2014年12月27日土曜日

【読書メモ】『暴露:スノーデンが私に託したファイル』

暴露:スノーデンが私に託したファイル
グレン・グリーンウォルド
新潮社
売り上げランキング: 4,955

アメリカ国家安全保障局(NSA)が行っていた国民電子通信の監視活動とそれらが実際に公にされるまでにあったいろいろな実態がわかる一冊。すでにニュース等でも有名になってしまったエドワード・スノーデン氏による暴露情報全貌をまとめたものである。

本書を読むと、その監視活動が実に、巧妙に、厳格なルールのもと実行されていることに驚くだろう。公開文書には、システムの概要図のようなものまであり、資料の内容の一端がわかるので、IT業界に携わる人なら、単純に、NSAという公的機関がシステム要件をどのようにしてドキュメント化しているか、興味深い内容になるかもしれない。
そして、このようなリークは我々に真実をもたらす一方で情報公開者に対するメディアの想像を超えるネガティブキャンペーンのすさまじさにも驚くことのなる。

例えば、NSAはネットで利用している各種無料のサービスを提供する企業(マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブック等)から監視に関する情報の提供を受けていることがわかる。うすうす感じている身とはいえ、やはり驚くべき内容だ。

また、国家間の情報戦争なんて言葉が現実味を帯びる事実も本書には提示されている。例えば、関係国との情報に関するやりとりについてだ。関係国をその強力の度合いにより三つのカテゴリに―ランクしている。三つのカテゴリはファイブアイズ同盟国>協力するけど監視もする国>監視国といった具合。ちなみに、日本は三つのカテゴリのうち残念ながらファイブアイズ同盟国には入っていないようです。戦争はしないけど経済ではいろいろバチバチですからなってことで。

また、ネガティブキャンペーンについてもトーク番組で司会者が公然とスノーデン氏や、事実を公表した著者自身にも及ぶ。あるTV番組では根も葉もないデマ情報を元に司会者が公然と人格非難・否定を行うのである。(その後正式に謝罪するところもあれば全くしないメディアもある)
この辺りは、以前アメリカの選挙に関する本を読んだ時にも感じたが、そのでっち上げぶりが見事なぐらい徹底していて、あきれてしまう。

本書は個人にとって便利(かもしれない)なITが国にとっても便利に使われてますよということを知らしめてくれる本である。また、日本を含め、あらゆる国々でも同様のことが行われていると見るべきであるだろう。

2014年12月6日土曜日

【読書メモ】『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)』


「埋蔵量」とはなんだ? それを理解するにはまず「資源量」を理解しないといけない。「資源量」は地中に存在する「炭化水素量」を指す。それは発見度合いによって「未発見資源量」から、「推定資源量」そして「原始資源量」と三つに分けられる。「埋蔵量」はこの「原始資源」のうち技術的に回収可能な資源量のことである。

説明はさらに続く。「埋蔵量」も厳密には三つある。「予想埋蔵量」、「推定埋蔵量」、「確認埋蔵量」とあり、一般的にいう「埋蔵量」は「確認埋蔵量」のことを指す。やっかいなのは、この「埋蔵量」回収可能な資源量だから、発掘技術の進歩によってその量は増えていく。昔は石油は後30年なんて言われていた時期もあったけれど、今ではもう少し伸びているのはこのためだ。今後採掘技術が進めばこの数字はもっと伸びるだろう。つまり、後何年で枯渇しちゃうって話は確定ではないんですな。

本書では石油発掘の歴史から、代替エネルギーとの比較も含めて、分かりやすく書いてある。原発が止まっている今、やはり石油に依存せざるをえないのか?代替エネルギーはどうなのか?

残念ながら、まだまだ石油にはお世話にならざるをえないようだ。輸送効率、エネルギー埋蔵量、コストの面でもまだまだ石油が圧倒的に有利なようだ。

今後の日本はどのようなエネルギー政策をとるべきか。その点について考える時、筆者は日本がどのような国であるべきかを視点で考えることが大事だと訴えている。
やはり自国にエネルギーがあるのは有利だな〜

2014年8月17日日曜日

【読書メモ】『戦争責任者の問題』

戦争責任者の問題
戦争責任者の問題
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(2012-10-04)

作者の伊丹万作は日本の脚本家、映画監督、俳優、エッセイスト、挿絵画家。(Wikiペディアより)映画監督 伊丹十三は氏の息子である。 初出は『映画春秋 創刊号』1946(昭和21)年8月。

