが求められる。患者が多いのである。だがそういう状況は「ミス」を引き起こす原因となる。そのような状況にどうやってアプローチをすればよいだろうか。ここではある診療所のアプローチが紹介されている。そこの放射線科医は、同僚が撮影したX線写真を四〜五枚読影している。こうすることで各々の読影の結果を比較して、相互チェックするのである。間違いをみつけることはもちろん、同僚の間違いから学ぶこともできるのだ。

本書では、医師の考え方を述べているが、そこには患者の言葉も重要なのだ。「最悪の考えられる症状は何ですか。」、「他に何が考えられますか。」患者や、患者の親族によるこういう言葉は時に医師の狭まった視野を広げてくれる。

2012年6月14日木曜日

【読書メモ】『閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義』

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
イーライ・パリサー
早川書房
売り上げランキング: 9212

HONZ.JPで取り上げられた本。普段、良く利用するGoogleやYahooなどの無料の各種サービスでは、利用者に関する情報がいろいろ収集されていることは、十分わかっているつもりだ。検索サイトでの検索結果もそれらの情報を使ってより「役に立つ」検索結果がでるように「パーソナライズ」されてる。

じゃ、具体的に収集された情報はどの程度のレベルでどのように収集されているのだろうか。また、パーソナライズされる検索結果が突き詰められるとどんなことが懸念されるのだろうか。

この本を読み終わったら、Googleは便利だなぁって言っていた自分が脳天気に感じられてしまう。やっぱり、ただより高いものはないんだな、それを痛感する本である。じゃ、ネットは使わないかっていうと、そうも言ってられない。何も知らないよりは、本書を読んだ上で、ネットの上の便利なサービスを利用したほうがいいんじゃないかと思いました。

GoogleやFaceBookなどのログインをして利用するサービスでは、ログイン情報とあわせて、どこで、どの時間帯に、どのくらいの頻度に、どのサイトのどのボタンをクリックしたか、などのいろいろな情報が収集されていく。そして、そこから膨大な計算がされて、各業種に使える情報として、見えないところで売買されていく。

無料のメールサービスでは、ログイン情報とメール文面からもいろいろな傾向情報がログインIDと紐付けられていく。だから、うっかりプロフィールなんかに性別、年齢、住んでいる場所なんかを入れた日にゃ、それはマーケティング上、とても貴重な情報となるわけです。

震災の時に、こりゃ便利だと自分も購入したiPhoneの無料通話ソフトなんかは、よくよく見ると、端末の情報(位置情報等)を収集する旨を規約に書いている。なるほど、これらの情報が手に入れて売っちゃえば、ソフトをタダにしても十分元取れちゃうってことなんですね。

検索結果が最適されることを「パーソナライゼーション」と呼ぶらしい。それはそれで便利だけれど、その行き着くところが、ログインしたら検索しなくても勝手に求める情報が表示されるWebページ。なんだか気持ち悪い。

検索結果が自分に便利なものだけが表示されるだけならまだマシかもしれない。もっと怖いのは、自分に都合のいい情報しか手に入らなくなるかもしれないってこと。自分の知りたいニュースを検索したら、自分と同じ信条、似たような意見に関するページが検索結果の上位に出てくるようになる。ということは、知らずに自分の思考が狭まってしまう可能性があるってことが語られている。なんか怖いですね。

いろいろ考えさせられた本。おもしろかったです。

2012年6月4日月曜日

【読書メモ】こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたこと

こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたこと
ヨリス ライエンダイク
英治出版
売り上げランキング: 11716
HONZ.JPで取り上げられた本。著者はNVJ(オランダ・ジャーナリスト教会)”最も影響力のある国際ジャーナリスト40人”のひとりに選ばれたジャーナリスト。

世界中で起きているさまざまな紛争の現場にはジャーナリストが取材に出かけて、現地の状況をテレビなどのメディアを通じて僕らに伝えてくる。僕らは現地からの中継の画面を見て、臨場感溢れる中継画像に興味を惹かれる。しかし、そうして中継される内容のセリフ一言一言が現場ではなく、紛争地から遠く離れた大都会にあるメディアのビルの中で考えられたものだったらどう思うだろうか。本書は著者が中東特派員として、現場から中継や取材を行ったときの経験を語る。

現場からの中継も、結局放送局側から指定されたセリフを話すように言われる話とか、中東でのクーデター後にニッコリしている現地の子供が掲げたアメリカの国旗が実はそういう中継用の国旗を手配する会社が用意したとか、自分の想像を超えてた。本当なんだろうか。

独裁国家では何もかもが信用出来ない。情報が隠されている、規制されるのはもちろん、リークされた情報も実はわざとリークされた意図的な情報であることもある。何もかもが正常ではない状態らしい。このような状況では、独裁国家についての情報そのものが怪しい。何を信じて良いのかわからない。

内容はかなりびっくりする事だらけだが、だからといってメディアは全て信じられないと声をあげようとも思わない。そんなコトしてたら疲れてしまう。結局こういうこともあるんだよと肝に銘じておけばいいのかなと。

【読書メモ】建築には数学がいっぱい!?

建築には数学がいっぱい!?
竹内 薫 藤本 壮介
彰国社
売り上げランキング: 213387

HONZ.JPで取り上げられた一冊。本書は、理学博士の竹内薫氏と建築家の藤本壮介氏の対談形式。本当に数学がいっぱいです。ただ、読んでいると建築のことがあまり印象に残らなかった。。。建築をとっかかりにいろいろな数学の面白いお話を披露してくれるような内容だ。

完成予想図は本来三次元のものを図表という形で二次元で表現する。そこで出てくる一次元から四次元までを順に表現していく図表はなかなかおもしろい。最初、ピンとこなかったけれども、順を追って見ていくと納得してしまった。

また、スケーリングと対数では、建築で作成する模型のお話。建築に携わっている人は、単なる縮尺模型から実際の建物をイメージできるそうな。単に現物を縮尺しても、実際の建物とは違うらしい。ここでは、カブトムシを例に、カブトムシをそのまま人間と同じ大きさにすると、本当に力持ちなのか?という話があるのだが、これが面白い。しっかり計算して人間の大きさに換算すると大して人間と変わらないそうな。なんだ。

