著者は池谷裕二氏。『進化しすぎた脳』や『脳はなにかと言い訳する』など、脳に関する著書をいろいろ書いている。本書は身近なところから脳に関する「へえ〜」と思える話を脳科学の研究データからわかりやすく解説してくれる本。
過去にジャンルを問わず読んだ様々な本では、「手で書いたほうが物事をよく覚えられる」とか、「ランニングなど、体を動かすことは脳にも好影響を与える」とか、「入力よりも出力が大事」ということが書いてあった。本書を読んだ後、それら全てのことがひとつに繋がった。個人的にはとても目からうろこであった。
人間の脳は脳幹や小脳、基底核からなる旧脳の周りを大脳新皮質が覆っている。身体と密接な関係をもつ旧脳に対し、大脳新皮質はあまり関連がない。著者はこの構造をさして大脳新皮質は「身体を省略したがる」という。進化に伴い、考えることが中心に据えられたような構造である。
しかし、そんな「身体を省略したがる」脳をもつわれわれに身体経験の重要性をさまざまな研究事例を通じ説いていく。
たとえば、暗記。頭で暗記するよりは実施にテストを通じアウトプットを繰り返したほうが暗記の定着率は良いそうだ。テストをして間違えたら間違えたところだけやるよりも全てをもう一度テストし直したほうがいいとのこと。今後の勉強に役に立てそうである。
また、笑顔の例では、無理にでも作った笑顔は印象を良くしてくれるらしいし、自らの気分も良くしてくれるそうだ。形から入るのもいいかもしれない。
ランニングが体にいいという話は『よみがえる脳』や『臓器は若返る』にも書いてあるとおり。本書では身体を能動的に動かすことほうが受動的に動くことよりも脳の活動がより活発になるということがマウスの実験から示されている。自ら動いてランニングをすることは脳を活発にしてくれるそうです。