2012年8月4日土曜日

【読書メモ】スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質
ジェイ・バーレサン
中央公論新社
売り上げランキング: 31844

この本は、身近な17の化学物質について、構造と働きについて説明した本である。化学構造式を元に説明するが、最初に構造式の読み方をわかり易く説明している。
さらに面白いのは、その化学物質と歴史との関わりについて説明している点である。

大航海時代、まだ冷蔵庫などの保存技術がない当時は、船員は栄養不足による壊血病に悩まされた。塩漬けの牛肉や豚肉だけでは十分な栄養は取れないのである。だが、それを解決する物質が発見された。アスコルビン酸である。これはビタミンcという名前で有名である。この物質の発見は大航海時代を大きく変えた。
15世紀の航海では、航海中の壊血病で多くの乗員が命を落としている。ポルトガルの探検家、バスコ・ダ・ガマの航海では、アフリカの南端を回ったときに上院160名中100名が壊血病で命を落としている。実に半数以上である。壊血病で乗員全員が死亡して船だけ漂っていたという記録も多く残っているのである。この話を聞いただけでも当時の航海が命がけだったことが伝わってくる。

シルクは蚕からとれる糸である。昔から重宝され、それらの織物を身にまとうことは裕福な人々に限られた。夏は涼しく、冬は温かい。そして、滑らかな肌触りと特徴ある光沢はその魅力にもなっている。それらはすべて、シルクの化学構造に起因する。その構造は人口での作成を困難なものにしたが、ついに成功する。それは、ロープやパラシュートなどの軍事用を始め、衣服、スキーウェア、カーペット、船の帆などに使われている。

・・・などなど、エピソードがいっぱい。