2012年2月27日月曜日

【読書メモ】赤めだか

赤めだか
赤めだか
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立川 談春
扶桑社
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2011年11月21日にこの世を去った落語家、立川談志。本書はその弟子である立川談春による前座時代のエピソードを綴った本。

立川談志はテレビ番組(EXテレビ)で上岡龍太郎が絶賛していた落語家ということで登場した際に初めて知った落語家。(実際に番組で落語を披露した)

普段ノンフィクションもの、科学ものを読書のジャンルとしているが、今回たまたま気になる書評を目にしたので購入してみた。立川談志が世を去ってからいろいろな「談志本」が発売されたが、本書は、2008年に講談社エッセイ賞を受賞しているもので、4年ほど前の本になる。

本書では、談志の弟子として入門した談春の失敗談から、談志からの教えなど、様々なエピソードに事欠かない。談志が談春に説教する場面は、読んでいてなんだか自分が叱られているような気分になってしまったくらい引き込まれる。

本書が特に面白いと感じるのは談春の心情の描写がとてもリアルで、志らくが入門した時の談春の描写部分は、「誰でもそう思うよな〜」と談春に感情移入しながら一気に読み進めてしまう。「叱咤とは。。。」と談志が語るところは、自分にも思い当たるところがあるだけに、とても印象的な内容だ。 談春が二つ目に上がるまでの苦労話、エピソードがその大半の内容となるが、真打昇進時も手に汗握る内容だ。最後はホロッとさせられる。やっぱり、生きるって大変だ。

2012年2月26日日曜日

【読書メモ】なかのとおるの生命科学者の伝記を読む

なかのとおるの生命科学者の伝記を読む
仲野徹
学研メディカル秀潤社
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HONZで成毛氏が紹介
した本で、書評記事を読んでついつい買ってしまった。HONZ.jpには著者を成毛氏が訪れてお話を伺うという模様も掲載されている(というか、これがかなりおもしろい内容である)ので興味のある方は是非。

著者は大阪大学大学院の教授。部類の本好きで伝記好きとのこと。そんな本好きな著者が伝記についてどのように紹介してくれるのか、興味があった。なんせ、僕は恥ずかしながら、伝記の類を読んだことがないから。。。。

本書は『細胞工学』という専門誌の著者の連載記事を加筆しまとめられたもの。『細胞工学』なんて僕が普段読むことはまずないだろうから、僕にとってはジャンルく拡大という意味で収穫。

内容は、偉大な科学者(全部で18名)の伝記ごとに著者が紹介しているスタイル。とても読みやすい。裏に潜むエピソードや著者の仮説も交えて語られていて、楽しみながらどんどん読み進められる。読んでいると著者の伝記に対する書評を読んでいるようで、著者の深い読み込みに感心させられ、読み終わった後には伝記を読んでいなくても十分楽しめる。紹介された何冊かの伝記は買って読んでみたいと思ったくらいだ。(実際にいくつかの伝記がおすすめとして紹介されている。興味はとても湧いてくるが、実際に買うとなるとちょっと躊躇してしまうほどのボリュームなんだろうなきっと。。。)

伝記を読む上での気付かされることも書かれている。特に巻末の「伝記の読み方、読まれ方」は、成功した社長が書いたいわゆる「ビジネス本」を読んだことのある人にとっては気付かされる内容かもしれない。伝記は、特に偉大な科学者の伝記は、とんでもない成功バイアスがかかっているから、それらを考慮して読み進めることが大事なのだ。成功体験を元に自分も成功するためのヒントを。。。。という感じで読まないほうがいい。なるほど〜、と気軽に楽しんで読むといい、著者の結論である。

読んでいて、ところどころに過去に読んだ科学ノンフィクション書籍で学んだ単語が出てくると思わず理解できる自分に嬉しくなってしまう。そんな感じで、あっという間に読み進められた一冊だった。個人的には、名前だけ知っていた北里柴三郎についてなるほど〜だった。

個人的に気になった内容をいくつかメモ。
・ジョン・ハンターの標本コレクションが展示してあるロンドンのハンテリアン博物館
・ジョナサン・ワイナーの著作『フィンチの嘴』
フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ジョナサン ワイナー
早川書房
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・ジャック・モノー『偶然と必然』・・・1970年代に大学に入ったら読むべき本と言われた名著中の名著らしい。
偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ
ジャック・モノー
みすず書房
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【読書メモ】悲しんでいい―大災害とグリーフケア (NHK出版新書 355)

悲しんでいい―大災害とグリーフケア (NHK出版新書 355)
高木 慶子
NHK出版
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この本はHONZ高村氏の書評で取り上げられていた。 著者の高木慶子氏は上智大学グリーフケア研究所所長。

