2013年12月7日土曜日

【読書メモ】『反省させると犯罪者になります (新潮新書)』


犯罪を犯した受刑者は「反省文」というのを書くらしい。自らの罪を振り返るとともに今後二度と罪を起こさないよう自らの決意を書く。しかし、どんな立派な「反省文」を書いても本人はほとんど反省していないようだ。

実際に反省文を書いた受刑者への聞き取りの様子は読んでいてびっくりする。反省どころかその場を切り抜ければいいという考えしか持ち合わせていないことがわかる。いかに上手く反省文を書いて、その場をやりすごすか。著者はそんな現状の受刑者への対応についても疑問を呈する。

そこで著者は受刑者に徹底的な聞き込みを行う。それは受刑者がなぜ犯罪に至ったのかの原因を突き詰めて聞いていくもので、受刑者自身の生い立ちまでに行き着く。原因を追求する様子はとても引き込まれてしまった。

原因を徹底的に追求する姿勢は以前読んだ「オタクの息子に悩んでます」や「ロジカルな田んぼ」にも通じるものがある。やはり原因を追求することというのはすごく大事だな。

2013年11月9日土曜日

【読書メモ】群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法

群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法
ピーター・ミラー
東洋経済新報社
売り上げランキング: 42,972

アリとミツバチとシロアリ、そして鳥、バッタ。昆虫から動物までのいろいろな”群れ”を科学的に解き明かしていく。

【読書メモ】世界が認めたニッポンの居眠り 通勤電車のウトウトにも意味があった!

世界が認めたニッポンの居眠り 通勤電車のウトウトにも意味があった!
ブリギッテ・シテーガ
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 35,281

本書は、オーストリアの研究者による日本人の居眠りについて科学的解明。
普段自分もよく利用している電車での居眠り。自分でも自覚はないが、研究者いわく、これは「すごい能力」らしい。さらに停車駅に近づくとちゃんと起きて、降りていく日本人はさらにすごいと褒めてくれる(笑)
本書では、諸外国と日本の睡眠時間や睡眠方法、習慣など、様々な角度から比較をしている。前々から思うのだが、電車での居眠りはなんであんなに気持ちいいんだろうか。

【読書メモ】藝人春秋

藝人春秋
藝人春秋
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水道橋博士
文藝春秋
売り上げランキング: 399

浅草キッドの水道橋博士が過去に接してきた著名人との交流をつづる。本書で語られる著名人との交流は以下の面々。
そのまんま東
甲本ヒロト
石倉三郎
草野仁
古舘伊知郎
三又又三
堀江貴文
湯浅卓
苫米地英人
テリー伊藤
ポール牧
爆笑問題
松本人志
稲川淳二
そして、最後に児玉清。

テレビから受ける印象とはちがう人間の深みを感じる。湯浅氏のぶっ飛んとんだエピソードが面白かった。読んでいて気持ちいいくらいスケールが大きい。 石倉三郎氏の「『辛抱』っていうのは辛さを抱きしめるってことだからな」って言葉が個人的に印象深い。

2013年11月8日金曜日

【読書メモ】中国と 茶碗と 日本と

中国と 茶碗と 日本と
中国と 茶碗と 日本と
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彭 丹
小学館
売り上げランキング: 37,645

著者の彭丹(ほう・たん)氏は四川省出身の中国人で、大学講師を務めている。本書では著者が陶磁器の中に見た「日本の中で見た中国」から話を展開する。日本の国宝陶磁器14点のうち、9点が実は中国製である。本書を読んで初めて知った。国宝と言いつつ、ほとんどそれは中国で製作されたものなのである。ここから、著者による「なぜ」の問いを解いていく。

日本の茶の湯には中国製の磁器茶碗が取り入れられている。そして、それはなぜなのだろうか。ここから青磁・天国・祥瑞・龍文といった磁器の特徴と中国と日本の茶の湯の文化の比較、そして、陶器が作られた当時の中国の状況と日本での取り扱われる状況が具体的に説明される。
そこでは、中国と日本とで異なった見方が磁器の扱いを変えたことがわかってくる。

