2011年11月27日日曜日

【読書メモ】世界一のトイレ ウォシュレット開発物語 (朝日新書)

世界一のトイレ ウォシュレット開発物語 (朝日新書)
林 良祐
朝日新聞出版
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HONZ 鈴木葉月氏の書評
を読んで購入。
ご存知、TOTOウォシュレットの開発秘話。今では当たり前のようにお世話になっているウォシュレットには様々な技術が使われている。その裏側を知ることができる。

そもそも水まわりに電気を使うICはタブーであったそうな。で、ウォシュレットに使われているICにはハイブリッドICという防水加工技術が使われている。実はこれ、雨でも台風でも大丈夫な、あの信号機の防水技術らしい。なるほど。。。他にも少ない水量でいかに汚物を排水するかにかんする凝ったしくみなどが紹介されている。

ウォシュレットの水の当て方、少ない水量でいかに適切に、心地よく「目標」に当てるのか。その技術は読んでいても面白い。

あと、単なる技術論だけでなく、著者の新製品開発における姿勢は参考になるかもしれない。

2011年11月25日金曜日

【読書メモ】大停滞

大停滞
大停滞
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タイラー・コーエン
エヌティティ出版
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この本はHONZ 久保氏の書評を読んで買った。成毛さんの書評にもとりあげられている。この本の著者は世界的に有名な経済学者。僕自身、経済ってジャンルはどうも敬遠しがちだけれど、この本は読みやすくて安心した。でも、読んでみたらちょっと気分が落ち込んだ。。。

タイトルにもある大停滞。日本もパッとしない。じゃ、パッとしたときの世界はどんな状況だったのか。筆者は主に三つの要素を上げている。1.無償の土地 2.イノベーション 3,未教育の子供たち。今ではこれらの土地は開拓され尽くしたし、新たなイノベーションによる発明も無いし、教育水準も上がったしということで容易に収穫できる果実は食べ尽くされたってこと。

じゃぁ、経済の生産性が上がればまだなんとかなるんじゃないのかと。ここでも、政府部門、医療部門、教育部門からみてあまり生産性は上がっていないらしい。

それじゃ、インターネットはどうなの?これも収入を生み出す部門を経済に保ててない。要するに、効率的になった反面、雇用を生み出してないし、安価に楽しめるようになった。(つまりお金をかけなくて済むようになった)

なんか絶望的になってきた。。。解決策は?著者は「科学者の地位を高めましょう。」と主張する。つまり、今の景気の後退は経験したことがないくらい続く。そこで、国民が科学に深い関心を抱くことで、知的な面でも、情緒的な面でも困難に対処しやすくなる。う〜ん。科学に興味を持ち始めて最近本を読み始めたので、この点には賛成。やっぱり立ち向かうしかないのかなと。もっとたくさんの科学読み物を読もうと思いました。

【読書メモ】脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか (河出ブックス)

脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか (河出ブックス)
坂井 克之
河出書房新社
売り上げランキング: 248040

こちら、サイエンスライター 森山和道氏の書評を読んで購入。一時期書店に並んでいた、頭の回転をよくするための計算ドリル。。。私も買いました(笑)ただ、残念なことに、この本を読むと、これらの計算ドリルのたぐいはほとんど効果がないらしいです。(泣)

この本はある医学博士が現在続く「脳ブーム」について一言物申す。。。というわけではないけれど、現在の脳研究の状況をわかりやすく述べた本。最近は「脳科学者」という肩書きでいろいろな研究者がテレビにも出てる。おかげで、先の計算ドリルやら、書籍やらいっぱい出てるけれど、筆者の思いはどうも複雑らしい。

テレビに出ているこれら「脳科学者」は、脳研究に世間の注目を集めた点については評価しているが、それら「脳科学者」の言動やら、書店に並んでいる「脳xxx」ものの効果には疑問を呈す。

法廷の裁判から広告マーケティング、さらには科学まで、脳研究は、現在様々な分野で活躍している。ただ、脳の働きを分析して、それが人の行動にどう及ぼすかということは、ちまたで言われているほどまだ厳密には解明されていないらしい。だから、筆者としてもこの状況は何ともしがたいと思っている。

こういう本に出会うと、安易に計算本を買った自分が恥ずかしくなりますな。

2011年11月20日日曜日

【読書メモ】エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)


こちら、HONZ久保氏の書評で紹介された本。節電は僕もちょっと取り組んだわけですが、この本を読んだ後で若干の虚しさを感じました。個人で節電してもやはり本人の満足感だけなんですかね〜。

で、そもそも、エネルギーってなんだ?ってことで、この本読むとわかりやすい。今、 原子力があのような状況なので、代替エネルギー源は何がよいか、ということで、水力、火力、風力といった各々のエネルギー源についてその特徴を述べている。そもそもエネルギー=電気って発想しがちだけど、それは正確に言うと違うらしい。電気は二次エネルギー、つまりエネルギーを伝えるもの。歯車と同じらしいです。

 本書では、効率的なエネルギーかどうかの判断ポイントは「エネルギー産出/投入比率」であるとしている。つまり、エネルギーは、入手しやすいことが大事。その観点からいくと、石油ほど効率的なエネルギーは無いらしいです。原子力は二酸化炭素を発生しないけれども、核燃料廃棄物を出し続ける、そしてそれらの処理に膨大なコストが掛かることを考えると最初から問題外ですね。

じゃ、石油は二酸化炭素発生するし、原子力もダメだし、水も、風も、いまいち。。。どうすればよいのか?筆者は「天然ガス」を有力なエネルギー源として提示している。天然ガスそのものは、真新しいものではないけれど、なぜ普及しないのか?このへんの裏側もこの本を読むとわかってくる。やっぱり政治が絡んでる。

そんなわけで、後半は天然ガスがどれだけ優れたエネルギーかが述べられている内容です。エネルギー論争について視野が広がるかもしれない。

【読書メモ】日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)

この本はHONZの10月のこれから読む本にピックアップされていたもの。東日本大震災では、三陸の漁業も多大な被害を受けたわけだが、本書は復興に当たり、現在の日本の漁業が取り巻く厳しい環境を説明している。そして、それらの厳しい状況と向かい合いながら、復興に向けた解決策を提示する。

最初、この本を手に取ったときは、三陸の地震が漁業に与えた影響ついて書かれた本かと思った。でも、読み進めると、確かにその点にも触れているけれど、どちらかというと、現在の日本の漁業が抱える問題にフォーカスした内容だった。

現在の日本の漁業を取り巻く状況はかなり厳しい。遠洋漁業はEEZで世界の海域から締め出され、 沖合漁業も落ち込んでいる。沿岸漁業もほぼ獲り尽くしてしまったらしい。それじゃ、養殖だということで養殖も始めたけど、これはかなりコストがバカにならないらしい。餌の確保も遠洋、沖合、沿岸もこのような状況だから、確保もままならない。日本の漁業は衰退産業とまで述べられている。

じゃ、ダメなのか?そこで筆者は、ノルウェーを手本に、三陸の漁業は復興ではなく、抜本的な改革を行うべきだと主張している。なぜノルウェーか。ノルウェーも日本同様、漁業が盛んで、過去に、日本同様、危機的状況があったそうな。ただ、ノルウェーはこの危機を自らの改革により克服し、いまではノルウェーの漁業は成長産業とまで言われている。漁協に事故改革を促している。

そして、最後に放射能のお魚への影響について述べている。要は、気にする人の考え方次第で全く魚を食べないか、産地を限定して食べるのか、あるいは気にせず食べちゃうのか。本書では、それらは読者の判断に任せている。

今のうちにお魚食べようっと。