僕は、グリーフケアという言葉をこの本を読むまでは知らなかった。グリーフとは「悲嘆」。本書では「悲嘆」の状態を12個の項目を上げて定義している。具体的にどういうことなのかを確認できる。

最近は、東日本大震災の被災地へボランティア活動に参加される方も多いと思う。日常から非日常へ変わらざるを得ない状況になったしまった人々にどのように接し、そしてケアができるのか。ボランティアの心得についても項目ごとに挙げられているので、参加する前に読んでおくといいだろう。

この本には、東日本大震災でのボランティアに出向いた著者による経験談も語られているが、ボランティアとして参加した医師が交通費を請求した話とかびっくりする話も載っている。人によってボランティアという活動に抱く考えもそれぞれなのかと思う。

良かれと思ってやったたことが、被害にあった人にとってつらい気持ちを抱かせる結果にならないように、この本はとても参考になると思う。

2012年2月12日日曜日

【読書メモ】フェルメール 光の王国 (翼の王国books)

フェルメール 光の王国 (翼の王国books)
福岡伸一
木楽舎
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この本はもともとHONZで成毛氏による書評がアップされていて、その装丁が気になっていた。僕が購入のきっかけとなったのは、HONZの内藤順氏による「2011年最も読み返した本」に挙げられていた書評である。美術本という、僕にとってはあまり馴染みのないジャンルの本を購入することは、なかなか腰を上げにくい。たが、「最も読み返した本」ということで内藤氏の書評を見て購入の背中を押されてしまった。
実際に手に取ると、本自体の厚さはそれほどのものではないのだが、その美しい装丁に目を惹かれる。僕の本棚に置けばかなりかっこいいなと容易に想像できる。
本書は生物学者、福岡伸一氏によるフェルメールがフェルメールの絵を訪ねて世界をまわるもの。その過程で出会ったフェルメールの絵に対して氏の素朴な疑問を科学的に考察してみようというもの。
この本には、文章以外にも美しいフェルメールの絵画を始め、オランダの街並みなど、とても綺麗な写真も掲載されている。僕は読書をする際に気になったページの端を折って読むのだが、この本は、さすがに折り目をつけることに躊躇させられた。(結局ページに折り目をつけることは出来なかった)きれいに本棚に置いておきたくなる本である。
フェルメールという画家の名前を聞いたことがあるぐらいで、美術に関しては、僕は全くの素人である。でも、この本は一つ一つの絵に対して、科学的に、そして時には氏の仮説を展開している。絵画の色合い、レイアウト、光の向き、濃淡の表現、描かれている人物の表情や備品の精細さなど、一つ一つの要素を交えたその内容に引きこまれてしまった。
僕にとっては、今後、絵画を鑑賞する際の見方に影響を受けた一冊となるに違いない。

【読書メモ】砂

砂

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マイケル・ウェランド
築地書館
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HONZキュレーター久保氏の書評を読んで購入。氏も触れているとおり、装丁が美しい。確かに、本棚に置くだけでも見栄えがする本だ。
この本は「砂」という物質そのものについての掘り下げから始まって、砂にまつわる自然現象、そして、砂と文明との関わりについて触れている。タイトルからのイメージよりも壮大な内容だった。
そもそも砂の大きさってどのような定義なのだろうか。1922年に砂の大きさの区分が定義され、1から2mmから始まり、0.0625〜0.125mmまで、およそ5段階に区分けされている。これらの大きさの砂はその大きさによって砂の陸上や水中での動きも異なるわけである。
砂から岩ができる過程は興味深い内容だ。砂が厚さ10キロメートル以上積み重なると、想像を絶する重みと熱にさらされる。その状況下では砂の粒子にいろいろな変化が起きる状況が整う。これらの変化はケーキ作りに例えられて説明されている。常温なら安定しているケーキの材料がオーブンに入れると材料が化学変化を起こし、生地がケーキになるというわけだ。すごくわかりやすい。
地球の歴史を遡ると遺跡や化石といった考古学から始まり、最終的には地質学になっていく。だから、最近では、史実や神話を解明するのに地質学的な研究が有効であるらしい。砂の研究も重要なのである。このあたりは僕の好きな本のジャンルにも関わっているなと感じる。歴史学と地質学はつながっていくのである。
「砂の貯蔵庫の収支」部分を読めば、いくら人為的に砂を動かしても、砂の供給と消失にもとづいた収支や移動方向などを考慮しなければ全くの無意味になることがわかるだろう。自然のバランスに逆らうことはできないのである。この本を始め自然環境に関わる本を読めば納得する。
この本を読んだ後、普段、あまり意識しない「砂」に変に意識させられる。