2013年3月20日水曜日

【読書メモ】『ウェブで政治を動かす!』

ウェブで政治を動かす!
ウェブで政治を動かす!
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朝日新聞出版 (2012-11-13)
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著者はジャーナリスト。本書はKindle買った最初の新書で、ITに関する著書の多い著者らしく、本書も書店発売とほぼ同時にKindleで発売された。早速買ってみた。 本書は「レコード輸入権制度」をきっかけに政策にかかわらなければ政治は何も変えられないという著者がウェブ(インターネット)によって今後の政治がどう変わるのかを考察した本だ。

まず、本を読んでいて若干とまどった。ウェブやらインターネットやらソーシャルメディアといった言葉が出てくるのだが、本書の中でこれはウェブについて語ったものなのか、インターネットについてのことなのか、ソーシャルメディアについてのことなのかが上手く区別できない。(レベルがちがうから、全てウェブになっちゃうけれども)

本書ではソーシャルメディアをきっかけに起きた反原発デモやアラブの春など、いくつかの事例を取り上げたり、ソーシャルメディアを積極的に活用している国会議員へのインタビューを通じ、ソーシャルメディア(=ウェブとしていいのかもしれない)がどのように役になって、何が不便だったといったことが書かれている。

津田氏の見解も書かれているが、全体的に引用が多く、ウェブの使用に対して「こんな意見がある・こんなことがあった」といった内容をまとめた感じだ。

本書で紹介・絶賛されていた本『「オバマ」のつくり方』は今度読んでみたい。

ジュリアン・アサンジ氏によるソーシャルメディアの3つの役割(ざっくりメモ)
1.プロの記事に対して多様な視点を与える
2.埋もれているものを発掘、拡散する
3.プロの調査のためのネタ元

【読書メモ】ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ
マーク チャンギージー
インターシフト
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人の持つ「超人的」な視覚の能力をつきとめる本だ。著者は認知・知覚の基礎研究を進めている。研究は多くのメディアで紹介されているから、人を惹きつけるのが上手なのかなと思ったら、やっぱり本書もそうだった。読んでいて惹きつけられてしまった。
本書では、視覚を色覚・両眼・動体視力・物体認識の4つの能力に分けて紹介しており、 具体的かつ分かりやすい内容だ。

「色覚」を「テレパシー」という言葉を用いている。色覚、つまり色を識別する能力はなぜ発達したのだろうか、という疑問からスターする。
著者は、肌の色を感じ取るためと仮説を立てる。そこから、肌の色を感じ取れることの優位性、目が肌の色を感じ取るためにいかに適した作りとなっているのかを展開する。肌の色を認識する錐状体の波長感度は肌の色を形作るヘモグロビンによる肌の色を最も識別しやすいという事実を提示されたところを読み進めていくと、思わず「なるほど」と唸ってしまう。

「両眼」は「透視能力」である。本書では目の位置による見え方をいろいろな視点から検証する。本書に没頭するあまり、僕は本書にある図をにらめっこして電車の中では変な人に思われたかもしれない。なぜ「透視能力」なのかも納得できる内容だった。

「動体視力」は「未来予見」である。予見という言葉にいろいろ勘ぐってしまったが、脳に勘違いをさせることから始まり、錯覚に触れていく。読んでいてふと、僕らが普段から接している「錯覚」があることに気づく。漫画である。躍動感溢れる描画などまさにそれであり、そのことに気づくと小さい頃から漫画に慣れ親しんだ僕には「未来予見」説に納得してしまう。

「動体認識」は「霊視」とある。見えないものが見えるあれですか?はて?なにが「霊視」なのかな?と思いつつ読み進めてみる。我々が使用している文字は日本人なら漢字、平仮名といった表意文字であり、同じ表記体系を用いる人々(例えば漢字を使っている中国人とか)と直感的にコミュニケーションがとれる(場合がある)。ただ、表意文字(本書では「発話表記」としている)は訛りが表現できないといった欠点がある。つまり完全な「霊視」はできない、と。そこで「表音文字」である。アルファベットなどの「表音文字」はこの弱点も補える。さらに、アルファベットの一文字一文字のデザインは、実は自然界に存在するデザインを巧みに表した文字であることを文字デザインの結合部と自然界の映像等から出現頻度を導き出して比較する等によりこれらの本書で言う「発話文字」はものの形も発音も全て認識できるとしている。本を読むということも文字(日本語だと表意文字だけれども)を通じて過去の歴史や著者の思いを感じることができる「霊視」ということなのだろうかと考えてしまった。

本書はその内容の多さに対して手軽に入っていける、読みさすくてかつ高度で、読んだあとの「お得」感がとても高い本であった。

【読書メモ】ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)

ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)
一般社団法人 ダム工学会 近畿・中部ワーキンググループ
ソフトバンククリエイティブ
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本書は一般社団法人 ダム工学会近畿・中部WKグループによるダムについて解説した本。このグループは土木工学等の専門会から構成される。本書ではダムの仕組みから有効性を丁寧に解説している。
ダムの歴史では、世界最古のダムから日本最古のダムまで色々紹介。巨大なダムとしてアメリカのフーバーダムが紹介される。このダムの有効貯水量は352億トン。数字だけ聞いてもピンと来ないが、琵琶湖の水量が280億トンと聞くとその凄さがわかってくる。圧倒されてしまう。
ダム建設ではRCD工法やCSG工法といったコンクリートに関するさまざまな技術が用いられており、僕はこの部分が興味を惹かれた箇所だ。コンクリートは硬化時に発熱する。(←このことを僕は初めて知った。)そして、冷める際に徐々に縮む。ダムのように使うコンクリートの量が多いとその問題はとても深刻になる。そこで、少しでも発熱を少なくし、かつコンクリートの使用量を減らすために上述の工法が開発されている。
ダムすごいな。

2013年3月10日日曜日

【読書メモ】葉隠入門 (新潮文庫)

葉隠入門 (新潮文庫)
葉隠入門 (新潮文庫)
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三島 由紀夫
新潮社
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「葉隠」は佐賀藩鍋島家二代光茂に仕えた山本常朝の著。本書は三島由紀夫による入門書である。 三島は、本書にとても感銘を受けて、それがこの入門書を書く理由にもなっている。

本書は最初に三島による「葉隠」の解説と解釈について短く語られており、後は本書の精髄を48の項目に分けて解説する。 入門書とあるけれども一回読んだだけではなかなか理解できていない自分がわかる。
解説部分で、本書の象徴する表現として「逆説的」という言葉が出てくる。最初はピンとこなかったが、どうやら、「葉隠」はその文言通りに受け取ってはいけないのである。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」という有名な文は、戦前は文字通り解釈されたようだが、本質は違うというのである。
本書はそもそも生死を前提として生きる武士に向けて書かれたもの。毎日「死」を心に当てて生きようという。つまり何事にも「死」を意識するぐらい一生懸命に打ち込むということ。それは、「生」に心を当てることとなる、と。 何事にも一生懸命打ち込め、という一方で、人間の一生は短いから好きな事をして暮らすべきだと。
むずかしいが、文字通り解釈せず、その意味することを考えさせる本である。