対数の話では自身のマグニュチュードの話も出てくる。マグニチュードは1変わると32倍違う。なんでこんなに違うかというと人間が違いを実感できる程度が32倍らしい。

建築に黄金比が採用されている(ようである)が、そこから、オーム貝の曲率やハヤブサの飛行経路などにも黄金比が隠れている。(対数螺旋)

他にもいろいろ取り上げられているけれど、もうお腹いっぱい。

【読書メモ】「当事者」の時代 (光文社新書)

「当事者」の時代 (光文社新書)
佐々木 俊尚
光文社 (2012-03-16)
売り上げランキング: 187

本書はHONZ.JPで取り上げられていた本。佐々木さんの著書は以前も「キュレーションの時代」を読んだが新書としてはボリュームのある本だった。本書も新書にしてはボリュームのある内容で読み応え充分。

本書は読み終わった後にいろいろ考えさせられる本だった。勝手に自分をマイノリティの立場に置いて、あたかも自分がマイノリティの代弁者のごとく発言する、「マイノリティ憑依」について、新聞報道の裏側から、戦後日本の被害者意識から、小田実による「べ平連」結成と活動の歴史、そして、学生運動へと、その歴史をたどっていくなかで「マイノリティ憑依」に陥ってしまうプロセスを明らかにしていく。戦後の被害者意識は僕自身、中学、高校の授業でも習って、かつての自分が戦争とその敗戦は「軍部が悪い」って意識に染まっていたなと思い返す。(ただ、一方で日本軍の戦略を分析した「失敗の本質」や、「IT時代の震災と核被害」を読んで、自分を含む日本の国民性にも原因があったんじゃないかと思ってる。)
佐々木さんの著書は「キュレーションの時代」もそうだが、単に知識としてだけでなく、読み終わった後も妙に考えさせられる内容だ。(読むと疲れてしまう。。。)

小田実氏や、本田勝一氏は学生時代に本を読んでかなり難しいおじさんだなぐらいにしか思っていなかったけど、本書を読んでどういう立場の人だったのかがとてもよくわかった。(本田勝一氏のNHK受信料拒否の本は学生時代の自分にはかなり強烈だった。。。)

そして、東日本大震災をめぐるうんざりするようなツイート。政府批判、メディア批判、いろいろなツイートがタイムラインを流れていたが、自分自身、多少の違和感を感じていたけれども、この本を読んですっきりした気がする。ああ、これは「マイノリティ憑依」なんだなと。
「当事者であれ」、「我々は望んで当事者にはなれない」、「他者に当事者であることを求めることはできない」。巻末での見出しだが、この部分を読んで、やっぱり、自分自身で気をつけるしか無いのかなと、他人をあれこれ言う前にまず自分自身ちゃんとしよう(笑)と思った次第。

NHK受信料拒否の論理 (朝日文庫)
本多 勝一
朝日新聞社
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2012年6月2日土曜日

【読書メモ】利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>
リチャード・ドーキンス
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 19636

本書は、「WIRED大学 新・教養学部必読書2「科学的思考」」に取り上げられていたので知った。ここで掲載された中で一位にランクされている。(2011年9月時点)科学本に興味を持った僕はここもチェックしていて、「マクスウェルの悪魔」「銃・病原菌・鉄 一万三○○○年にわたる人類史の謎」もここの記事をきっかけに読んだ本である。

本自体は名著であり、初版から30年を経過している。このような本のメモを書くのは、他にも素晴らしい書評を書いている人もいるので気が引けるけど軽くメモしておく。

「遺伝子」に「利己的」という言葉がついていて、「?」という感じだった。我々哺乳類を始め、命ある生命は細胞レベル、そして、遺伝子にたどり着く。そして、遺伝子はすべて利己的だという点についていろいろなケースを検証している。

動食物のすべての活動は、利己的にも利他的(母が子を守る、ある群れの一匹が自らを囮にして他の群れを守るなど)にも捉えることができる。だから利他的な動物もいるではないか、この利他的活動もレベルを変えればその群れにとっては利己的なのではないだろうかといったことなど、その他にもいろいろ書かれている。

利己主義と利他主義の淘汰は、「世代間の争い」や「雄と雌の争い」では、子供がいかに親にかわいがられるか(=餌をもらえるようにするか)、雌はいかに最小の労力で子供を育てるのか、雄はいかに楽に自分の遺伝子を残すかなどは、それぞれのケースをシミュレーションして説明していて、面白い。

「気のいい奴が一番になる」の章では、囚人のジレンマ・ゲーム、鳥のダニ取りゲームなどの具体的ケースを元に展開している。

本の厚さがかなりあるので、読み切った感はかなりあるが、どこまで理解できたかはわからない。分かった気でいればいいか。。。

2012年5月3日木曜日

【読書メモ】原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―

原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―
安冨 歩
明石書店
売り上げランキング: 504


本書は、原発問題をめぐる様々な言説を著者が解析する中で浮上してきた「東大話法」という概念について、諸々の言説を例に解説していく。

東大話法について以下の8つの定義を上げている。
1.自分の信念でなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
2.自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
3.都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。
4.都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す。
5.どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す。
6.自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する。
7.その場で自分が立派な人だと思われることを言う。
8.自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する。

読んでみると、何気ない日々の様々な言説について、ひとつひとつおかしいと思われる点を挙げていく内容。自分が如何に日々の言説について「おかしい?」と感じる能力が退化してしまったのかなと気付かされる。

後半では、「東大話法」に大きな役割を果たしている「立場」という概念について触れている。「職→役→立場」というところでは、日本の歴史における「立場」という概念が呼び名とともにどのように移り変わっていくのかを解説していく。興味深い内容だ。引用されている尾藤正英『日本文化の歴史』、同『江戸時代とはなにか-日本史上の近世と近代』という本がとても気になった。是非読んでみたい。

日本文化の歴史 (岩波新書)
尾藤 正英
岩波書店
売り上げランキング: 56170
江戸時代とはなにか―日本史上の近世と近代 (岩波現代文庫)
尾藤 正英
岩波書店
売り上げランキング: 219665

2012年4月30日月曜日

【読書メモ】新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)

