2012年4月30日月曜日

【読書メモ】新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)

新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)
上杉 隆
PHP研究所
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僕は上杉隆氏のファンでもなければ支持者でもないけれど、自由報道協会という媒体は支持しているし、震災の時や政治家の記者会見などは結構拝聴した。そんな中、上杉氏が出した本書では、「癒着メモ」公開ということでちょっと興味をそそられた。

内容は、上杉氏の暴露本だが、これを読めば、取材活動がどのように行われているのかがわかるかもしれない。一歩引いてみてもこれはこれで取材の裏側が覗けて興味深い。

【読書メモ】日本語作文術 (中公新書)

日本語作文術 (中公新書)
日本語作文術 (中公新書)
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野内 良三
中央公論新社
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HONZで紹介されていた本である。僕は以前、『理科系の作文技術』や、『日本語の作文技術』を読んで論文作りの際にかなり参考にさせてもらいました。本書は、今後僕の机の上が定位置になるだろう。事あるごとに読み返して、いろいろお世話になっております。この本を読んでから、過去に書いた読書メモ、ちょくちょく直し中。。。。

【読書メモ】『ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える』

ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える
井上 明人
NHK出版
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本書はHONZ.JPでも紹介された本で、ゲーミフィケーションについて語られた本である。本書によるとゲーミフィケーションとは、「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するももの」として定義されている。そもそも、この「ゲーミフィケーション」という概念は2011年8月にガートナー社という調査会社が注目すべきテクノロジーの一つとして選んだ概念である。

ゲームというとTVゲームをイメージするが、本書では選挙の候補者のホームページ(オバマ大統領の選挙活動)や、ランニングの履歴管理(ナイキプラスやRUNKEEPER)や、ある地域へ訪れたことを記録すること(ロケタッチ、フォースクエアなど)を例にゲーミフィケーションについての説明とそれらの影響について述べられている。

いくつかのものはすでに知っていたが、選挙への活用例は思わずよく考えたなと感心してしまった。支持者は候補者のホームページ上に登録すると、どのように候補者のために役に立てたのか、例えば電話を何十世帯へかけたとか、いくら寄付をしたとかを記録すると、まるでロールプレイングゲームのようにレベルが上がっていき、レベルに応じた位が与えたれていく。その結果、支持者はまさにゲームを行なっているように支持活動に参画できるのである。よく考えたな〜と。

他にも、スターバックスの常連客へのサービスプログラムや、ディズニーの人事制度など、身近な例が色々出て来て興味深い。自分もプログラミングコードを勉強できる「コーデカデミー」をちょっと覗いてみたが、なかなか面白そう。

本書は、今、巷に色々あるサービスをうまい具合に整理していくれているような気もする。

【読書メモ】サラリーマンは自宅を買うな ―ゼロ年世代の「自宅を買わない生き方

サラリーマンは自宅を買うな ―ゼロ年世代の「自宅を買わない生き方
石川 貴康
東洋経済新報社
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最近、自宅を購入するかどうか意識するようになった。同級生や、会社の同期ではすでに購入しているものもいて、親世代からは「早く買えばいいのに」と言われ始めている。

今まで全く意識してなかったので、税金のことやローンのことなど、基本的なことが全くわからないので、周りの声に促されて買うのは危険だなと感じている今日この頃。まずは、住宅購入について書かれていい本はないかとネットを探したところ、「NEWSポストセブン」というサイトに面白い記事を見つけた。「サラリーマンは自宅を買うな」である。はたまた刺激的なタイトルである。Amazonの評価は案内良い。とりあえず買って読んでみた。

内容は、タイトルからも想像したほどは過激な内容ではなく、ごく当たり前のことが書いてあった。「家を買ったほうがいい」とすすめる親の世代と自分の今の経済状況は全く違う。この点は自分もすごく納得なわけで、結婚して子供を育てて、車を買って、マイホームを建てて。。。。というストーリーを今の時代に当てはめるのは正直ちょっとつらいなと感じているのも事実。

一方で、定年後はどうするのか?リタイヤした老夫婦に気前よくアパートを貸してくれる家主はいるのか?気になるところである。著者は、実際に家主らしいので、その立場からも「問題無い。」と言い切っている。むしろ、最長35年もローンに縛られることで人生のあらゆる可能性の芽を摘んでしまうことになり、そちらのほうがロスであるというのが著者の主張している意見の一つでもある。

僕はもう一冊の『家を買いたくなったら』も読んでみて判断してみようと思う。


2012年4月16日月曜日

【読書メモ】鉄は魔法つかい

鉄は魔法つかい
鉄は魔法つかい
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畠山 重篤
小学館
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本書は、HONZ村上さんおすすめ本。見た目は魔法使いのイラストが書いてある親しみやすい装丁の本だ。著者は宮城県気仙沼湾で牡蠣の養殖をしている漁師。

