2012年4月1日日曜日

【読書メモ】『IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)』

IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)
東 浩紀 飯田 豊 三上 洋 宮台 真司 村上 圭子 池田 清彦 円堂 都司昭 荻上 チキ 加藤 典洋 萱野 稔人 西條 剛央 酒井 信 神保 哲生 飯田 哲也 武田 徹 津田 大介 広瀬 弘忠
インプレスジャパン
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本書はメディアでも比較的に名前を聞く(僕自身初めて聞く人もいるけれど)学者、ジャーナリスト、編集者ら17人によって、昨年の震災の時にどのように行動し、震災をどのように振り返り、そして、今後をどのように過ごすのか、といった点についてまとめられた本である。
前半は上記17人とは別に、Googleや、Yahoo!JAPANを始めとするIT企業の震災への対応を、中盤は各論客による震災時におけるさまざまなITの対応について、後半は震災の経験を踏まえて今後のITの可能性を示している。本書を読んで「そうそう、こういうこともあった」とか、「こんな動きもあったのか」と初めて知ったりすることもあり、震災を振り返るには丁度良い一冊かもしれない。

Googleがホンダとパイオニアから提供を受けて作成した自動車・通行実績情報マップは自動車関係のメディアでも取り上げられていて、こんなことができるのかと情報を提供したホンダとパイオニアの技術と企業姿勢に感心してしまった。(後に、トヨタ、日産も情報を提供し、広範囲な通行実績情報の表示が可能になった。)

MITメディアラボ伊藤氏によるSafecastは放射能の測定・公開をボランティアで行った。Safecastによる放射能測定ボランティアは1979年3月28日にアメリカで発生した「スリーマイル島原子力発電所事故」の周辺の放射能測定を行うエキスパートも参加するなどかなり本格的なボランティアだ。放射能測定は、測定値を適切に読み解く知識も必要で、Savecastでもその点を踏まえた活動を行なっている。放射能に関する情報はツイッター上でも議論が熱くなっていて何が本当なのやら、どれを信じで良いのやら正直良くわからなかった。もう少し勉強が必要かもしれない。

荻上チキ氏の「その時、検証屋はどう動いたか」はなかなか興味深かった。実際自分も、Twitterでデマの発生から情報源が特定されて、デマの発信者が糾弾されるところを目にしたからだ。良かれと思ってやったこと(RTしたこと)が結果的にデマに加担していた。。。。なんてことが、幸い自分はなかったが、知人からのRTがデマだったことが度々あったので、情報を伝えることは、特にあのような非常事態時における情報伝達は難しいことだなと痛感。チキ氏も検証屋はどの程度「役に立ったのか?」については、かなり控えめだ。このあたりは評価をするのが難しい。個人的にはこういう情報の整理屋さんがいてくれてよかったと思う。

福島原発における作業員の活躍を美談のように伝えているメディアについては若干の違和感を感じたわけだが、その辺は東電と政府への責任追及をする一方で現場の作業員への関心の低いということで酒井信氏が触れている。欧米メディアが復旧にあたる作業員をフクシマ50として賞賛している様を日本のメディアがニュースとして取り上げる一方で、現場の作業員に関する情報についてはなかなか取り上げられない。この点は、以前読んだ鈴木智彦氏『ヤクザと原発』でも触れている。負の部分を隠して正の部分を伝えるって昔に多様なことがあったような。。。あっ、大本営か。日本は昔からちっとも変わっていないのかなと読んでいて若干気持ちが沈んでいく。

津田大介氏の震災時におけるツイッターでのコメントは知っている人も多いだろう。ジャーナリストとしてツイッターを駆使してどのように情報を扱っていったのかは、一つの参考になるかもしれない。主観的なコメントを付けずにそのまま情報を流す、政府が発表する情報とそれに反対する情報の双方を流す、といったことである。とかくツイッターばかりの話題が先行しがちだが、震災時のメディアの対応についてもしっかり触れている。

宮台真司氏による「日本は<空気に縛られる社会>」であるという指摘は、とても鋭いと思った。酒井氏のところでも触れたメディアへの違和感についても自分で腑に落ちた。震災でもコンビニで並ぶ日本人というのも、あれはあれですごいことだが、<空気に縛られる社会>の産物なんだなといわれるとなるほど。。。。

というように、いろいろ読んでいて思うことしきり。日本人は戦前も戦後も<空気に縛られている>んだなということが一番印象的だった。

【読書メモ】いちばんやさしい地球変動の話

いちばんやさしい地球変動の話
巽好 幸
河出書房新社
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ここ最近読んだ「チェンジングブルー」、「銃・病原菌・鉄」、「なぜシロクマは南極にいないのか」を読んで気になったところがあった。人の移動と海流の移動とくれば、地殻の移動が気になる。そこでHONZ村上さんのちょい読み記事。読んでみた。

本書はマグマ学者の巽好幸氏。 大陸移動説や地殻が移動すること、海嶺と海溝など、多少は知っていることもあったが、本書ではよりわかりやすく、プレートが海嶺から発生して海溝に潜り込むまで、そして、潜り込んだ後にマグマが発生して火山活動に至るまでが見やすいイラストと共にやさしく解説。