新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)
上杉 隆
PHP研究所
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僕は上杉隆氏のファンでもなければ支持者でもないけれど、自由報道協会という媒体は支持しているし、震災の時や政治家の記者会見などは結構拝聴した。そんな中、上杉氏が出した本書では、「癒着メモ」公開ということでちょっと興味をそそられた。

内容は、上杉氏の暴露本だが、これを読めば、取材活動がどのように行われているのかがわかるかもしれない。一歩引いてみてもこれはこれで取材の裏側が覗けて興味深い。

【読書メモ】日本語作文術 (中公新書)

日本語作文術 (中公新書)
日本語作文術 (中公新書)
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野内 良三
中央公論新社
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HONZで紹介されていた本である。僕は以前、『理科系の作文技術』や、『日本語の作文技術』を読んで論文作りの際にかなり参考にさせてもらいました。本書は、今後僕の机の上が定位置になるだろう。事あるごとに読み返して、いろいろお世話になっております。この本を読んでから、過去に書いた読書メモ、ちょくちょく直し中。。。。

【読書メモ】『ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える』

ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える
井上 明人
NHK出版
売り上げランキング: 1534

本書はHONZ.JPでも紹介された本で、ゲーミフィケーションについて語られた本である。本書によるとゲーミフィケーションとは、「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するももの」として定義されている。そもそも、この「ゲーミフィケーション」という概念は2011年8月にガートナー社という調査会社が注目すべきテクノロジーの一つとして選んだ概念である。

ゲームというとTVゲームをイメージするが、本書では選挙の候補者のホームページ(オバマ大統領の選挙活動)や、ランニングの履歴管理(ナイキプラスやRUNKEEPER)や、ある地域へ訪れたことを記録すること(ロケタッチ、フォースクエアなど)を例にゲーミフィケーションについての説明とそれらの影響について述べられている。

いくつかのものはすでに知っていたが、選挙への活用例は思わずよく考えたなと感心してしまった。支持者は候補者のホームページ上に登録すると、どのように候補者のために役に立てたのか、例えば電話を何十世帯へかけたとか、いくら寄付をしたとかを記録すると、まるでロールプレイングゲームのようにレベルが上がっていき、レベルに応じた位が与えたれていく。その結果、支持者はまさにゲームを行なっているように支持活動に参画できるのである。よく考えたな〜と。

他にも、スターバックスの常連客へのサービスプログラムや、ディズニーの人事制度など、身近な例が色々出て来て興味深い。自分もプログラミングコードを勉強できる「コーデカデミー」をちょっと覗いてみたが、なかなか面白そう。

本書は、今、巷に色々あるサービスをうまい具合に整理していくれているような気もする。

【読書メモ】サラリーマンは自宅を買うな ―ゼロ年世代の「自宅を買わない生き方

サラリーマンは自宅を買うな ―ゼロ年世代の「自宅を買わない生き方
石川 貴康
東洋経済新報社
売り上げランキング: 6504

最近、自宅を購入するかどうか意識するようになった。同級生や、会社の同期ではすでに購入しているものもいて、親世代からは「早く買えばいいのに」と言われ始めている。

今まで全く意識してなかったので、税金のことやローンのことなど、基本的なことが全くわからないので、周りの声に促されて買うのは危険だなと感じている今日この頃。まずは、住宅購入について書かれていい本はないかとネットを探したところ、「NEWSポストセブン」というサイトに面白い記事を見つけた。「サラリーマンは自宅を買うな」である。はたまた刺激的なタイトルである。Amazonの評価は案内良い。とりあえず買って読んでみた。

内容は、タイトルからも想像したほどは過激な内容ではなく、ごく当たり前のことが書いてあった。「家を買ったほうがいい」とすすめる親の世代と自分の今の経済状況は全く違う。この点は自分もすごく納得なわけで、結婚して子供を育てて、車を買って、マイホームを建てて。。。。というストーリーを今の時代に当てはめるのは正直ちょっとつらいなと感じているのも事実。

一方で、定年後はどうするのか?リタイヤした老夫婦に気前よくアパートを貸してくれる家主はいるのか?気になるところである。著者は、実際に家主らしいので、その立場からも「問題無い。」と言い切っている。むしろ、最長35年もローンに縛られることで人生のあらゆる可能性の芽を摘んでしまうことになり、そちらのほうがロスであるというのが著者の主張している意見の一つでもある。

僕はもう一冊の『家を買いたくなったら』も読んでみて判断してみようと思う。


2012年4月16日月曜日

【読書メモ】鉄は魔法つかい

鉄は魔法つかい
鉄は魔法つかい
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畠山 重篤
小学館
売り上げランキング: 16922

本書は、HONZ村上さんおすすめ本。見た目は魔法使いのイラストが書いてある親しみやすい装丁の本だ。著者は宮城県気仙沼湾で牡蠣の養殖をしている漁師。

おいしい牡蠣は川が流れこむ汽水域とよばれる淡水と海水が混じりあった海域で育つ。そして、そこに流れ込む川の上流に植えられている木々がとても重要である。なぜ重要なのか。そこには、鉄が大きく関わってくる。鉄の魔法により美味しい牡蠣が育つのだ。本書では、それらの関連を科学的に説明してくれている。

最初、鉄と聞いていまいちピンとこなかった。要はこうなのだ。
豊かな海は、植物ブランクトンが豊富で、海藻が豊かになる。そして、動物プランクトン、小魚が増える。そして大きな魚も増える。結果、豊かな海となる。

植物は光合成を行う。光合成にも鉄が必要らしい。光合成に必要な葉緑素、この葉緑素ができるには「鉄」が必要となる。
また、光合成をして植物、植物プランクトンが育つには、チッ素とリンといった養分が必要。海では、チッ素は硝酸塩、リンはリン酸塩という形で水に溶けている。植物が海中に溶けている硝酸塩、リン酸塩を栄養とするためには、それぞれチッ素、リンに戻さなければならない。つまり還元をしなければならないのだ。ここでも「鉄」が重要になってくるのである。

鉄は、地上では酸素とむすびついて「サビ」という形で酸化してしまう。このままでは植物は鉄を吸収できない。吸収するには「フルボ酸」というかたちが最適らしい。この「フルボ酸」は、主に森林の腐葉土のなかで作られる。植物は「フルボ酸」という形で存在する鉄であれば吸収できるのである。つまり、腐葉土を育む森林がここで登場する。ゆえに豊かな海には豊かな森林が不可欠なのである。

