2012年12月22日土曜日

【読書メモ】日本を滅ぼす消費税増税 (講談社現代新書)

日本を滅ぼす消費税増税 (講談社現代新書)
菊池 英博
講談社
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今回はHONZとは関係なしに経済についての本を読んでみた。
著者は経済学者の菊池英博氏。 納税者として消費税が上がることは気が重い。だから反対と言いたいが、もう少し掘り下げて知りたいと思った。なぜ消費増税なのか、そして、著者はそれに対してどのような施策があるのか。

先日(2012年12月16日)には衆議院選挙もあり、各政党が消費税に対しては大きく増税容認と反対とにわかれている。ただ闇雲に反対する政党を支持するのもどうかと思った次第である。
本書では、現在の日本経済を平成恐慌であるとし、過去の昭和恐慌、米大恐慌にふれながら、日本が如何に深刻な状況か、消費増税が如何に間違っているかを過去の政策とグラフを持って具体的に教えてくれる。本書を読み終わった後は、現在はデフレに対して真逆の政策を行なっていること、そして、その原因の一端は政府・役人・御用学者の自虐的発想やら、財務省の見栄の問題など、なんだかな~と思わせる原因が見えてくる。最後に著者は、速やかに現在の自虐的発想を捨て、過去の歴史に学びながら適切な緊急政策を取るべきであると結んでいる。


消費増税に対しての理由と一つとして、日本もいずれギリシャのようになるという説明がなされているらしい。しかし、著者はこれは誤りと指摘する。ギリシャは債務国であり、国債の70%は海外投資家が保有する一方、日本は体外債権国であり、国債の95%は日本国民が保有する。経済の体質が全く異なるのである。(なるほど)

歴史に触れる中で、米緊急大恐慌や昭和恐慌にも触れており、現状の経済状況が如何に深刻なものかもグラフを交えて説明している。本書を読んだあとでは、経済についてちょっとわかったような気がする。まぁ、わかった気がするだけでも僕にとっては大進歩だ。新書でこの内容は充分お得だ。

以下、個人的なメモ


 本書では、米国大恐慌と昭和恐慌についても説明している。本書のいろいろな解説を踏まえて書この歴史をなぞるとなるほどと納得させられるところが多い。今時分はWIKIペディアで調べればだいたい分かる内容だが、整理したかったのでざっとメモをしておく。

【米国大恐慌について】
第一次世界大戦後の結果を受けて1919年以降、好景気に湧く。結果、株価の上昇ブームが起こる。いわゆるバブル景気である。そして1929年ニューヨーク株式市場の大暴落。次々と銀行・企業が破綻してくなかで、当時のフーバー大統領は市場原理主義にもとづき特別な救済策を講じなかった。
その結果、税収が減っていく。1932年、ここで大統領のとった政策は連邦税(国税)への初めての増税である。結果、物流へも増税の影響が波及し、米経済は大恐慌へ発展していった。

では、どのような対策を講じたか。
1933年に就任したルーズベルト大統領は金本位制を廃止し、管理通貨制度へ移行する。更に国債を増発して公共投資を増やした。ニューディール政策である。結果は、1935年から36年にかけて物価は上昇、GDPも増加して税収も増加した。1940年には名目GDPも恐慌前の水準に戻り、恐慌は解消した。
【昭和恐慌】こちらも第一次世界大戦の結果を受けて米同様、バブル景気に沸き、1920年に崩壊。更に追い打ちで1923年に関東大震災。恐慌と震災対応のまずさから1925年からデフレになり、中小の銀行が取り付け騒ぎで相次いで倒産。(う~ん、この辺は歴史でやったな。それと、恐ろしいほど今と重なる。。。。)

では、政府はどのような政策をとったか。1929年に首相に就任した浜口雄幸は井上準之助大蔵大臣とデフレ政策を進めていく。緊縮財政と金本位制の復帰である。金本位制は自国通貨を金の量で通貨の供給量をコントロールすることになるので、金を購入しないと必然的にデフレとなる。だから、金を購入しようとしてバランスを取るにはお金が必要だったが、当時はお金が足りないので無駄遣いをしないよう緊縮財政を徹底することになる。
結果はGDPが前年比で10%近く下落してしまった。さらに、浜口首相と、井上大蔵相は相次いで暗殺されてしまう有様。(怖い・・・)

どういうわけか、当時のマスコミ(主に大新聞)はデフレ政策を支持。不思議だ。結果的にこのまま戦争に突き進んでいくわけである。

その後、1931年に犬養毅内閣が組閣する。蔵相は高橋是清。ここからデフレ政策の全面的な転換が行われる。金本位制の取りやめと金融緩和。その結果、1932年にはデフレは解消した。