2012年1月21日土曜日

【読書メモ】こころの免疫学 (新潮選書)

こころの免疫学 (新潮選書)
藤田 紘一郎
新潮社
売り上げランキング: 58877

本書の題名を見ると、ふと、精神論的な巷にある「やれば出来る」的な本を想像したが、そうではない。この本では、うつなどの精神疾患は、心的治療だけでなく、免疫系、つまり食事や腸内細菌をも含めた見直しが必要であるという。本書の中では、腸内細菌と精神疾患との関係を明らかにすると共に、現在手軽に手に入る食事について科学的に体への影響、作用を明らかにしている。そして、どのような食事を取れば体にとって、良いことなのかを読み取ることができる。

先進国では、精神病床数は日本がダントツに多い状況である。一方で劇的に減少に成功した国がイタリアだ。そして、2000年までに国立の精神病院を廃止した。

こころの健康ではやはり大事なのが食事らしい。血糖の状態が不安定になると、それらをコントロールしようとしてアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。その結果、精神的に不安定になりやすい。だから、糖質を適切にコントロールすれば良いわけだ。 そこで、本書では「糖質制限食」というのが特におすすめだそうで、この制限食ではカロリーはそれほど気にせずに糖質を抜いた食事にすればいいらしい。今度試そうと思う。

脳にブドウ糖は必要なものだが、急激に上げてはいけない。徐々にゆっくり上げるのがいいらしい。つまり、食事をして急激に血糖値が上がってしまうものよりは徐々に上がるものを選んで食べたほうが良いということになる。そこで、血糖値が上がる指標として「GI(グリセリックインデックス)」というものがあり、その値がある程度低いものを選べば良い。本書にも、主な食事ごとに表になっているので確認するといいかもしれない。この指標はブドウ糖を100としている。

油といえば飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があることはよく耳にする。飽和脂肪酸は常温では固まってしまうが、安定している状態なので保存がきく。不飽和脂肪酸は常温では液体だから、体の血管をつまらせること無く、体にやさしい食べ物とよく言われるが、そのぶん保存がきかない。

じゃぁ、保存できるようにすれば、売れるんじゃないか、そう考えられた結果できたのがトランス脂肪酸だ。すでにマーガリンでもおなじみ。だが、トランス脂肪酸は脳にダメージを与えると言われていて、あまり評判がよろしくない。なぜか。

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の中でも多価不飽和脂肪酸に水素添加という方法で化学変化を起こして常温でも固形化できるようにしたもの。つまり安定状態にしたものだ。だから、酸化しにくい。しかし、水素添加によって出来上がったものは自然界に存在しないものであり、その結果分解されにくい。それを体内に入れれば分解にとても時間とエネルギーを必要とするのは明らかだ。その結果、体内のミネラルやビタミンを必要以上に消耗することになる。それだけではない。トランス脂肪酸は体内に入ると体内の他の脂肪酸の働きを阻害し、活性酸素を発生させる。脂質でできている細胞膜は、トランス脂肪酸が取り込まれると細胞膜としての働きが不安定になってしまうのだ。また、体内のコレステロールバランスも崩してしまう。あまりいいもんじゃないらしい。 ちなみに、トランス脂肪酸は名前を変えて色々なところに登場する。コーヒーに入れるミルク、最近はコーヒーフレッシュと呼ぶらしいが、これもトランス脂肪酸。ショートニングというポテトを揚げる油やレトルトカレー、アイスクリーム、ケーキにも使われている。。。。たくさん使われている。マーガリンは食べられる形にしたプラスチックと言う言葉があるらしい。末恐ろしい。。。

他にも色々書かれていて、個人的にショックを受けた本だった。

【読書メモ】ヤクザと原発 福島第一潜入記

ヤクザと原発 福島第一潜入記
鈴木 智彦
文藝春秋
売り上げランキング: 180

この本の著者、鈴木智彦氏はヤクザに関する著者を色々書いているフリーライターだ。僕は以前のHONZの書評で知った「潜入ルポ ヤクザの修羅場」を読んで、内容の凄さに引きこまれて、あっという間に読みあげてしまったことを覚えている。本書もまさにそうだった。