人間の血は赤い。これはヘモグロビンのせい。ヘモグロビンには鉄分と酸素、呼吸後は二酸化炭素が結びついている。エビなどの甲殻類の血は青い。これは鉄分でなくヘモシアニンという銅が中心のものだから。

鉄の話から鉄分を上手に取るための料理の話も触れられている。ここは料理を食べる上で、非常に参考になる。
レバニラやあさり、牡蠣などの鉄分の吸収はとてもよく、含まれている鉄の二十パーセントも吸収される。これは吸収されやすい形のヘム鉄を含んでいるから。

のりやヒジキ、納豆やほうれん草などに含まれている鉄は吸収されにくい鉄らしい。これは非ヘム鉄という形だから。ピタミンÇや酢と一緒に取るといいらしい・・・

わかりやすくて楽しい本である。

2012年4月1日日曜日

【読書メモ】『IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)』

IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)
東 浩紀 飯田 豊 三上 洋 宮台 真司 村上 圭子 池田 清彦 円堂 都司昭 荻上 チキ 加藤 典洋 萱野 稔人 西條 剛央 酒井 信 神保 哲生 飯田 哲也 武田 徹 津田 大介 広瀬 弘忠
インプレスジャパン
売り上げランキング: 62018

本書はメディアでも比較的に名前を聞く(僕自身初めて聞く人もいるけれど)学者、ジャーナリスト、編集者ら17人によって、昨年の震災の時にどのように行動し、震災をどのように振り返り、そして、今後をどのように過ごすのか、といった点についてまとめられた本である。
前半は上記17人とは別に、Googleや、Yahoo!JAPANを始めとするIT企業の震災への対応を、中盤は各論客による震災時におけるさまざまなITの対応について、後半は震災の経験を踏まえて今後のITの可能性を示している。本書を読んで「そうそう、こういうこともあった」とか、「こんな動きもあったのか」と初めて知ったりすることもあり、震災を振り返るには丁度良い一冊かもしれない。

Googleがホンダパイオニアから提供を受けて作成した自動車・通行実績情報マップは自動車関係のメディアでも取り上げられていて、こんなことができるのかと情報を提供したホンダとパイオニアの技術と企業姿勢に感心してしまった。(後に、トヨタ日産も情報を提供し、広範囲な通行実績情報の表示が可能になった。)

MITメディアラボ伊藤氏によるSafecastは放射能の測定・公開をボランティアで行った。Safecastによる放射能測定ボランティアは1979年3月28日にアメリカで発生した「スリーマイル島原子力発電所事故」の周辺の放射能測定を行うエキスパートも参加するなどかなり本格的なボランティアだ。放射能測定は、測定値を適切に読み解く知識も必要で、Savecastでもその点を踏まえた活動を行なっている。放射能に関する情報はツイッター上でも議論が熱くなっていて何が本当なのやら、どれを信じで良いのやら正直良くわからなかった。もう少し勉強が必要かもしれない。

荻上チキ氏の「その時、検証屋はどう動いたか」はなかなか興味深かった。実際自分も、Twitterでデマの発生から情報源が特定されて、デマの発信者が糾弾されるところを目にしたからだ。良かれと思ってやったこと(RTしたこと)が結果的にデマに加担していた。。。。なんてことが、幸い自分はなかったが、知人からのRTがデマだったことが度々あったので、情報を伝えることは、特にあのような非常事態時における情報伝達は難しいことだなと痛感。チキ氏も検証屋はどの程度「役に立ったのか?」については、かなり控えめだ。このあたりは評価をするのが難しい。個人的にはこういう情報の整理屋さんがいてくれてよかったと思う。

福島原発における作業員の活躍を美談のように伝えているメディアについては若干の違和感を感じたわけだが、その辺は東電と政府への責任追及をする一方で現場の作業員への関心の低いということで酒井信氏が触れている。欧米メディアが復旧にあたる作業員をフクシマ50として賞賛している様を日本のメディアがニュースとして取り上げる一方で、現場の作業員に関する情報についてはなかなか取り上げられない。この点は、以前読んだ鈴木智彦氏『ヤクザと原発』でも触れている。負の部分を隠して正の部分を伝えるって昔に多様なことがあったような。。。あっ、大本営か。日本は昔からちっとも変わっていないのかなと読んでいて若干気持ちが沈んでいく。

津田大介氏の震災時におけるツイッターでのコメントは知っている人も多いだろう。ジャーナリストとしてツイッターを駆使してどのように情報を扱っていったのかは、一つの参考になるかもしれない。主観的なコメントを付けずにそのまま情報を流す、政府が発表する情報とそれに反対する情報の双方を流す、といったことである。とかくツイッターばかりの話題が先行しがちだが、震災時のメディアの対応についてもしっかり触れている。

宮台真司氏による「日本は<空気に縛られる社会>」であるという指摘は、とても鋭いと思った。酒井氏のところでも触れたメディアへの違和感についても自分で腑に落ちた。震災でもコンビニで並ぶ日本人というのも、あれはあれですごいことだが、<空気に縛られる社会>の産物なんだなといわれるとなるほど。。。。

というように、いろいろ読んでいて思うことしきり。日本人は戦前も戦後も<空気に縛られている>んだなということが一番印象的だった。

【読書メモ】いちばんやさしい地球変動の話

いちばんやさしい地球変動の話
巽好 幸
河出書房新社
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ここ最近読んだ「チェンジングブルー」、「銃・病原菌・鉄」、「なぜシロクマは南極にいないのか」を読んで気になったところがあった。人の移動と海流の移動とくれば、地殻の移動が気になる。そこでHONZ村上さんのちょい読み記事。読んでみた。

本書はマグマ学者の巽好幸氏。 大陸移動説や地殻が移動すること、海嶺と海溝など、多少は知っていることもあったが、本書ではよりわかりやすく、プレートが海嶺から発生して海溝に潜り込むまで、そして、潜り込んだ後にマグマが発生して火山活動に至るまでが見やすいイラストと共にやさしく解説。