本書は、AmazonのKindleで無料で入手可能な青空文庫である。Kindleをお持ちの方には是非ご一読をおすすめする。

過去の戦争は戦争を指揮した軍が悪い。無能な指導者が悪い。そして、無能な軍上層部によって国民はだまされ、戦争に巻き込まれた。だから、国民は被害者である。と思っている人にとってはそれが思い込みに過ぎないこと気づかせてくれる本である。

国策とメディア戦略によって国民は徐々に洗脳されて国民は「軍にだまされて」いく。しかし、本書は「だまされるということ自体が一つの悪である」という。著者はそれを「家畜的な盲従に事故の一切をゆだねるようになってしまった」という厳しい表現で指摘する。そして、次の文がとどめのひと突き。「過去の日本が、外国の力なしに封建制度も鎖国制度も独力で打破することができなかった事実」である。

ここまで読むと日本人であることにやや悲観的にさえなってしまう。「だまされていた」という限り、その人は何度もだまされるのである。この言葉や強烈である。

ではどうすればだまされずに済むのか。なぜだまされたのかという分析を徹底的に行い、次回に活かすのである。本書でも「二度とだまされまいとする真剣な事故反省と努力」という言い方をしている。徹底的な自己改造を持って自らを変えていかなかければならないのである。

ということで自分ももっと本を読んでいこうと心に誓った読後である。

【読書メモ】『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』

紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている
佐々 涼子
早川書房
売り上げランキング: 309

本書は、震災で破壊された日本製紙石巻工場の生産ラインが復旧するまでを描く。本書を読んで、以前読んだ『兵士は起つ:自衛隊史上最大の作成』を思い出した。

本書を読み終わった後に、つい、本書の紙質を手で触ってその「触感」を確認してしまった。紙は、出版される本の読者や用途に応じて繊細な「調成」を経て作成される。製紙会社には紙の作り方を記した「レシピ」と呼ばれるものが存在するらしい。それほど紙の作成にはノウハウが必要なのだ。

日本製紙は日本の出版用紙の約四割を担っている。その日本製紙の石巻工場は主力工場である。同工場にある8号抄紙機と呼ばれるものからは、以下の作品が生み出される。

・村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
・百田尚樹『永遠の0ゼロ』
・沖方丁 『天地明察』
・東野圭吾『カッコウの卵は誰のもの
単行本
・『ONE PIECE』
・『NARUTO―ナルト―』

どの作品も一度は聞いたことのある作品であると思う。

本書では、復旧にあたる従業員の姿が描かれる。工場を復旧させるにあたり、どの機械から復旧させるのか、期限の設定はどのようにして決定されたのかなど、情熱だけでなく、企業としてシビヤな、冷静な見方をしつつ、設定されたことがわかる。

一方で、遺体の発見や収容の光景など、復旧時に遭遇する震災の生々しい描写も描かれる。ちなみに、日本製紙石巻工場では、工場敷地内で41名の遺体が発見されている。

電子書籍が便利だなと思っていたが、ふと、紙質を味わうっていう楽しみ方もあるのかと考えさせられた一冊である。

2014年7月14日月曜日

【読書メモ】『絶望の裁判所 (講談社現代新書)』

絶望の裁判所 (講談社現代新書)
瀬木 比呂志
講談社
売り上げランキング: 675

著者は元裁判官で、執筆も多数。本書は元裁判官である著者が現在の日本の裁判官と裁判所制度について問題点を指摘している。その姿勢はとても悲観的だ。

著者はアメリカに留学経験があり、アメリカの裁判制度を身近に感じる機会を得ている。そのことが日本の裁判制度の問題点をよりはっきりと浮き立たせてるのではないだろうかと個人的に思う。

著者は裁判制度の問題点は、裁判官を取り巻く環境にあるとしている。裁判官は世間から閉ざされており、限られた中で実績を上げることを求められる。 そして、実績が挙げられない裁判官は冷遇される。
我々にとって画期的判決を出した裁判官が必ずしも高く評価されずむしろ冷遇される環境にあることが問題であると。

ただ、絶望するばかりでなく、これらの現状を改善する案として、著者は、弁護士の有効活用を訴える。弁護士が裁判官になることを認めるというもの。弁護士には優秀な人が多いというのがその理由。

個人的に、腐敗が進む組織というのは、共通して第三者機関による客観的かつ強力な権限を持った評価機関が無いということにあると思う。
また、選挙時の「最高裁判所裁判官国民審査」ももう少し制度の改善の余地があると思うのだが。

