2012年5月3日木曜日

【読書メモ】原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―

原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―
安冨 歩
明石書店
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本書は、原発問題をめぐる様々な言説を著者が解析する中で浮上してきた「東大話法」という概念について、諸々の言説を例に解説していく。

東大話法について以下の8つの定義を上げている。
1.自分の信念でなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
2.自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
3.都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。
4.都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す。
5.どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す。
6.自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する。
7.その場で自分が立派な人だと思われることを言う。
8.自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する。

読んでみると、何気ない日々の様々な言説について、ひとつひとつおかしいと思われる点を挙げていく内容。自分が如何に日々の言説について「おかしい?」と感じる能力が退化してしまったのかなと気付かされる。

後半では、「東大話法」に大きな役割を果たしている「立場」という概念について触れている。「職→役→立場」というところでは、日本の歴史における「立場」という概念が呼び名とともにどのように移り変わっていくのかを解説していく。興味深い内容だ。引用されている尾藤正英『日本文化の歴史』、同『江戸時代とはなにか-日本史上の近世と近代』という本がとても気になった。是非読んでみたい。

日本文化の歴史 (岩波新書)
尾藤 正英
岩波書店
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江戸時代とはなにか―日本史上の近世と近代 (岩波現代文庫)
尾藤 正英
岩波書店
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