著者は元裁判官で、執筆も多数。本書は元裁判官である著者が現在の日本の裁判官と裁判所制度について問題点を指摘している。その姿勢はとても悲観的だ。
著者はアメリカに留学経験があり、アメリカの裁判制度を身近に感じる機会を得ている。そのことが日本の裁判制度の問題点をよりはっきりと浮き立たせてるのではないだろうかと個人的に思う。
著者は裁判制度の問題点は、裁判官を取り巻く環境にあるとしている。裁判官は世間から閉ざされており、限られた中で実績を上げることを求められる。 そして、実績が挙げられない裁判官は冷遇される。
我々にとって画期的判決を出した裁判官が必ずしも高く評価されずむしろ冷遇される環境にあることが問題であると。
ただ、絶望するばかりでなく、これらの現状を改善する案として、著者は、弁護士の有効活用を訴える。弁護士が裁判官になることを認めるというもの。弁護士には優秀な人が多いというのがその理由。
個人的に、腐敗が進む組織というのは、共通して第三者機関による客観的かつ強力な権限を持った評価機関が無いということにあると思う。
また、選挙時の「最高裁判所裁判官国民審査」ももう少し制度の改善の余地があると思うのだが。