【読書メモ】『歴史を変えた外交交渉』

歴史を変えた外交交渉
歴史を変えた外交交渉
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フレドリック スタントン 村田 晃嗣
原書房
売り上げランキング: 340,587

本書には1778年のアメリカ独立戦争時に締結されたフランス・アメリカ同盟条約から1986年のレイキャビクにおける日ソ首脳会談までの歴史的な交渉がとりあげられている。

交渉当事者たちが何を考え、自分たちの要求と相手方の要求の妥協点を見極めつつ、言葉を選びながら相手と交渉し、最終的な合意へ向かう臨場感ある描写は読み始めてからあっという間に引きこまれてしまった。 本書は歴史的な8つの交渉を取り上げているが、各々の交渉の最後に書かれている当事者たちが得た教訓、あるいは当事者たちの言葉は我々にとって交渉へのヒントとともに普遍的なテーマを突きつけるかもしれない。

僕はとくにパリ講和会議の章の最後に書かれているイギリスのデイヴィット・ロイド・ジョージ大統領(当時)の言葉が印象的だ。一部を引用させて頂く。

「(略)英雄的行為や勝利を描いた絵画に心をかきたてられるのは戦争の苦しみや恐ろしさを知らない連中だけだ。だから、30年度程度もの講和を成立させるのは比較的やさしい。難しいのは、戦争がどういうものかを実際に体験している世代がいなくなった時代においても新たな戦争を引き起こすことがないような平和を構築しておくことだ。」

今は第二次世界大戦から70年あまり。直接戦争に行かなくても疎開経験など、何かしら戦争による経験をされている方々もご高齢であり、戦争に関わる体験をした方々も少なくなっている。そんななか、戦争をせずに、国益を守るにはどうすればよいのだろうか。

今後、外交交渉は今まで以上にとても重要になってくるだろう。

2014年6月14日土曜日

【読書メモ】『医師は最善を尽くしているか―― 医療現場の常識を変えた11のエピソード』

医師は最善を尽くしているか―― 医療現場の常識を変えた11のエピソード
アトゥール・ガワンデ
みすず書房
売り上げランキング: 42,599

著者はアメリカの医師でTHE NEW YORKER誌の医学・科学部門のライター。2010年にTIME誌で「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれている。

本書では様々な医療現場の中で困難に向き合う医師達の姿が描かれる。医療器具や医薬品が不足している僻地、地獄図のような戦場での治療現場、患者に誠意を持って対応した医師に対する医療訴訟など、個人ではいかんともし難い状況の中で大きな効果を挙げた事例を紹介している。

著者はそれらを「ポジティブな逸脱」と呼んでいる。そして、ポジティブな逸脱をするために以下の5つの提案を語りかける。
1.「筋書きのない質問をしろ」
2.「不平を漏らすな」
3.「何か数えろ」
4.「何か書け」
5.「変われ」

これらの提案の意味することは本書を読み込んで欲しいが、何も特別なことは行っていないことがわかるだろう。日々、地道に目の前の課題に取り組む。自分に妥協せず、自分の納得行くまで徹底的に考え抜くのである。そして、常に自分を客観的に捉え、変化するチャンスをさがし続けるのである。

2014年5月5日月曜日

【読書メモ】この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

本書は経済学者:ヨラム・バウマンと漫画家:グレディ・クラインによる漫画で読む経済の本だ。『世界一わかりやすい経済の教室』と同じくブログ「Economics Lovers Live ReF」(10/6記事)で紹介されていた本。一回読んだだけじゃ駄目だな。

【読書メモ】『この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講』

本書は経済学者:ヨラム・バウマンと漫画家:グレディ・クラインによる漫画で読む経済の本だ。『世界一わかりやすい経済の教室』と同じくブログ「Economics Lovers Live ReF」(10/6記事)で紹介されていた本。こちらはミクロ経済。
一回読んだだけじゃ駄目だな。

【読書メモ】『世界一わかりやすい 経済の教室 (中経の文庫)』

著者は飯田泰之。エコノミスト。テレビで大人気(らしい)by 本書表紙。読みやすくてとてもわかり易い。経済の勉強をする上で、まず読んでおいていいかもしれない。

本書はこちらのブログで知った。2013年10月6日記事の「[経済]経済を無理なく理解するにはどうしたら?(経済書ブックガイド2013秋)」である。

個人的に気になった単語。サンクコスト(埋没費用)、経営学(競争回避)と経済学(競争讃歌)、マクロ(クローズドシステム)とミクロ(オープンシステム)。そして銀行がどうやって日本経済を動かすのかなど、丁寧に触れている。自分も知っているつもりになっていたこととか、いろいろ気づきもあってあっという間に読んでしまった。経済に関する本を読む取っ掛かりとしていいかもしれない。