これらのことからわかることは、日本の文化の中に中国のものがしっかり入り込んでいることである。著者はこれを日本による中国文化の”借用と創造”と呼んでいる。


日本の文化は少なくとも陶磁器においては、中国の”借用”らしい。

【読書メモ】アルゴ

アルゴ [DVD]
アルゴ [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2013-09-04)
売り上げランキング: 845

1979年にイランのテヘランで発生した過激派学生によるアメリカ大使館の占拠。大使館から脱出した外交官の脱出作戦を描く。
アメリカ映画の特殊メークで色々変装しています。

【読書メモ】『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)』

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)
岡田 斗司夫 FREEex
幻冬舎
売り上げランキング: 1,453

本書は朝日新聞の連載「なやみのつるぼ」の記事のうち、著者の記事をもとに、著者がどのように回答までに至ったかのプロセスをまとめたもの。
自分は本書を読むまで著者のことを知らなかったが、著者の岡田斗司夫氏はオタキング代表で、アニメ会社ガイナックスの設立に携わった人らしい。本書に書いてある肩書は社会評論家である。

内容は、様々な相談内容から相談者の背景まで掘り下げていくとともに、どのように著者が考え、どのように回答を導き出していくかが書かれている。

後半には、著者が回答するさいに考え方のツールを紹介している。人生相談する人ってこのくらい考えないとダメなんだな(笑)。本書を読んで「ここまで考えているのか」と感心。

2013年9月14日土曜日

【読書メモ】パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱

パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱
スペンサー・ウェルズ
化学同人
売り上げランキング: 285,311
狩猟生活から農耕に移行した結果、われわれは精神疾患を引き起こしやすくなったらしい。生活が安定すると人口が増え集団を構成する規模が大きくなる。社会の営みの中で個性・創造性が奪われていく。それらは、われわれにとってストレスとなるからだ。 本書ではその内容をひとつひとつ紐解いていく。

【読書メモ】兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦

兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦
杉山 隆男
新潮社
売り上げランキング: 20,598

本書は震災発生時に、その場に居合わせた自衛隊員からみた震災の光景と自衛隊の活動の記録である。震災が起きた時、福島に駐屯していた自衛隊員は何を感じ、考え、どのように活動をしたのか。活動を通じた自衛隊員の葛藤が生々しく書かれている。読んでいてどんどん引きこまれてしまった。

震災地ではインフラは崩壊。そんな状況下で非常時を想定した訓練を積み重ねた自衛隊は心強い存在と感じる。万が一、自分が自分が同様の状況に置かれた時、素人の自分では自分の面倒を見つつまともな支援はできないと思うぐらいすさまじい状況である。
災害救助という場においての自衛隊の活動は、自衛隊に否定的な見方をも変えてしまうんじゃないかとさえ思ってしまった。

自衛隊が震災時にどのように活動したのか、平和憲法の元、あいまいな存在として教えられた自衛隊の活動を知るうえで、本書は日本人なら一度目を通しておいてもいいのではないだろうか。

2013年7月5日金曜日

【読書メモ】ロジカルな田んぼ (日経プレミアシリーズ)

ロジカルな田んぼ (日経プレミアシリーズ)
松下 明弘
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 13,323
著者は18年前に日本ではじめて酒米「山田錦」を有機・無農薬で育てることに成功した専業農家。自身を「稲オタク」と呼んでいる。本書は著者が農薬を使わないお米を作るためにお米作りの工程一つづつを「ロジカル」に解き明かしていく。

本書を読むまでなんで水田に水をはるのか?、なぜ耕すのか?、なぜ田植えをするのか?といったことを知らなかった。本書にその答えが書いてある。読んでみて新しい発見があってとても面白い本だ。身近なことだけど知らなかったことが書いてあるので一気に読めてしまう。 稲を育ててから植えるのは雑草の成長に負けないためだったのか。

