2014年8月17日日曜日

【読書メモ】『戦争責任者の問題』

戦争責任者の問題
戦争責任者の問題
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(2012-10-04)

作者の伊丹万作は日本の脚本家、映画監督、俳優、エッセイスト、挿絵画家。(Wikiペディアより)映画監督 伊丹十三は氏の息子である。 初出は『映画春秋 創刊号』1946(昭和21)年8月。

本書は、AmazonのKindleで無料で入手可能な青空文庫である。Kindleをお持ちの方には是非ご一読をおすすめする。

過去の戦争は戦争を指揮した軍が悪い。無能な指導者が悪い。そして、無能な軍上層部によって国民はだまされ、戦争に巻き込まれた。だから、国民は被害者である。と思っている人にとってはそれが思い込みに過ぎないこと気づかせてくれる本である。

国策とメディア戦略によって国民は徐々に洗脳されて国民は「軍にだまされて」いく。しかし、本書は「だまされるということ自体が一つの悪である」という。著者はそれを「家畜的な盲従に事故の一切をゆだねるようになってしまった」という厳しい表現で指摘する。そして、次の文がとどめのひと突き。「過去の日本が、外国の力なしに封建制度も鎖国制度も独力で打破することができなかった事実」である。

ここまで読むと日本人であることにやや悲観的にさえなってしまう。「だまされていた」という限り、その人は何度もだまされるのである。この言葉や強烈である。

ではどうすればだまされずに済むのか。なぜだまされたのかという分析を徹底的に行い、次回に活かすのである。本書でも「二度とだまされまいとする真剣な事故反省と努力」という言い方をしている。徹底的な自己改造を持って自らを変えていかなかければならないのである。

ということで自分ももっと本を読んでいこうと心に誓った読後である。

【読書メモ】『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』

紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている
佐々 涼子
早川書房
売り上げランキング: 309

本書は、震災で破壊された日本製紙石巻工場の生産ラインが復旧するまでを描く。本書を読んで、以前読んだ『兵士は起つ:自衛隊史上最大の作成』を思い出した。

本書を読み終わった後に、つい、本書の紙質を手で触ってその「触感」を確認してしまった。紙は、出版される本の読者や用途に応じて繊細な「調成」を経て作成される。製紙会社には紙の作り方を記した「レシピ」と呼ばれるものが存在するらしい。それほど紙の作成にはノウハウが必要なのだ。

日本製紙は日本の出版用紙の約四割を担っている。その日本製紙の石巻工場は主力工場である。同工場にある8号抄紙機と呼ばれるものからは、以下の作品が生み出される。

・村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
・百田尚樹『永遠の0ゼロ』
・沖方丁 『天地明察』
・東野圭吾『カッコウの卵は誰のもの
単行本
・『ONE PIECE』
・『NARUTO―ナルト―』

どの作品も一度は聞いたことのある作品であると思う。

本書では、復旧にあたる従業員の姿が描かれる。工場を復旧させるにあたり、どの機械から復旧させるのか、期限の設定はどのようにして決定されたのかなど、情熱だけでなく、企業としてシビヤな、冷静な見方をしつつ、設定されたことがわかる。

一方で、遺体の発見や収容の光景など、復旧時に遭遇する震災の生々しい描写も描かれる。ちなみに、日本製紙石巻工場では、工場敷地内で41名の遺体が発見されている。

電子書籍が便利だなと思っていたが、ふと、紙質を味わうっていう楽しみ方もあるのかと考えさせられた一冊である。