【読書メモ】『コミュニケイションのレッスン』

著者は鴻上尚史氏。演出家、映画監督、小説家等色々な肩書を持つ。コミュニケーションの本は書店のビジネス本コーナーにいけば沢山売られているが、僕は演技に携わる人がコミュニケーションについてどんなことを書いたのか興味があった。

本書にはコミュニケーションの基本的なことが書いてあるが、僕はなかでも話を「聞く」について触れているところが読んでいてとても興味深かった。やはり、誠実に話しを「聞く」事が大事なんだなと。

「話は聞いているんだけど、コミュニケーションがうまくいかないなぁ」と悩んでいる人は解決策へのヒントになるだろう。自分が思っていることと相手が感じ取ることは違うのである。

緊張しているときはお腹に力を入れて話して(聞いて)みるのがいいらしい。他にも、「世間」と「社会」についての内容はなかなか興味深い。

2014年2月23日日曜日

【読書メモ】『脳には妙なクセがある』

脳には妙なクセがある
脳には妙なクセがある
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池谷 裕二
扶桑社
売り上げランキング: 17,854

著者は池谷裕二氏。『進化しすぎた脳』や『脳はなにかと言い訳する』など、脳に関する著書をいろいろ書いている。本書は身近なところから脳に関する「へえ〜」と思える話を脳科学の研究データからわかりやすく解説してくれる本。

過去にジャンルを問わず読んだ様々な本では、「手で書いたほうが物事をよく覚えられる」とか、「ランニングなど、体を動かすことは脳にも好影響を与える」とか、「入力よりも出力が大事」ということが書いてあった。本書を読んだ後、それら全てのことがひとつに繋がった。個人的にはとても目からうろこであった。

人間の脳は脳幹や小脳、基底核からなる旧脳の周りを大脳新皮質が覆っている。身体と密接な関係をもつ旧脳に対し、大脳新皮質はあまり関連がない。著者はこの構造をさして大脳新皮質は「身体を省略したがる」という。進化に伴い、考えることが中心に据えられたような構造である。
しかし、そんな「身体を省略したがる」脳をもつわれわれに身体経験の重要性をさまざまな研究事例を通じ説いていく。

たとえば、暗記。頭で暗記するよりは実施にテストを通じアウトプットを繰り返したほうが暗記の定着率は良いそうだ。テストをして間違えたら間違えたところだけやるよりも全てをもう一度テストし直したほうがいいとのこと。今後の勉強に役に立てそうである。

また、笑顔の例では、無理にでも作った笑顔は印象を良くしてくれるらしいし、自らの気分も良くしてくれるそうだ。形から入るのもいいかもしれない。

ランニングが体にいいという話は『よみがえる脳』や『臓器は若返る』にも書いてあるとおり。本書では身体を能動的に動かすことほうが受動的に動くことよりも脳の活動がより活発になるということがマウスの実験から示されている。自ら動いてランニングをすることは脳を活発にしてくれるそうです。

2014年2月16日日曜日

【読書メモ】『いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)』

いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)
内藤 朝雄
講談社
売り上げランキング: 13,160

学校という環境は特殊で世間の常識が通用しないところらしい。本書を読んだ後の最初の感想である。凄惨ないじめとそれを発端とした自殺。その加害者たちは呆れるほど平然と、悪びれることもなく自らの罪について語る。そこには反省というものは一切感じられない。

本書は、実際にあったいじめによる事件について状況を事細かに分析していく。読んでいてやや難しかったが、学校という環境が世間から見ていかに異常な環境であるかが伝わってくる。世間の常識は当てはめられない。学校も当てに出来ない。(学校はむしろ隠蔽に奔走する)読んでいて何ともやりきれなくなる本である。

【読書メモ】『新版 家を買いたくなったら』

新版 家を買いたくなったら
長谷川高
WAVE出版
売り上げランキング: 515

家を買うべきか、賃貸にすべきかをちょっと考え始めた時に読んだ本。本書はそんな時に家を買うことのメリット、デメリットを解説する。賃貸には移動の自由というメリットがあるのはなるほどと思った。実際にはそう頻繁に引越など出来ないけれども。