著者は農業の一つ一つには意味があり、その意味を知ることで工夫の余地が生まれこれまでにない新しい農業か可能になるという。これってコメ作りにかかわらず全てのことに通じるような気がするな。

2013年4月6日土曜日

【読書メモ】知の逆転 (NHK出版新書 395)

知の逆転 (NHK出版新書 395)
ジャレド・ダイアモンド ノーム・チョムスキー オリバー・サックス マービン・ミンスキー トム・レイトン ジェームズ・ワトソン
NHK出版
売り上げランキング: 67

本書は6名の著名な学者へのインタビューをまとめたもの。2010年から2011年6月の『中央公論』誌、「世界展望シリーズ」に掲載されたインタビュー記事がその元である。

インタビューの内容は各々の著作や研究に関するものから、世界情勢、宗教等々におよび、最後におすすめの本がある。 どんな人なのかは各々WIKIペディアでも見てくれれば詳しく説明があるのでここでは簡単なメモにとどめるが、名前だけ聞いてちょっと身構えてしまう。でも、実際に読んでみると、各々の方々がどのように今をみているのかが客観的かつ冷静で、わかりやすい語り口で語られていて、読みやすい。

個人的にはトム・レイトン教授のインタビューはとても興味を引きつけられるものだった。分野がITで日々自分が必ず覗く主要なサイトのほとんどが氏の設立したアカマイ社設立秘話は読んでいてとても身近に感じられる内容であり、「こんなところにもこの技術が活用されているのか」と興奮する内容であった。
また、ジェームズ・ワトソンの教育について語るところはとても感心させられる内容であった。なにを学ぶべきなのかという質問に対して「あなたの文化は一体何か?」を学ぶ事が大事と。これは、自国の歴史を理解して、さらに世界史から自国の歴史を見てみるということの大切さを教えてくれたような気がする。今後ますます歴史に関する本を読んでいこうと強く思った次第である。また、単に覚える=暗記ではなく、”それはなにを入っているのか”を考えることが大事だとも。有難いお言葉頂きました。

本書を最後まで読んでいくと、全編を通じてインタビューアーである著者の吉成真由美氏の深い質問に感心させられてしまった。当然、入念な準備を行った上で望んだであろうインタビューだということは想像するが、各々の「偉人」達へ自説を相手に投げかけつつ行う鋭い質問には「お~」と唸ってしまった。そして、各々著作が大変気になるのだが、他にも積読本がある自分としては、それらの著作を物色するのはあえてやめておこうと思う。

・ジャレド・ダイアモンド  主な著書:『銃・病原菌・鉄 上』『銃・病原菌・鉄 下
・ノーム・チョムスキー  「普遍文法」を提唱  主な著書:『生成文法の企て』
・オリバー・サックス  主な著書:『レナードの朝』
・マービン・ミンスキー  「人工知能の父」と言われる人。  主な著書:『心の社会』
・トム・レイトン  ネットワークへのアルゴリズム応用の世界的権威
・ジェームズ・ワトソン  ノーベル生理学・医学賞受賞。DNA二重らせん構造を発見。
 主な著書:『二重らせん』



生成文法の企て (岩波現代文庫)
ノーム・チョムスキー
岩波書店
売り上げランキング: 23,645
レナードの朝 (ハヤカワ文庫NF)
オリヴァー サックス
早川書房
売り上げランキング: 92,464
心の社会
心の社会
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Marvin Minsky マーヴィン・ミンスキー
産業図書
売り上げランキング: 75,102
二重らせん (ブルーバックス)
ジェームス.D・ワトソン
講談社
売り上げランキング: 29,428

2013年3月20日水曜日

【読書メモ】『ウェブで政治を動かす!』

ウェブで政治を動かす!
ウェブで政治を動かす!
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朝日新聞出版 (2012-11-13)
売り上げランキング: 46

