グレン・グリーンウォルド
新潮社
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アメリカ国家安全保障局(NSA)が行っていた国民電子通信の監視活動とそれらが実際に公にされるまでにあったいろいろな実態がわかる一冊。すでにニュース等でも有名になってしまったエドワード・スノーデン氏による暴露情報全貌をまとめたものである。
本書を読むと、その監視活動が実に、巧妙に、厳格なルールのもと実行されていることに驚くだろう。公開文書には、システムの概要図のようなものまであり、資料の内容の一端がわかるので、IT業界に携わる人なら、単純に、NSAという公的機関がシステム要件をどのようにしてドキュメント化しているか、興味深い内容になるかもしれない。
そして、このようなリークは我々に真実をもたらす一方で情報公開者に対するメディアの想像を超えるネガティブキャンペーンのすさまじさにも驚くことのなる。
例えば、NSAはネットで利用している各種無料のサービスを提供する企業(マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブック等)から監視に関する情報の提供を受けていることがわかる。うすうす感じている身とはいえ、やはり驚くべき内容だ。
また、国家間の情報戦争なんて言葉が現実味を帯びる事実も本書には提示されている。例えば、関係国との情報に関するやりとりについてだ。関係国をその強力の度合いにより三つのカテゴリに―ランクしている。三つのカテゴリはファイブアイズ同盟国>協力するけど監視もする国>監視国といった具合。ちなみに、日本は三つのカテゴリのうち残念ながらファイブアイズ同盟国には入っていないようです。戦争はしないけど経済ではいろいろバチバチですからなってことで。
また、ネガティブキャンペーンについてもトーク番組で司会者が公然とスノーデン氏や、事実を公表した著者自身にも及ぶ。あるTV番組では根も葉もないデマ情報を元に司会者が公然と人格非難・否定を行うのである。(その後正式に謝罪するところもあれば全くしないメディアもある)
この辺りは、以前アメリカの選挙に関する本を読んだ時にも感じたが、そのでっち上げぶりが見事なぐらい徹底していて、あきれてしまう。
本書は個人にとって便利(かもしれない)なITが国にとっても便利に使われてますよということを知らしめてくれる本である。また、日本を含め、あらゆる国々でも同様のことが行われていると見るべきであるだろう。