家も戸建てかマンションか、中古かも含めてそれぞれの利点、欠点を解説してくれる。
一方で、家を購入するにあたって注意すべきところを家のタイプ別に解説してくれている。こちらは実際に購入を決意した際に見ておけば参考になると思う。

2014年2月11日火曜日

【読書メモ】レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書 410)

佐々木俊明氏による新書は新書といいながらその分量と内容の濃さに圧倒される。本書も読み進めるうちにちょっとした世界史を紐解くことになってお腹いっぱいの内容。巻末の参考文献の多さに驚く。

第三の産業革命を迎えているらしい。そこでは人口も増えないし、劇的な技術革新もなく、なんといっても雇用が生まれない。正確には雇用は海外の新興国へ流れていく。だからお給料もこれ以上増えない。むしろ、下がる。頑張らないと今の職も危ないよと。 なんとも寒々しい。これはウチとソトの関係が崩れたことによるものらしい。

ウチとソトというのは「国内」と「国外」という国を隔てる境界線で、それが崩れていると。そして、これからは「場」を提供する側とされる側の関係になる。それまでウチとソトの関係が崩れレイヤーという層になっていくと。レイヤーとは、個々人が持っているいくつかの側面のようなものと読み取った。趣味での自分、仕事での自分、家族での自分。これからは個人のそれぞれの(レイアーでの)自分を表現することが多くなる。そして、表現のする「場」がSNSであり、そこではさらに、国内と国外という関係が崩れ、世界的にフラットになっていく。

本書では「場」を提供する代表的企業としてアマゾンやfacebookが挙げられている。世界横断的にものを販売するアマゾンと世界横断的にSNSを提供するfacebook。われわれはそれらを利用する「提供される側」だと。一方で納得できるものの、もう一方で「ん?」という自分がいる。身近に自分の親をみるととても当てはまるとは思えないからだ。(というか、自分の親世代はもう当てはまらないのかもしれないが)

本書では、そんな寒々しい(笑)第三の産業革命で上手く立ちまわる方法を示していないが、まずは認識しておきましょう、という。そして、今までの考えを変えていきましょうと。最近、こんなのばっかりだな(笑)。まあ、考えを変えなければならないのは今に始まったこと無いなぁと思う今日このごろ。いままでの常識、固定観念をあらためないといけないなと強く感じた一冊です。

【読書メモ】腸!いい話――病気にならない腸の鍛え方 (朝日新書)


本書は腸のお話。著者の伊藤裕氏は慶応大学医学部の教授で他に『臓器は若返る』がある。はて?どこかで聞いたことがあるような・・・・それに本書に出てくるイラストにも見覚えがあると思ったら、すでに読んでいたのであった。

腸は最も身近な臓器で、健康増進にも密接に関わっていることが書かれている。最も血液を使う臓器であり、老化の兆候が早くから現れるのが腸である。腸に関しては別の本『火の賜物』の著者R・ランガムも人間と動物の腸の違いについて引用されている。(これも読んでた)人間の腸は他の動物にくらべてサイズが小さい。その理由は、人間が火を使って食べ物を調理するようになったからというもの。その結果、腸へ振り分けられている文の血液を人間は脳に振り分けることができるようになり、脳の進化へとつながっていく・・・腸の役割は人間の進化にも影響を与えたのかもしれないというのだ。

メタボも、腸が関係する。なるべく腸を動かすようなも加工されていないものを食べたほうが腸がよく動いてカロリーを消費してくれる。だから、カロリー高めで消化に優しい物はもっともメタボへの近道になる。これからは生野菜を多く食べようと思う。

本書を読んで一番印象的なところは免疫系と腸との関係。リンパ球が作る外敵を排除するための武器である「免疫グロブリン」の半数は腸管で産生されている。腸は外部からものを体内に入れる「食べる」という行為でもっとも危険にさらされるからである。

腸の働きを良くする食べ物。それは食物繊維。食物繊維は便通を良くしてくれる。便の量を増やしてくれる。それは、腸をある程度引っ張ってくれることで腸の筋肉を刺激してくれる。

また、水に溶ける食物繊維は腸内でゲル状になり、糖や胆汁を吸着してくれる。その結果、血糖の急上昇を抑えてくれる。コレステロールから作られる胆汁を吸着するので、コレステロール値も下げてくれる。

食物繊維の豊富な食べ物は豆類、穀類、野菜(たまねぎ、大根、ごぼうといった根もの)、ナッツ類、くだもの、海藻。これらをたくさん食べて腸をいたわろうと思う。