2014年7月14日月曜日

【読書メモ】『絶望の裁判所 (講談社現代新書)』

絶望の裁判所 (講談社現代新書)
瀬木 比呂志
講談社
売り上げランキング: 675

著者は元裁判官で、執筆も多数。本書は元裁判官である著者が現在の日本の裁判官と裁判所制度について問題点を指摘している。その姿勢はとても悲観的だ。

著者はアメリカに留学経験があり、アメリカの裁判制度を身近に感じる機会を得ている。そのことが日本の裁判制度の問題点をよりはっきりと浮き立たせてるのではないだろうかと個人的に思う。

著者は裁判制度の問題点は、裁判官を取り巻く環境にあるとしている。裁判官は世間から閉ざされており、限られた中で実績を上げることを求められる。 そして、実績が挙げられない裁判官は冷遇される。
我々にとって画期的判決を出した裁判官が必ずしも高く評価されずむしろ冷遇される環境にあることが問題であると。

ただ、絶望するばかりでなく、これらの現状を改善する案として、著者は、弁護士の有効活用を訴える。弁護士が裁判官になることを認めるというもの。弁護士には優秀な人が多いというのがその理由。

個人的に、腐敗が進む組織というのは、共通して第三者機関による客観的かつ強力な権限を持った評価機関が無いということにあると思う。
また、選挙時の「最高裁判所裁判官国民審査」ももう少し制度の改善の余地があると思うのだが。

【読書メモ】『歴史を変えた外交交渉』

歴史を変えた外交交渉
歴史を変えた外交交渉
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フレドリック スタントン 村田 晃嗣
原書房
売り上げランキング: 340,587

本書には1778年のアメリカ独立戦争時に締結されたフランス・アメリカ同盟条約から1986年のレイキャビクにおける日ソ首脳会談までの歴史的な交渉がとりあげられている。

交渉当事者たちが何を考え、自分たちの要求と相手方の要求の妥協点を見極めつつ、言葉を選びながら相手と交渉し、最終的な合意へ向かう臨場感ある描写は読み始めてからあっという間に引きこまれてしまった。 本書は歴史的な8つの交渉を取り上げているが、各々の交渉の最後に書かれている当事者たちが得た教訓、あるいは当事者たちの言葉は我々にとって交渉へのヒントとともに普遍的なテーマを突きつけるかもしれない。

僕はとくにパリ講和会議の章の最後に書かれているイギリスのデイヴィット・ロイド・ジョージ大統領(当時)の言葉が印象的だ。一部を引用させて頂く。

「(略)英雄的行為や勝利を描いた絵画に心をかきたてられるのは戦争の苦しみや恐ろしさを知らない連中だけだ。だから、30年度程度もの講和を成立させるのは比較的やさしい。難しいのは、戦争がどういうものかを実際に体験している世代がいなくなった時代においても新たな戦争を引き起こすことがないような平和を構築しておくことだ。」

今は第二次世界大戦から70年あまり。直接戦争に行かなくても疎開経験など、何かしら戦争による経験をされている方々もご高齢であり、戦争に関わる体験をした方々も少なくなっている。そんななか、戦争をせずに、国益を守るにはどうすればよいのだろうか。

今後、外交交渉は今まで以上にとても重要になってくるだろう。