著者はジャーナリスト。本書はKindle買った最初の新書で、ITに関する著書の多い著者らしく、本書も書店発売とほぼ同時にKindleで発売された。早速買ってみた。 本書は「レコード輸入権制度」をきっかけに政策にかかわらなければ政治は何も変えられないという著者がウェブ(インターネット)によって今後の政治がどう変わるのかを考察した本だ。

まず、本を読んでいて若干とまどった。ウェブやらインターネットやらソーシャルメディアといった言葉が出てくるのだが、本書の中でこれはウェブについて語ったものなのか、インターネットについてのことなのか、ソーシャルメディアについてのことなのかが上手く区別できない。(レベルがちがうから、全てウェブになっちゃうけれども)

本書ではソーシャルメディアをきっかけに起きた反原発デモやアラブの春など、いくつかの事例を取り上げたり、ソーシャルメディアを積極的に活用している国会議員へのインタビューを通じ、ソーシャルメディア(=ウェブとしていいのかもしれない)がどのように役になって、何が不便だったといったことが書かれている。

津田氏の見解も書かれているが、全体的に引用が多く、ウェブの使用に対して「こんな意見がある・こんなことがあった」といった内容をまとめた感じだ。

本書で紹介・絶賛されていた本『「オバマ」のつくり方』は今度読んでみたい。

ジュリアン・アサンジ氏によるソーシャルメディアの3つの役割(ざっくりメモ)
1.プロの記事に対して多様な視点を与える
2.埋もれているものを発掘、拡散する
3.プロの調査のためのネタ元

【読書メモ】ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ
マーク チャンギージー
インターシフト
売り上げランキング: 135,523

人の持つ「超人的」な視覚の能力をつきとめる本だ。著者は認知・知覚の基礎研究を進めている。研究は多くのメディアで紹介されているから、人を惹きつけるのが上手なのかなと思ったら、やっぱり本書もそうだった。読んでいて惹きつけられてしまった。
本書では、視覚を色覚・両眼・動体視力・物体認識の4つの能力に分けて紹介しており、 具体的かつ分かりやすい内容だ。

「色覚」を「テレパシー」という言葉を用いている。色覚、つまり色を識別する能力はなぜ発達したのだろうか、という疑問からスターする。
著者は、肌の色を感じ取るためと仮説を立てる。そこから、肌の色を感じ取れることの優位性、目が肌の色を感じ取るためにいかに適した作りとなっているのかを展開する。肌の色を認識する錐状体の波長感度は肌の色を形作るヘモグロビンによる肌の色を最も識別しやすいという事実を提示されたところを読み進めていくと、思わず「なるほど」と唸ってしまう。

「両眼」は「透視能力」である。本書では目の位置による見え方をいろいろな視点から検証する。本書に没頭するあまり、僕は本書にある図をにらめっこして電車の中では変な人に思われたかもしれない。なぜ「透視能力」なのかも納得できる内容だった。

「動体視力」は「未来予見」である。予見という言葉にいろいろ勘ぐってしまったが、脳に勘違いをさせることから始まり、錯覚に触れていく。読んでいてふと、僕らが普段から接している「錯覚」があることに気づく。漫画である。躍動感溢れる描画などまさにそれであり、そのことに気づくと小さい頃から漫画に慣れ親しんだ僕には「未来予見」説に納得してしまう。

「動体認識」は「霊視」とある。見えないものが見えるあれですか?はて?なにが「霊視」なのかな?と思いつつ読み進めてみる。我々が使用している文字は日本人なら漢字、平仮名といった表意文字であり、同じ表記体系を用いる人々(例えば漢字を使っている中国人とか)と直感的にコミュニケーションがとれる(場合がある)。ただ、表意文字(本書では「発話表記」としている)は訛りが表現できないといった欠点がある。つまり完全な「霊視」はできない、と。そこで「表音文字」である。アルファベットなどの「表音文字」はこの弱点も補える。さらに、アルファベットの一文字一文字のデザインは、実は自然界に存在するデザインを巧みに表した文字であることを文字デザインの結合部と自然界の映像等から出現頻度を導き出して比較する等によりこれらの本書で言う「発話文字」はものの形も発音も全て認識できるとしている。本を読むということも文字(日本語だと表意文字だけれども)を通じて過去の歴史や著者の思いを感じることができる「霊視」ということなのだろうかと考えてしまった。