地殻といっても、大陸地殻と海洋地殻とでは、組成が異なるようだ。特に二酸化ケイ素の構成にその違いが顕著らしい。その違いは地殻そのものの重さに関係してくる。結果、軽い地殻はより多くの地殻が覆いかぶさって大陸を構成する。実感として湧きにくいけれども、地殻はマントルの上にプカプカ浮かんでいるのである。

海溝の部分では潜り込んだプレートが摩擦でマグマが発生すると本で読んだことがあるけれど、なんでマグマが発生するかがいまいちピンとこなかった。本書ではマグマが発生して、火山活動に至るまでが解説されている。プレートは大量の水分を含んでいるスポンジのようなもので、これらが海溝に潜り込むと水分が放出され、それらの水分がマントルの融点を低めてマグマが発生する。まぁ、スケールが凄すぎて、プレートがスポンジと言われても想像がつかないけれども。。。

個人的に「へぇ〜」と思ったのは温泉。温泉には火山性温泉と非火山性温泉とに分けられる。火山性温泉は雨などの天水にマグマからの高温のガス成分が加わった熱水。代表的な火山性温泉では、大分の別府温泉だそうだ。
一方で、非火山性温泉は地層に閉じ込められたかつての海水や地下水が地温によって暖められたもの。有機物が多いとコーヒーのように「黒湯」となることがある。東京湾周辺はこの手の温泉が多いらしい。代表的な温泉に有馬温泉。有馬温泉はフィリピンプレートに含まれる水分が元らしい。同じ温泉でも元が違うと湯かげんも違うかもしれない(笑)

2012年3月31日土曜日

【読書メモ】僕は君たちに武器を配りたい

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史
講談社
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本書はエンジェル投資家であり、京都大学客員准教授である瀧本哲史氏の著作。読み終わってよくよく調べたら最近メディアにもよく出ている人みたいだ。

世間の雇用状況は厳しさを増すばかり。一方でそのような不安を煽っていろいろなビジネスが立ち上がっている。厳しい厳しいと言われる世間はどういう状況なのか、腰を据えて確認したいなと思っていた矢先にHONZの書評で取り上げられていたので読んでみた。

前半は、これから就職を控える人、もしくは入社したばかり〜2・3年目ぐらいの人向けに日本が迎えている厳しい状況について語っている。「就職ランキングにだまされるな」では、実際にある過去のランキングが現在の状況と照らしていかに参考にならないかということを示していて面白いし、ある意味残酷だ。結局40年先の将来なんてわからない。

「儲かる漁師と儲からない漁師」の項では、儲かる漁師について6つに分類している。そのうち、4つのいずれかを意識して日々仕事をすることを薦めている。このあたり、過去に読んだ本にも載っている内容なので真新しいところはないけどシンプルでわかりやすい。まぁ、それぞれの分類に自分がなれればいいけれどなるのが大変なんですな。

自分も薄々感じていたが、この本でズバリ指摘されてしまった。「住宅ローンはリスク管理できない人のもの」である。景気のいい時はいいかもしれないが、この不況まっただ中のご時世である。35年もローンは組めないよな。
(サラリーマンであることもハイリスク、ローリターンらしい。。。)

弁護士もこのご時世、大変なようだ。弁護士であるだけでは儲からない。では、顧客を集めるにはどうするのか。その理由については、巷でよく見かける借金返済の相談に乗ります的な広告にからめて書かれている。

本の終盤に書かれている「奴隷の勉強、自由人の勉強」では、著者は「リベラル・アーツ」を学ぶことの重要さを訴えている。「リベラル・アーツ」とは、歴史・哲学・芸術・文学・自然科学全般について勉強することで、著者はこれらについて勉強した知識がコンサルタント時代にとても助けられたと語っている。個人的趣味として、歴史や自然科学に関する本を読んでいる身としては読んで身につけた知識にいつか助けられればいいなと思いつつこれからもいろいろ本を読んでいこうと思う。

2012年3月20日火曜日

【読書メモ】火の賜物―ヒトは料理で進化した

火の賜物―ヒトは料理で進化した
リチャード・ランガム
エヌティティ出版
売り上げランキング: 247091

HONZ 村上さん紹介の本。また村上さんである。

本書は、人類が人類たらしめる進化をした理由のひとつとして、料理による食物の加工にあるとしている。料理をすることによって食物そのものの栄養価が高まり、結果、消化に費やす労力、時間を大幅に減らすことができる。結果、狩猟や食物の栽培など別のことにより作業時間を費やすことができるというわけだ。

この本は、食物は単にカロリー表示を気をつけるだけでなく、消化のしやすさについても注意を払わないとカロリーの高低は判断できないんだなと教えてくれる。印象的な実験が例が載っている。複数のラットに、それぞれ固いペレット、やわらかいペレットを与え続ける。栄養価は、全く同じだ。結果は、柔らかいペレットを与え続けたラットのほうが固いペレットを与え続けたラットよりも体重が重くなり、体脂肪がより多くなったのだ。この結果は、消化の労力が栄養吸収の点で無視できないことを示している。

消化の労力はそのまま体の器官の違いにも現れる。ヒトとそれ以外の霊長類を比較すると、体重比の腸の割合が異なる。ヒトは一番その割合が小さい。では省けた消化の労力はどこにいったのか。脳である。ヒトは省いた消化の労力分の栄養を脳へまわすことによってより脳を発達させることができたそうだ。

後半には現在のカロリー表示についても触れている。現在の表記は、食品そのもののカロリーを表示していて、消化のしやすさという点が考慮されていない。最近はそのあたりの点を考慮するよういろいろ見直しがされているようだが、正確なカロリー表示は難しいらしい。消化の労力と消化率の違いによる効果を証明するための情報がなかなか手に入らいないらしい。

いずれにしても、自分の食生活についても考えさせられる一冊だった。

2012年3月10日土曜日

【読書メモ】フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
サイモン シン
新潮社
売り上げランキング: 443

面白い数学の本をずっと探していた。たまに読んだりするがやはり文系の自分には基礎が無いので敷居が高い。そんなときにこの本を知った。HONZの村上氏も「数学だとこの一冊は外せない」と。 早速、購入して読んでみて、Amazonでも評価が高い理由がわかった。