おいしい牡蠣は川が流れこむ汽水域とよばれる淡水と海水が混じりあった海域で育つ。そして、そこに流れ込む川の上流に植えられている木々がとても重要である。なぜ重要なのか。そこには、鉄が大きく関わってくる。鉄の魔法により美味しい牡蠣が育つのだ。本書では、それらの関連を科学的に説明してくれている。

最初、鉄と聞いていまいちピンとこなかった。要はこうなのだ。
豊かな海は、植物ブランクトンが豊富で、海藻が豊かになる。そして、動物プランクトン、小魚が増える。そして大きな魚も増える。結果、豊かな海となる。

植物は光合成を行う。光合成にも鉄が必要らしい。光合成に必要な葉緑素、この葉緑素ができるには「鉄」が必要となる。
また、光合成をして植物、植物プランクトンが育つには、チッ素とリンといった養分が必要。海では、チッ素は硝酸塩、リンはリン酸塩という形で水に溶けている。植物が海中に溶けている硝酸塩、リン酸塩を栄養とするためには、それぞれチッ素、リンに戻さなければならない。つまり還元をしなければならないのだ。ここでも「鉄」が重要になってくるのである。

鉄は、地上では酸素とむすびついて「サビ」という形で酸化してしまう。このままでは植物は鉄を吸収できない。吸収するには「フルボ酸」というかたちが最適らしい。この「フルボ酸」は、主に森林の腐葉土のなかで作られる。植物は「フルボ酸」という形で存在する鉄であれば吸収できるのである。つまり、腐葉土を育む森林がここで登場する。ゆえに豊かな海には豊かな森林が不可欠なのである。

人間の血は赤い。これはヘモグロビンのせい。ヘモグロビンには鉄分と酸素、呼吸後は二酸化炭素が結びついている。エビなどの甲殻類の血は青い。これは鉄分でなくヘモシアニンという銅が中心のものだから。

鉄の話から鉄分を上手に取るための料理の話も触れられている。ここは料理を食べる上で、非常に参考になる。
レバニラやあさり、牡蠣などの鉄分の吸収はとてもよく、含まれている鉄の二十パーセントも吸収される。これは吸収されやすい形のヘム鉄を含んでいるから。

のりやヒジキ、納豆やほうれん草などに含まれている鉄は吸収されにくい鉄らしい。これは非ヘム鉄という形だから。ピタミンÇや酢と一緒に取るといいらしい・・・

わかりやすくて楽しい本である。

2012年4月1日日曜日

【読書メモ】『IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)』

IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)
東 浩紀 飯田 豊 三上 洋 宮台 真司 村上 圭子 池田 清彦 円堂 都司昭 荻上 チキ 加藤 典洋 萱野 稔人 西條 剛央 酒井 信 神保 哲生 飯田 哲也 武田 徹 津田 大介 広瀬 弘忠
インプレスジャパン
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本書はメディアでも比較的に名前を聞く(僕自身初めて聞く人もいるけれど)学者、ジャーナリスト、編集者ら17人によって、昨年の震災の時にどのように行動し、震災をどのように振り返り、そして、今後をどのように過ごすのか、といった点についてまとめられた本である。
前半は上記17人とは別に、Googleや、Yahoo!JAPANを始めとするIT企業の震災への対応を、中盤は各論客による震災時におけるさまざまなITの対応について、後半は震災の経験を踏まえて今後のITの可能性を示している。本書を読んで「そうそう、こういうこともあった」とか、「こんな動きもあったのか」と初めて知ったりすることもあり、震災を振り返るには丁度良い一冊かもしれない。

Googleがホンダパイオニアから提供を受けて作成した自動車・通行実績情報マップは自動車関係のメディアでも取り上げられていて、こんなことができるのかと情報を提供したホンダとパイオニアの技術と企業姿勢に感心してしまった。(後に、トヨタ日産も情報を提供し、広範囲な通行実績情報の表示が可能になった。)

MITメディアラボ伊藤氏によるSafecastは放射能の測定・公開をボランティアで行った。Safecastによる放射能測定ボランティアは1979年3月28日にアメリカで発生した「スリーマイル島原子力発電所事故」の周辺の放射能測定を行うエキスパートも参加するなどかなり本格的なボランティアだ。放射能測定は、測定値を適切に読み解く知識も必要で、Savecastでもその点を踏まえた活動を行なっている。放射能に関する情報はツイッター上でも議論が熱くなっていて何が本当なのやら、どれを信じで良いのやら正直良くわからなかった。もう少し勉強が必要かもしれない。