本書はその内容の多さに対して手軽に入っていける、読みさすくてかつ高度で、読んだあとの「お得」感がとても高い本であった。

【読書メモ】ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)

ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)
一般社団法人 ダム工学会 近畿・中部ワーキンググループ
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 16,590

本書は一般社団法人 ダム工学会近畿・中部WKグループによるダムについて解説した本。このグループは土木工学等の専門会から構成される。本書ではダムの仕組みから有効性を丁寧に解説している。
ダムの歴史では、世界最古のダムから日本最古のダムまで色々紹介。巨大なダムとしてアメリカのフーバーダムが紹介される。このダムの有効貯水量は352億トン。数字だけ聞いてもピンと来ないが、琵琶湖の水量が280億トンと聞くとその凄さがわかってくる。圧倒されてしまう。
ダム建設ではRCD工法やCSG工法といったコンクリートに関するさまざまな技術が用いられており、僕はこの部分が興味を惹かれた箇所だ。コンクリートは硬化時に発熱する。(←このことを僕は初めて知った。)そして、冷める際に徐々に縮む。ダムのように使うコンクリートの量が多いとその問題はとても深刻になる。そこで、少しでも発熱を少なくし、かつコンクリートの使用量を減らすために上述の工法が開発されている。
ダムすごいな。

2013年3月10日日曜日

【読書メモ】葉隠入門 (新潮文庫)

葉隠入門 (新潮文庫)
葉隠入門 (新潮文庫)
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三島 由紀夫
新潮社
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「葉隠」は佐賀藩鍋島家二代光茂に仕えた山本常朝の著。本書は三島由紀夫による入門書である。 三島は、本書にとても感銘を受けて、それがこの入門書を書く理由にもなっている。

本書は最初に三島による「葉隠」の解説と解釈について短く語られており、後は本書の精髄を48の項目に分けて解説する。 入門書とあるけれども一回読んだだけではなかなか理解できていない自分がわかる。
解説部分で、本書の象徴する表現として「逆説的」という言葉が出てくる。最初はピンとこなかったが、どうやら、「葉隠」はその文言通りに受け取ってはいけないのである。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」という有名な文は、戦前は文字通り解釈されたようだが、本質は違うというのである。
本書はそもそも生死を前提として生きる武士に向けて書かれたもの。毎日「死」を心に当てて生きようという。つまり何事にも「死」を意識するぐらい一生懸命に打ち込むということ。それは、「生」に心を当てることとなる、と。 何事にも一生懸命打ち込め、という一方で、人間の一生は短いから好きな事をして暮らすべきだと。
むずかしいが、文字通り解釈せず、その意味することを考えさせる本である。

2013年2月24日日曜日

【読書メモ】映画は父を殺すためにある: 通過儀礼という見方 (ちくま文庫)

映画は父を殺すためにある: 通過儀礼という見方 (ちくま文庫)
島田 裕巳
筑摩書房
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本書は、たまたま聞いたラジオ番組のポッドキャストで町山氏が推薦図書として取り上げていたもの。著者の島田氏は宗教学者であり作家で、本書では、宗教学で学んだ「通過儀礼」を通じた映画の見方について述べている。

「通過儀礼」には分離・移行・結合の三つの段階があり、本書では、「ローマの休日」や「スタンド・バイ・ミー」などの映画に三つの段階を当てはめながら通過儀礼について解説している。この解説は各映画の場面場面ごとに解説されていてとても具体的だ。扱う映画は日本映画にも及んでおり、本書で知った「通過儀礼」の視点は、ちょっと映画を借りて自分でもう一度見返してみようかなと思わせる。

(推薦図書一覧)
タマフル推薦図書まとめ