本書は、17世紀の数学者、ピエール・ド・フェルマーが残した「フェルマーの最終定理」が1994年にアンドリュー・ワイルズによって証明されるまでについてを様々に登場する歴史上の偉人たちや、証明法、定理等、過去から順を追って述べられている。

この本が面白いのは、数学に馴染みのない人でも聞いたことのある有名人が次々に出てくることだ。数学に疎い僕でも本屋さんで名前をみかけたことのある名前が出てくる。ワイルズによる証明は、こうした過去の偉人達によって生み出された数々の証明法やテクニックを駆使している。だから、この本を読むと、少しばかり数学の有名人の自体のつながりが歴史を経て眺めることができる。ちなみに、この本には日本の数学者も登場する。ちょっと嬉しくなってしまった。

この本を読んで感じた面白さは、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』に通じるものがあった。楽しく読み進められて、あっという間に読み終えてしまった。

2012年2月27日月曜日

【読書メモ】赤めだか

赤めだか
赤めだか
posted with amazlet at 12.02.26
立川 談春
扶桑社
売り上げランキング: 5727

2011年11月21日にこの世を去った落語家、立川談志。本書はその弟子である立川談春による前座時代のエピソードを綴った本。

立川談志はテレビ番組(EXテレビ)で上岡龍太郎が絶賛していた落語家ということで登場した際に初めて知った落語家。(実際に番組で落語を披露した)

普段ノンフィクションもの、科学ものを読書のジャンルとしているが、今回たまたま気になる書評を目にしたので購入してみた。立川談志が世を去ってからいろいろな「談志本」が発売されたが、本書は、2008年に講談社エッセイ賞を受賞しているもので、4年ほど前の本になる。

本書では、談志の弟子として入門した談春の失敗談から、談志からの教えなど、様々なエピソードに事欠かない。談志が談春に説教する場面は、読んでいてなんだか自分が叱られているような気分になってしまったくらい引き込まれる。

本書が特に面白いと感じるのは談春の心情の描写がとてもリアルで、志らくが入門した時の談春の描写部分は、「誰でもそう思うよな〜」と談春に感情移入しながら一気に読み進めてしまう。「叱咤とは。。。」と談志が語るところは、自分にも思い当たるところがあるだけに、とても印象的な内容だ。 談春が二つ目に上がるまでの苦労話、エピソードがその大半の内容となるが、真打昇進時も手に汗握る内容だ。最後はホロッとさせられる。やっぱり、生きるって大変だ。

2012年2月26日日曜日

【読書メモ】なかのとおるの生命科学者の伝記を読む

なかのとおるの生命科学者の伝記を読む
仲野徹
学研メディカル秀潤社
売り上げランキング: 2440

HONZで成毛氏が紹介
した本で、書評記事を読んでついつい買ってしまった。HONZ.jpには著者を成毛氏が訪れてお話を伺うという模様も掲載されている(というか、これがかなりおもしろい内容である)ので興味のある方は是非。

著者は大阪大学大学院の教授。部類の本好きで伝記好きとのこと。そんな本好きな著者が伝記についてどのように紹介してくれるのか、興味があった。なんせ、僕は恥ずかしながら、伝記の類を読んだことがないから。。。。

本書は『細胞工学』という専門誌の著者の連載記事を加筆しまとめられたもの。『細胞工学』なんて僕が普段読むことはまずないだろうから、僕にとってはジャンルく拡大という意味で収穫。

内容は、偉大な科学者(全部で18名)の伝記ごとに著者が紹介しているスタイル。とても読みやすい。裏に潜むエピソードや著者の仮説も交えて語られていて、楽しみながらどんどん読み進められる。読んでいると著者の伝記に対する書評を読んでいるようで、著者の深い読み込みに感心させられ、読み終わった後には伝記を読んでいなくても十分楽しめる。紹介された何冊かの伝記は買って読んでみたいと思ったくらいだ。(実際にいくつかの伝記がおすすめとして紹介されている。興味はとても湧いてくるが、実際に買うとなるとちょっと躊躇してしまうほどのボリュームなんだろうなきっと。。。)

伝記を読む上での気付かされることも書かれている。特に巻末の「伝記の読み方、読まれ方」は、成功した社長が書いたいわゆる「ビジネス本」を読んだことのある人にとっては気付かされる内容かもしれない。伝記は、特に偉大な科学者の伝記は、とんでもない成功バイアスがかかっているから、それらを考慮して読み進めることが大事なのだ。成功体験を元に自分も成功するためのヒントを。。。。という感じで読まないほうがいい。なるほど〜、と気軽に楽しんで読むといい、著者の結論である。

読んでいて、ところどころに過去に読んだ科学ノンフィクション書籍で学んだ単語が出てくると思わず理解できる自分に嬉しくなってしまう。そんな感じで、あっという間に読み進められた一冊だった。個人的には、名前だけ知っていた北里柴三郎についてなるほど〜だった。

個人的に気になった内容をいくつかメモ。
・ジョン・ハンターの標本コレクションが展示してあるロンドンのハンテリアン博物館
・ジョナサン・ワイナーの著作『フィンチの嘴』
フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ジョナサン ワイナー
早川書房
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・ジャック・モノー『偶然と必然』・・・1970年代に大学に入ったら読むべき本と言われた名著中の名著らしい。
偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ
ジャック・モノー
みすず書房
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【読書メモ】悲しんでいい―大災害とグリーフケア (NHK出版新書 355)

悲しんでいい―大災害とグリーフケア (NHK出版新書 355)
高木 慶子
NHK出版
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この本はHONZ高村氏の書評で取り上げられていた。 著者の高木慶子氏は上智大学グリーフケア研究所所長。

僕は、グリーフケアという言葉をこの本を読むまでは知らなかった。グリーフとは「悲嘆」。本書では「悲嘆」の状態を12個の項目を上げて定義している。具体的にどういうことなのかを確認できる。

最近は、東日本大震災の被災地へボランティア活動に参加される方も多いと思う。日常から非日常へ変わらざるを得ない状況になったしまった人々にどのように接し、そしてケアができるのか。ボランティアの心得についても項目ごとに挙げられているので、参加する前に読んでおくといいだろう。