荻上チキ氏の「その時、検証屋はどう動いたか」はなかなか興味深かった。実際自分も、Twitterでデマの発生から情報源が特定されて、デマの発信者が糾弾されるところを目にしたからだ。良かれと思ってやったこと(RTしたこと)が結果的にデマに加担していた。。。。なんてことが、幸い自分はなかったが、知人からのRTがデマだったことが度々あったので、情報を伝えることは、特にあのような非常事態時における情報伝達は難しいことだなと痛感。チキ氏も検証屋はどの程度「役に立ったのか?」については、かなり控えめだ。このあたりは評価をするのが難しい。個人的にはこういう情報の整理屋さんがいてくれてよかったと思う。

福島原発における作業員の活躍を美談のように伝えているメディアについては若干の違和感を感じたわけだが、その辺は東電と政府への責任追及をする一方で現場の作業員への関心の低いということで酒井信氏が触れている。欧米メディアが復旧にあたる作業員をフクシマ50として賞賛している様を日本のメディアがニュースとして取り上げる一方で、現場の作業員に関する情報についてはなかなか取り上げられない。この点は、以前読んだ鈴木智彦氏『ヤクザと原発』でも触れている。負の部分を隠して正の部分を伝えるって昔に多様なことがあったような。。。あっ、大本営か。日本は昔からちっとも変わっていないのかなと読んでいて若干気持ちが沈んでいく。

津田大介氏の震災時におけるツイッターでのコメントは知っている人も多いだろう。ジャーナリストとしてツイッターを駆使してどのように情報を扱っていったのかは、一つの参考になるかもしれない。主観的なコメントを付けずにそのまま情報を流す、政府が発表する情報とそれに反対する情報の双方を流す、といったことである。とかくツイッターばかりの話題が先行しがちだが、震災時のメディアの対応についてもしっかり触れている。

宮台真司氏による「日本は<空気に縛られる社会>」であるという指摘は、とても鋭いと思った。酒井氏のところでも触れたメディアへの違和感についても自分で腑に落ちた。震災でもコンビニで並ぶ日本人というのも、あれはあれですごいことだが、<空気に縛られる社会>の産物なんだなといわれるとなるほど。。。。

というように、いろいろ読んでいて思うことしきり。日本人は戦前も戦後も<空気に縛られている>んだなということが一番印象的だった。

【読書メモ】いちばんやさしい地球変動の話

いちばんやさしい地球変動の話
巽好 幸
河出書房新社
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ここ最近読んだ「チェンジングブルー」、「銃・病原菌・鉄」、「なぜシロクマは南極にいないのか」を読んで気になったところがあった。人の移動と海流の移動とくれば、地殻の移動が気になる。そこでHONZ村上さんのちょい読み記事。読んでみた。

本書はマグマ学者の巽好幸氏。 大陸移動説や地殻が移動すること、海嶺と海溝など、多少は知っていることもあったが、本書ではよりわかりやすく、プレートが海嶺から発生して海溝に潜り込むまで、そして、潜り込んだ後にマグマが発生して火山活動に至るまでが見やすいイラストと共にやさしく解説。

地殻といっても、大陸地殻と海洋地殻とでは、組成が異なるようだ。特に二酸化ケイ素の構成にその違いが顕著らしい。その違いは地殻そのものの重さに関係してくる。結果、軽い地殻はより多くの地殻が覆いかぶさって大陸を構成する。実感として湧きにくいけれども、地殻はマントルの上にプカプカ浮かんでいるのである。

海溝の部分では潜り込んだプレートが摩擦でマグマが発生すると本で読んだことがあるけれど、なんでマグマが発生するかがいまいちピンとこなかった。本書ではマグマが発生して、火山活動に至るまでが解説されている。プレートは大量の水分を含んでいるスポンジのようなもので、これらが海溝に潜り込むと水分が放出され、それらの水分がマントルの融点を低めてマグマが発生する。まぁ、スケールが凄すぎて、プレートがスポンジと言われても想像がつかないけれども。。。

個人的に「へぇ〜」と思ったのは温泉。温泉には火山性温泉と非火山性温泉とに分けられる。火山性温泉は雨などの天水にマグマからの高温のガス成分が加わった熱水。代表的な火山性温泉では、大分の別府温泉だそうだ。
一方で、非火山性温泉は地層に閉じ込められたかつての海水や地下水が地温によって暖められたもの。有機物が多いとコーヒーのように「黒湯」となることがある。東京湾周辺はこの手の温泉が多いらしい。代表的な温泉に有馬温泉。有馬温泉はフィリピンプレートに含まれる水分が元らしい。同じ温泉でも元が違うと湯かげんも違うかもしれない(笑)