2011年10月29日土曜日

【読書メモ】呪の思想 (平凡社ライブラリー)

呪の思想 (平凡社ライブラリー)
白川 静 梅原 猛
平凡社
売り上げランキング: 94916
HONZ.jpで紹介されていた本で、この手のジャンル、初めてでした。早速読んでみた。 この本は2002年2月5日に京都ロイヤルホテルにて行われた文化勲章受章者の白川静氏とこれまた文化勲章受章者梅原猛氏との「両巨頭」の対談をまとめたもの。本文も対話形式で書かれている。恥ずかしながら、僕は「二人の巨人」(帯書きより)について本書で初めて知った。
本書は全体で三つの章で構成されている。第一章は漢字の成り立ちについてイラストも交えて解説している。漢字のつくり一つ一つに古代の風習、宗教観が影響していることがわかる。ここは「へぇ~」の連発(笑)。
第二章では、孔子についても。孔子が生きた時代背景とか、孔子がどういう理由で諸国を渡り歩いたとか、孔子について勉強した学生時代に知りたかった。ただ、ここでも漢字についてその成り立ちに触れている。「囚」は、葬られた死体がを意味するけど、まだ体が残っているから再生可能な状態。だから、棺桶などに厳重に葬る。「死」は骸骨になってしまって再生不可能な状態。だから、そんな骸骨は草原に捨てる(!)、つまり「葬」となる。だから、昔は骸骨になった死体は捨てていた。こういう情報、漢字を勉強していたときに一緒に教わりたかったなぁと。

【読書メモ】なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ

なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ
デニス・マッカーシー
化学同人
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HONZ.JPの書評で見つけた。タイトルはやわらかいのに、大陸移動説、進化論にもふれて、内容は硬派。先日前編を読み終えた「銃・病原菌・鉄(上巻)」にも通じる内容。 冒頭でも「生物地理学」という言葉が出てくるが、「銃・〜」も生物と地理について触れている。自分にとって、どうやらこのジャンルの本は要注目になりそう。

哺乳類にとっての体の大きさはとても重要らしい。体の体積に対する表面積の割合は、体が小さくなればなるほど大きくなる。つまり、体温が奪われやすい。ということは常に燃やさないと体温が維持できない。マウスやねずみが常にボリボリ食べてるのはそのため。。。なるほど〜って感じです。

「第4章 世界を変えた火山の環」では、大陸移動説と動物の進化のタイミングについて触れている。ここではゴンドワナ大陸における走鳥類を例に解説している。この部分は個人的に特に引きこまれてしまった。「へぇ〜」の連発だった(笑)

シャチのグループにも色々あることだとか、他にも面白い内容がいろいろあった。で、タイトルのシロクマは南極にいないって話。読めば納得です。

2011年10月24日月曜日

【読書メモ】私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ)


弾小飼氏の書評を読んで購入。原発ハンタイ、原発スイシン、あなたはどっち派?正直答えあぐねている自分にとって本書はいろいろ考えさせられる本だった。原発無しで問題なければそれが一番だと思うんですけれども、現実は。。。。

原子力の平和利用を煽って一政治家が当選してしまう。裏側を知るとまるで仕組まれていたような気がしてならないのは僕だけだろうか。昔はウラン茶なるものが売っていたというのは驚き。でも、当時それを許容する世情だったというのは、知らないとは怖い。見知らぬ化学物質について、自らどういうものなのかを調べて見極める姿勢が必要だということ。って、頭ではわかるんですけどね。電源三法交付金のくだりは、興味深い。原発のその性質を考えると付近に住居を設けることはできない。ということは、原発の付近にはなるべく人が住んでいないほうが望ましい。地域振興とはおおよそ矛盾することになる。

新書はいつもすぐに読了してしまうけれども、この本はいろいろ考えさせられる内容だったので結構時間がかかってしまった。厚さの割に考えさせられる内容だった。

2011年10月23日日曜日

【読書メモ】逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
渡辺 京二
平凡社
売り上げランキング: 1042

これも成毛さんの書評で紹介されていたもの。ここ最近、なんか江戸付いてる。かなりの厚さで読み応えありそう。

早速読み進めていくと、江戸から明治にかけての受験勉強やらテレビやらで身につけた浅はかな江戸末期〜明治初期の歴史観が大きく覆されたし感動すら覚えるところも。一方で明治維新によって日本は大きく近代化へ舵を取り、生まれ変わったというけれども、それとともに何か大事なものを失ってしまったような、そんな気がしてならない。