この本には、東日本大震災でのボランティアに出向いた著者による経験談も語られているが、ボランティアとして参加した医師が交通費を請求した話とかびっくりする話も載っている。人によってボランティアという活動に抱く考えもそれぞれなのかと思う。

良かれと思ってやったたことが、被害にあった人にとってつらい気持ちを抱かせる結果にならないように、この本はとても参考になると思う。

2012年2月12日日曜日

【読書メモ】フェルメール 光の王国 (翼の王国books)

フェルメール 光の王国 (翼の王国books)
福岡伸一
木楽舎
売り上げランキング: 1684
この本はもともとHONZで成毛氏による書評がアップされていて、その装丁が気になっていた。僕が購入のきっかけとなったのは、HONZの内藤順氏による「2011年最も読み返した本」に挙げられていた書評である。美術本という、僕にとってはあまり馴染みのないジャンルの本を購入することは、なかなか腰を上げにくい。たが、「最も読み返した本」ということで内藤氏の書評を見て購入の背中を押されてしまった。
実際に手に取ると、本自体の厚さはそれほどのものではないのだが、その美しい装丁に目を惹かれる。僕の本棚に置けばかなりかっこいいなと容易に想像できる。
本書は生物学者、福岡伸一氏によるフェルメールがフェルメールの絵を訪ねて世界をまわるもの。その過程で出会ったフェルメールの絵に対して氏の素朴な疑問を科学的に考察してみようというもの。
この本には、文章以外にも美しいフェルメールの絵画を始め、オランダの街並みなど、とても綺麗な写真も掲載されている。僕は読書をする際に気になったページの端を折って読むのだが、この本は、さすがに折り目をつけることに躊躇させられた。(結局ページに折り目をつけることは出来なかった)きれいに本棚に置いておきたくなる本である。
フェルメールという画家の名前を聞いたことがあるぐらいで、美術に関しては、僕は全くの素人である。でも、この本は一つ一つの絵に対して、科学的に、そして時には氏の仮説を展開している。絵画の色合い、レイアウト、光の向き、濃淡の表現、描かれている人物の表情や備品の精細さなど、一つ一つの要素を交えたその内容に引きこまれてしまった。
僕にとっては、今後、絵画を鑑賞する際の見方に影響を受けた一冊となるに違いない。

【読書メモ】砂

砂

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マイケル・ウェランド
築地書館
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HONZキュレーター久保氏の書評を読んで購入。氏も触れているとおり、装丁が美しい。確かに、本棚に置くだけでも見栄えがする本だ。
この本は「砂」という物質そのものについての掘り下げから始まって、砂にまつわる自然現象、そして、砂と文明との関わりについて触れている。タイトルからのイメージよりも壮大な内容だった。
そもそも砂の大きさってどのような定義なのだろうか。1922年に砂の大きさの区分が定義され、1から2mmから始まり、0.0625〜0.125mmまで、およそ5段階に区分けされている。これらの大きさの砂はその大きさによって砂の陸上や水中での動きも異なるわけである。
砂から岩ができる過程は興味深い内容だ。砂が厚さ10キロメートル以上積み重なると、想像を絶する重みと熱にさらされる。その状況下では砂の粒子にいろいろな変化が起きる状況が整う。これらの変化はケーキ作りに例えられて説明されている。常温なら安定しているケーキの材料がオーブンに入れると材料が化学変化を起こし、生地がケーキになるというわけだ。すごくわかりやすい。
地球の歴史を遡ると遺跡や化石といった考古学から始まり、最終的には地質学になっていく。だから、最近では、史実や神話を解明するのに地質学的な研究が有効であるらしい。砂の研究も重要なのである。このあたりは僕の好きな本のジャンルにも関わっているなと感じる。歴史学と地質学はつながっていくのである。
「砂の貯蔵庫の収支」部分を読めば、いくら人為的に砂を動かしても、砂の供給と消失にもとづいた収支や移動方向などを考慮しなければ全くの無意味になることがわかるだろう。自然のバランスに逆らうことはできないのである。この本を始め自然環境に関わる本を読めば納得する。
この本を読んだ後、普段、あまり意識しない「砂」に変に意識させられる。

2012年1月21日土曜日

【読書メモ】こころの免疫学 (新潮選書)

こころの免疫学 (新潮選書)
藤田 紘一郎
新潮社
売り上げランキング: 58877

本書の題名を見ると、ふと、精神論的な巷にある「やれば出来る」的な本を想像したが、そうではない。この本では、うつなどの精神疾患は、心的治療だけでなく、免疫系、つまり食事や腸内細菌をも含めた見直しが必要であるという。本書の中では、腸内細菌と精神疾患との関係を明らかにすると共に、現在手軽に手に入る食事について科学的に体への影響、作用を明らかにしている。そして、どのような食事を取れば体にとって、良いことなのかを読み取ることができる。

先進国では、精神病床数は日本がダントツに多い状況である。一方で劇的に減少に成功した国がイタリアだ。そして、2000年までに国立の精神病院を廃止した。

こころの健康ではやはり大事なのが食事らしい。血糖の状態が不安定になると、それらをコントロールしようとしてアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。その結果、精神的に不安定になりやすい。だから、糖質を適切にコントロールすれば良いわけだ。 そこで、本書では「糖質制限食」というのが特におすすめだそうで、この制限食ではカロリーはそれほど気にせずに糖質を抜いた食事にすればいいらしい。今度試そうと思う。

脳にブドウ糖は必要なものだが、急激に上げてはいけない。徐々にゆっくり上げるのがいいらしい。つまり、食事をして急激に血糖値が上がってしまうものよりは徐々に上がるものを選んで食べたほうが良いということになる。そこで、血糖値が上がる指標として「GI(グリセリックインデックス)」というものがあり、その値がある程度低いものを選べば良い。本書にも、主な食事ごとに表になっているので確認するといいかもしれない。この指標はブドウ糖を100としている。

油といえば飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があることはよく耳にする。飽和脂肪酸は常温では固まってしまうが、安定している状態なので保存がきく。不飽和脂肪酸は常温では液体だから、体の血管をつまらせること無く、体にやさしい食べ物とよく言われるが、そのぶん保存がきかない。

