東 浩紀 飯田 豊 三上 洋 宮台 真司 村上 圭子 池田 清彦 円堂 都司昭 荻上 チキ 加藤 典洋 萱野 稔人 西條 剛央 酒井 信 神保 哲生 飯田 哲也 武田 徹 津田 大介 広瀬 弘忠
インプレスジャパン
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本書はメディアでも比較的に名前を聞く(僕自身初めて聞く人もいるけれど)学者、ジャーナリスト、編集者ら17人によって、昨年の震災の時にどのように行動し、震災をどのように振り返り、そして、今後をどのように過ごすのか、といった点についてまとめられた本である。
前半は上記17人とは別に、Googleや、Yahoo!JAPANを始めとするIT企業の震災への対応を、中盤は各論客による震災時におけるさまざまなITの対応について、後半は震災の経験を踏まえて今後のITの可能性を示している。本書を読んで「そうそう、こういうこともあった」とか、「こんな動きもあったのか」と初めて知ったりすることもあり、震災を振り返るには丁度良い一冊かもしれない。
Googleが
ホンダと
パイオニアから提供を受けて作成した自動車・通行実績情報マップは自動車関係のメディアでも取り上げられていて、こんなことができるのかと情報を提供したホンダとパイオニアの技術と企業姿勢に感心してしまった。(後に、
トヨタ、
日産も情報を提供し、広範囲な通行実績情報の表示が可能になった。)
MITメディアラボ伊藤氏による
Safecastは放射能の測定・公開をボランティアで行った。Safecastによる放射能測定ボランティアは1979年3月28日にアメリカで発生した「スリーマイル島原子力発電所事故」の周辺の放射能測定を行うエキスパートも参加するなどかなり本格的なボランティアだ。放射能測定は、測定値を適切に読み解く知識も必要で、Savecastでもその点を踏まえた活動を行なっている。放射能に関する情報はツイッター上でも議論が熱くなっていて何が本当なのやら、どれを信じで良いのやら正直良くわからなかった。もう少し勉強が必要かもしれない。
荻上チキ氏の「その時、検証屋はどう動いたか」はなかなか興味深かった。実際自分も、Twitterでデマの発生から情報源が特定されて、デマの発信者が糾弾されるところを目にしたからだ。良かれと思ってやったこと(RTしたこと)が結果的にデマに加担していた。。。。なんてことが、幸い自分はなかったが、知人からのRTがデマだったことが度々あったので、情報を伝えることは、特にあのような非常事態時における情報伝達は難しいことだなと痛感。チキ氏も検証屋はどの程度「役に立ったのか?」については、かなり控えめだ。このあたりは評価をするのが難しい。個人的にはこういう情報の整理屋さんがいてくれてよかったと思う。
福島原発における作業員の活躍を美談のように伝えているメディアについては若干の違和感を感じたわけだが、その辺は東電と政府への責任追及をする一方で現場の作業員への関心の低いということで酒井信氏が触れている。欧米メディアが復旧にあたる作業員をフクシマ50として賞賛している様を日本のメディアがニュースとして取り上げる一方で、現場の作業員に関する情報についてはなかなか取り上げられない。この点は、以前読んだ鈴木智彦氏『ヤクザと原発』でも触れている。負の部分を隠して正の部分を伝えるって昔に多様なことがあったような。。。あっ、大本営か。日本は昔からちっとも変わっていないのかなと読んでいて若干気持ちが沈んでいく。
津田大介氏の震災時におけるツイッターでのコメントは知っている人も多いだろう。ジャーナリストとしてツイッターを駆使してどのように情報を扱っていったのかは、一つの参考になるかもしれない。主観的なコメントを付けずにそのまま情報を流す、政府が発表する情報とそれに反対する情報の双方を流す、といったことである。とかくツイッターばかりの話題が先行しがちだが、震災時のメディアの対応についてもしっかり触れている。
宮台真司氏による「日本は<空気に縛られる社会>」であるという指摘は、とても鋭いと思った。酒井氏のところでも触れたメディアへの違和感についても自分で腑に落ちた。震災でもコンビニで並ぶ日本人というのも、あれはあれですごいことだが、<空気に縛られる社会>の産物なんだなといわれるとなるほど。。。。
というように、いろいろ読んでいて思うことしきり。日本人は戦前も戦後も<空気に縛られている>んだなということが一番印象的だった。