でも読み進めると、江戸末期から明治にかけて来日した外国人たちの日本人の印象を読んでいると、日本人の本質は変わってないところもあるんだなと感心してしまうところもある。そんなわけで、大変読み応えのある面白い本だった。

庶民の平等意識、幸福感を漂わせる貧困層の生活。自然と調和した住まいなど、当時の日本に対してベタ褒めな一方で、酒癖の悪さ、お風呂にかんすることなど、驚いている当時の外国人の動揺ぶりに関する記述がとても面白い。

600ページ迫るボリュームに読むのに時間がかかってしまったけれども、読んでおいてよかった、そう思える一冊でした。


2011年10月11日火曜日

【読書メモ】ヌードルの文化史

ヌードルの文化史
ヌードルの文化史
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クリストフ ナイハード
柏書房
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こちらは、HONZ.JPの書評を読んで購入を決意。店頭で本を手にとってちょっと驚いた。厚い。。。(笑)著者はスイス生まれのジャーナリスト。変に日本人でもなく、中国人でもなく、イタリア人でもないので、力が入ってなくていい。

ヌードルっていうから安易にラーメンのこと、あとパスタもみたいな、という内容を思い浮かべたが、小麦の品種のお話から、ヨーロッパのパスタにまつわる歴史、もちろん日本を含むアジアの麺料理のことまで取り上げている。いろいろな歴史をたどりつつ、あっという間に読み終えてしまった。今では手軽に食べられるパスタも、ルネッサンス時代のイタリアでは上流階級の食べ物だったそうな。ヨーロッパのその他の地域も小麦自体がとても高価なものだったらしい。
冷麺はもともと小麦だけだったようだ。しかし、痩せた土地でも育つソバが、そして小麦の代わりにジャガイモ澱粉を入れるようになって現在のようなコシのある風味になったらしい。ソバ粉自体、もともと貧乏人の食物だったとある。自分は今でもソバをよく食べるんだが。。。。それから、冷麺を真鍮の鉢で食べるのは、もともと銀製だった。食事に盛られた毒を見分けるため。銅または銀製の容器は毒に触れると色が変わってわかるそうな。なるほど。他にもいろいろ面白い、なるほど話が書かれてます。

【読書メモ】銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
ジャレド ダイアモンド
草思社
売り上げランキング: 3725
こちらはWIRED大学(FACEBOOK)で取り上げられていたものからチョイス。この本自体はそんなに新しくない。2000年に初版が発売されている。本屋さんでも歴史書の棚で目にしたけど、なかなか購入に至らなかった。今回WIRED大学で取り上げられたので買ってみた。上下巻の構成でかなりのボリュームだけど読んだらこれが面白い。

この本はニューギニア人ヤリの素朴な疑問から始まる。「あなた方白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものが殆ど無い。それはなぜだろう?」
ここから、なぜ侵略するもの、されるものが生まれるのか、という点を人間の進化の歴史からたどって地形、天候などあらゆる要素から考える。読んでいくうちに、どんどん引きこまれてしまった。とりあえず上巻だけ読んだけど、下巻もすぐに読む予定。
侵略戦争では、武力の優劣がそのまま勝敗を分かつのかなと思ったら、さにあらず。一番の原因は病原菌だそうだ。ヨーロッパ人による南北アメリカ大陸、オーストラリア大陸、南アフリカ、太平洋諸島の先住民を決定的に追いやったのは武力ではなく、病原菌。では、病原菌による抵抗力の有無はどのように生まれたのか。それは、家畜の有無。より多くの、多種の家畜を飼うことが出来れば多様な病原菌にさらされ、その中で病原菌に抵抗すべく抵抗力をみにつけていく。では家畜の有無はどうやって発生するのか?それは。。。というように、どんどん引き込まれる。
穀物の伝播は、東西方向のほうが南北方向よりも早く伝わった。南北方向では、気候の差が顕著になるからだ。ということは、南北に長い大陸よりも東西に長い大陸のほうがより広範囲に早く文化、文明が伝わりやすい。その大陸は。。。ユーラシア大陸。ふむ。

下巻が楽しみだ。