2012年3月31日土曜日

【読書メモ】僕は君たちに武器を配りたい

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史
講談社
売り上げランキング: 560

本書はエンジェル投資家であり、京都大学客員准教授である瀧本哲史氏の著作。読み終わってよくよく調べたら最近メディアにもよく出ている人みたいだ。

世間の雇用状況は厳しさを増すばかり。一方でそのような不安を煽っていろいろなビジネスが立ち上がっている。厳しい厳しいと言われる世間はどういう状況なのか、腰を据えて確認したいなと思っていた矢先にHONZの書評で取り上げられていたので読んでみた。

前半は、これから就職を控える人、もしくは入社したばかり〜2・3年目ぐらいの人向けに日本が迎えている厳しい状況について語っている。「就職ランキングにだまされるな」では、実際にある過去のランキングが現在の状況と照らしていかに参考にならないかということを示していて面白いし、ある意味残酷だ。結局40年先の将来なんてわからない。

「儲かる漁師と儲からない漁師」の項では、儲かる漁師について6つに分類している。そのうち、4つのいずれかを意識して日々仕事をすることを薦めている。このあたり、過去に読んだ本にも載っている内容なので真新しいところはないけどシンプルでわかりやすい。まぁ、それぞれの分類に自分がなれればいいけれどなるのが大変なんですな。

自分も薄々感じていたが、この本でズバリ指摘されてしまった。「住宅ローンはリスク管理できない人のもの」である。景気のいい時はいいかもしれないが、この不況まっただ中のご時世である。35年もローンは組めないよな。
(サラリーマンであることもハイリスク、ローリターンらしい。。。)

弁護士もこのご時世、大変なようだ。弁護士であるだけでは儲からない。では、顧客を集めるにはどうするのか。その理由については、巷でよく見かける借金返済の相談に乗ります的な広告にからめて書かれている。

本の終盤に書かれている「奴隷の勉強、自由人の勉強」では、著者は「リベラル・アーツ」を学ぶことの重要さを訴えている。「リベラル・アーツ」とは、歴史・哲学・芸術・文学・自然科学全般について勉強することで、著者はこれらについて勉強した知識がコンサルタント時代にとても助けられたと語っている。個人的趣味として、歴史や自然科学に関する本を読んでいる身としては読んで身につけた知識にいつか助けられればいいなと思いつつこれからもいろいろ本を読んでいこうと思う。

2012年3月20日火曜日

【読書メモ】火の賜物―ヒトは料理で進化した

火の賜物―ヒトは料理で進化した
リチャード・ランガム
エヌティティ出版
売り上げランキング: 247091

HONZ 村上さん紹介の本。また村上さんである。

本書は、人類が人類たらしめる進化をした理由のひとつとして、料理による食物の加工にあるとしている。料理をすることによって食物そのものの栄養価が高まり、結果、消化に費やす労力、時間を大幅に減らすことができる。結果、狩猟や食物の栽培など別のことにより作業時間を費やすことができるというわけだ。

この本は、食物は単にカロリー表示を気をつけるだけでなく、消化のしやすさについても注意を払わないとカロリーの高低は判断できないんだなと教えてくれる。印象的な実験が例が載っている。複数のラットに、それぞれ固いペレット、やわらかいペレットを与え続ける。栄養価は、全く同じだ。結果は、柔らかいペレットを与え続けたラットのほうが固いペレットを与え続けたラットよりも体重が重くなり、体脂肪がより多くなったのだ。この結果は、消化の労力が栄養吸収の点で無視できないことを示している。

消化の労力はそのまま体の器官の違いにも現れる。ヒトとそれ以外の霊長類を比較すると、体重比の腸の割合が異なる。ヒトは一番その割合が小さい。では省けた消化の労力はどこにいったのか。脳である。ヒトは省いた消化の労力分の栄養を脳へまわすことによってより脳を発達させることができたそうだ。

後半には現在のカロリー表示についても触れている。現在の表記は、食品そのもののカロリーを表示していて、消化のしやすさという点が考慮されていない。最近はそのあたりの点を考慮するよういろいろ見直しがされているようだが、正確なカロリー表示は難しいらしい。消化の労力と消化率の違いによる効果を証明するための情報がなかなか手に入らいないらしい。

いずれにしても、自分の食生活についても考えさせられる一冊だった。

2012年3月10日土曜日

【読書メモ】フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
サイモン シン
新潮社
売り上げランキング: 443

面白い数学の本をずっと探していた。たまに読んだりするがやはり文系の自分には基礎が無いので敷居が高い。そんなときにこの本を知った。HONZの村上氏も「数学だとこの一冊は外せない」と。 早速、購入して読んでみて、Amazonでも評価が高い理由がわかった。

本書は、17世紀の数学者、ピエール・ド・フェルマーが残した「フェルマーの最終定理」が1994年にアンドリュー・ワイルズによって証明されるまでについてを様々に登場する歴史上の偉人たちや、証明法、定理等、過去から順を追って述べられている。

この本が面白いのは、数学に馴染みのない人でも聞いたことのある有名人が次々に出てくることだ。数学に疎い僕でも本屋さんで名前をみかけたことのある名前が出てくる。ワイルズによる証明は、こうした過去の偉人達によって生み出された数々の証明法やテクニックを駆使している。だから、この本を読むと、少しばかり数学の有名人の自体のつながりが歴史を経て眺めることができる。ちなみに、この本には日本の数学者も登場する。ちょっと嬉しくなってしまった。

この本を読んで感じた面白さは、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』に通じるものがあった。楽しく読み進められて、あっという間に読み終えてしまった。