じゃぁ、保存できるようにすれば、売れるんじゃないか、そう考えられた結果できたのがトランス脂肪酸だ。すでにマーガリンでもおなじみ。だが、トランス脂肪酸は脳にダメージを与えると言われていて、あまり評判がよろしくない。なぜか。

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の中でも多価不飽和脂肪酸に水素添加という方法で化学変化を起こして常温でも固形化できるようにしたもの。つまり安定状態にしたものだ。だから、酸化しにくい。しかし、水素添加によって出来上がったものは自然界に存在しないものであり、その結果分解されにくい。それを体内に入れれば分解にとても時間とエネルギーを必要とするのは明らかだ。その結果、体内のミネラルやビタミンを必要以上に消耗することになる。それだけではない。トランス脂肪酸は体内に入ると体内の他の脂肪酸の働きを阻害し、活性酸素を発生させる。脂質でできている細胞膜は、トランス脂肪酸が取り込まれると細胞膜としての働きが不安定になってしまうのだ。また、体内のコレステロールバランスも崩してしまう。あまりいいもんじゃないらしい。 ちなみに、トランス脂肪酸は名前を変えて色々なところに登場する。コーヒーに入れるミルク、最近はコーヒーフレッシュと呼ぶらしいが、これもトランス脂肪酸。ショートニングというポテトを揚げる油やレトルトカレー、アイスクリーム、ケーキにも使われている。。。。たくさん使われている。マーガリンは食べられる形にしたプラスチックと言う言葉があるらしい。末恐ろしい。。。

他にも色々書かれていて、個人的にショックを受けた本だった。

【読書メモ】ヤクザと原発 福島第一潜入記

ヤクザと原発 福島第一潜入記
鈴木 智彦
文藝春秋
売り上げランキング: 180

この本の著者、鈴木智彦氏はヤクザに関する著者を色々書いているフリーライターだ。僕は以前のHONZの書評で知った「潜入ルポ ヤクザの修羅場」を読んで、内容の凄さに引きこまれて、あっという間に読みあげてしまったことを覚えている。本書もまさにそうだった。

本書では、著者自らが原発作業員として、福島第一原発に入り、復旧作業に当たる。それを行うこと自体がすごいことである。そこでは、メディア報道ではわからないヤクザとのつながり、作業現場でのあからさまなヒエラルキーの存在等々、他にも過酷な作業員の状況が伝わってくる。

原発では、線量と汚染度を組み合わせて危険度を判断している。しかし、メディア等では線量がかりが強調されがちで、実は汚染度がより深刻なのだという。放射性物質が蓄積している道路をクルマが走ると、放射性物質を舞い上げる。おすすると、それらを吸い込む危険がより増す。だから、タイベックを着たまま移動に使ったクルマは放射性物質が舞い上がっていて、もう使えない。

原発作業の裏側ではこのような状況で様々な人達が関わっている、そういうことを知る意味でも、本書はぜひ一読を薦める。

追記
著者が出演している動画が公開されています。
ニュースの深層 2012.01.24 1/3
ニュースの深層 2012.01.24 2/3
ニュースの深層 2012.01.24 3/3


【読書メモ】実況・料理生物学 (阪大リーブル030)

実況・料理生物学 (阪大リーブル030)
小倉明彦
大阪大学出版会
売り上げランキング: 59185
常々参考にしているおすすめ本サイトのHONZ。その中でも僕の場合は村上氏の書評を読んで購入する確率が高い事がわかった。この本も村上氏の書評を読んで購入した。 著者は大阪大学教授で神経生物学を専門にする小倉明彦氏。本書では「料理生物学」という講義の中で料理を作りながら素材や調理方法などについて、その歴史から科学的なうんちくまでを講義を聞いているように書かれている。
読んでみて僕もなるほど~となることが結構あって面白かった。
コロンブスが新大陸から持って帰った赤唐辛子。本当は胡椒を探すよう命じられていたが見つけられず、トウガラシを赤い胡椒と伝えたのが元らしい。だから、トウガラシは英語でred pepperと書く。

一般のカレーは香りが飛んでいるけれど、クミンをふりかけると本来のカレーの香りを再現することができる。今度試してみよう。
ブドウ糖を分解する際に必要な酵素にピルビン酸デカルボキシラーゼというものがある。ビタミンB1はその酵素が働くのに必要となる。ビタミンB1が不足すると、ピルビン酸までしか分解されなくなるのでエネルギーが十分に取り出せなくなる。

滋養強壮剤のアリナミンもビタミンB1の話からその成り立ちがわかる。ビタミンB1は別名チアミン。ニンニクに含まれるアリインが代謝されてできるアリシンとチアミンが結合するとアリチアミンとなり、これがニンニクパワーとなる。アリシンはニンニク臭の元だが効き目のもとでもあるから、無臭ニンニクは効き目が落ちてしまっているようである。最初からビタミンB1とアリシンを結合して吸収を良くしたのが、アリナミン。「へ~」だ。

ハンバーグで必要なこねる工程。この時に水を入れるのは浸透圧を利用している。つまり、水と一緒にこねると浸透圧の関係でお肉の細胞に水が入り込み、その状態でこねられると細胞が破裂する。その結果、粘りが出てきて、お肉の旨みが出るというわけだ。
クッキーとビスケットの違いは、その呼び名をフランス語にすると明らかになる。クッキーはフランス語で焼くという意味の"cuit"。ビスケットは"biscuit"。"bis"は「二度」という意味だから、ビスケットは二度焼いたという意味になる。だから、ビスケットのほうが水分も少なく、保存も効くというわけだ。

牛乳は細かい油を水に混ぜたものという話。油のつぶが光の波長より大きいので反射する光は長波長光、短波長光にかかわらず等しく反射されるので白い。

まだまだいろいろな「へ~」があった。

2012年1月3日火曜日

【読書メモ】日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)

日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)
原 研哉
岩波書店
売り上げランキング: 847
HONZの書評を読んで購入。デザインに関する本なんて買ったことなかったので恐る恐る購入。著者の方も恥ずかしながら初めて聞いた名前。
普段何気なく接しているデザインにもこういう意味、見方があるんだなとしみじみ。慈照寺東求堂、行きたくなった。