本書では、著者自らが原発作業員として、福島第一原発に入り、復旧作業に当たる。それを行うこと自体がすごいことである。そこでは、メディア報道ではわからないヤクザとのつながり、作業現場でのあからさまなヒエラルキーの存在等々、他にも過酷な作業員の状況が伝わってくる。

原発では、線量と汚染度を組み合わせて危険度を判断している。しかし、メディア等では線量がかりが強調されがちで、実は汚染度がより深刻なのだという。放射性物質が蓄積している道路をクルマが走ると、放射性物質を舞い上げる。おすすると、それらを吸い込む危険がより増す。だから、タイベックを着たまま移動に使ったクルマは放射性物質が舞い上がっていて、もう使えない。

原発作業の裏側ではこのような状況で様々な人達が関わっている、そういうことを知る意味でも、本書はぜひ一読を薦める。

追記
著者が出演している動画が公開されています。
ニュースの深層 2012.01.24 1/3
ニュースの深層 2012.01.24 2/3
ニュースの深層 2012.01.24 3/3


【読書メモ】実況・料理生物学 (阪大リーブル030)

実況・料理生物学 (阪大リーブル030)
小倉明彦
大阪大学出版会
売り上げランキング: 59185
常々参考にしているおすすめ本サイトのHONZ。その中でも僕の場合は村上氏の書評を読んで購入する確率が高い事がわかった。この本も村上氏の書評を読んで購入した。 著者は大阪大学教授で神経生物学を専門にする小倉明彦氏。本書では「料理生物学」という講義の中で料理を作りながら素材や調理方法などについて、その歴史から科学的なうんちくまでを講義を聞いているように書かれている。
読んでみて僕もなるほど~となることが結構あって面白かった。
コロンブスが新大陸から持って帰った赤唐辛子。本当は胡椒を探すよう命じられていたが見つけられず、トウガラシを赤い胡椒と伝えたのが元らしい。だから、トウガラシは英語でred pepperと書く。

一般のカレーは香りが飛んでいるけれど、クミンをふりかけると本来のカレーの香りを再現することができる。今度試してみよう。
ブドウ糖を分解する際に必要な酵素にピルビン酸デカルボキシラーゼというものがある。ビタミンB1はその酵素が働くのに必要となる。ビタミンB1が不足すると、ピルビン酸までしか分解されなくなるのでエネルギーが十分に取り出せなくなる。

滋養強壮剤のアリナミンもビタミンB1の話からその成り立ちがわかる。ビタミンB1は別名チアミン。ニンニクに含まれるアリインが代謝されてできるアリシンとチアミンが結合するとアリチアミンとなり、これがニンニクパワーとなる。アリシンはニンニク臭の元だが効き目のもとでもあるから、無臭ニンニクは効き目が落ちてしまっているようである。最初からビタミンB1とアリシンを結合して吸収を良くしたのが、アリナミン。「へ~」だ。

ハンバーグで必要なこねる工程。この時に水を入れるのは浸透圧を利用している。つまり、水と一緒にこねると浸透圧の関係でお肉の細胞に水が入り込み、その状態でこねられると細胞が破裂する。その結果、粘りが出てきて、お肉の旨みが出るというわけだ。
クッキーとビスケットの違いは、その呼び名をフランス語にすると明らかになる。クッキーはフランス語で焼くという意味の"cuit"。ビスケットは"biscuit"。"bis"は「二度」という意味だから、ビスケットは二度焼いたという意味になる。だから、ビスケットのほうが水分も少なく、保存も効くというわけだ。

牛乳は細かい油を水に混ぜたものという話。油のつぶが光の波長より大きいので反射する光は長波長光、短波長光にかかわらず等しく反射されるので白い。

まだまだいろいろな「へ~」があった。

2012年1月3日火曜日

【読書メモ】日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)

日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)
原 研哉
岩波書店
売り上げランキング: 847
HONZの書評を読んで購入。デザインに関する本なんて買ったことなかったので恐る恐る購入。著者の方も恥ずかしながら初めて聞いた名前。
普段何気なく接しているデザインにもこういう意味、見方があるんだなとしみじみ。慈照寺東求堂、行きたくなった。