地殻といっても、大陸地殻と海洋地殻とでは、組成が異なるようだ。特に二酸化ケイ素の構成にその違いが顕著らしい。その違いは地殻そのものの重さに関係してくる。結果、軽い地殻はより多くの地殻が覆いかぶさって大陸を構成する。実感として湧きにくいけれども、地殻はマントルの上にプカプカ浮かんでいるのである。

海溝の部分では潜り込んだプレートが摩擦でマグマが発生すると本で読んだことがあるけれど、なんでマグマが発生するかがいまいちピンとこなかった。本書ではマグマが発生して、火山活動に至るまでが解説されている。プレートは大量の水分を含んでいるスポンジのようなもので、これらが海溝に潜り込むと水分が放出され、それらの水分がマントルの融点を低めてマグマが発生する。まぁ、スケールが凄すぎて、プレートがスポンジと言われても想像がつかないけれども。。。

個人的に「へぇ〜」と思ったのは温泉。温泉には火山性温泉と非火山性温泉とに分けられる。火山性温泉は雨などの天水にマグマからの高温のガス成分が加わった熱水。代表的な火山性温泉では、大分の別府温泉だそうだ。
一方で、非火山性温泉は地層に閉じ込められたかつての海水や地下水が地温によって暖められたもの。有機物が多いとコーヒーのように「黒湯」となることがある。東京湾周辺はこの手の温泉が多いらしい。代表的な温泉に有馬温泉。有馬温泉はフィリピンプレートに含まれる水分が元らしい。同じ温泉でも元が違うと湯かげんも違うかもしれない(笑)

2012年3月31日土曜日

【読書メモ】僕は君たちに武器を配りたい

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史
講談社
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本書はエンジェル投資家であり、京都大学客員准教授である瀧本哲史氏の著作。読み終わってよくよく調べたら最近メディアにもよく出ている人みたいだ。

世間の雇用状況は厳しさを増すばかり。一方でそのような不安を煽っていろいろなビジネスが立ち上がっている。厳しい厳しいと言われる世間はどういう状況なのか、腰を据えて確認したいなと思っていた矢先にHONZの書評で取り上げられていたので読んでみた。

前半は、これから就職を控える人、もしくは入社したばかり〜2・3年目ぐらいの人向けに日本が迎えている厳しい状況について語っている。「就職ランキングにだまされるな」では、実際にある過去のランキングが現在の状況と照らしていかに参考にならないかということを示していて面白いし、ある意味残酷だ。結局40年先の将来なんてわからない。

「儲かる漁師と儲からない漁師」の項では、儲かる漁師について6つに分類している。そのうち、4つのいずれかを意識して日々仕事をすることを薦めている。このあたり、過去に読んだ本にも載っている内容なので真新しいところはないけどシンプルでわかりやすい。まぁ、それぞれの分類に自分がなれればいいけれどなるのが大変なんですな。

自分も薄々感じていたが、この本でズバリ指摘されてしまった。「住宅ローンはリスク管理できない人のもの」である。景気のいい時はいいかもしれないが、この不況まっただ中のご時世である。35年もローンは組めないよな。
(サラリーマンであることもハイリスク、ローリターンらしい。。。)

弁護士もこのご時世、大変なようだ。弁護士であるだけでは儲からない。では、顧客を集めるにはどうするのか。その理由については、巷でよく見かける借金返済の相談に乗ります的な広告にからめて書かれている。

本の終盤に書かれている「奴隷の勉強、自由人の勉強」では、著者は「リベラル・アーツ」を学ぶことの重要さを訴えている。「リベラル・アーツ」とは、歴史・哲学・芸術・文学・自然科学全般について勉強することで、著者はこれらについて勉強した知識がコンサルタント時代にとても助けられたと語っている。個人的趣味として、歴史や自然科学に関する本を読んでいる身としては読んで身につけた知識にいつか助けられればいいなと思いつつこれからもいろいろ本を読んでいこうと思う。

2012年3月20日火曜日

【読書メモ】火の賜物―ヒトは料理で進化した

火の賜物―ヒトは料理で進化した
リチャード・ランガム
エヌティティ出版
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HONZ 村上さん紹介の本。また村上さんである。

本書は、人類が人類たらしめる進化をした理由のひとつとして、料理による食物の加工にあるとしている。料理をすることによって食物そのものの栄養価が高まり、結果、消化に費やす労力、時間を大幅に減らすことができる。結果、狩猟や食物の栽培など別のことにより作業時間を費やすことができるというわけだ。

この本は、食物は単にカロリー表示を気をつけるだけでなく、消化のしやすさについても注意を払わないとカロリーの高低は判断できないんだなと教えてくれる。印象的な実験が例が載っている。複数のラットに、それぞれ固いペレット、やわらかいペレットを与え続ける。栄養価は、全く同じだ。結果は、柔らかいペレットを与え続けたラットのほうが固いペレットを与え続けたラットよりも体重が重くなり、体脂肪がより多くなったのだ。この結果は、消化の労力が栄養吸収の点で無視できないことを示している。

消化の労力はそのまま体の器官の違いにも現れる。ヒトとそれ以外の霊長類を比較すると、体重比の腸の割合が異なる。ヒトは一番その割合が小さい。では省けた消化の労力はどこにいったのか。脳である。ヒトは省いた消化の労力分の栄養を脳へまわすことによってより脳を発達させることができたそうだ。

後半には現在のカロリー表示についても触れている。現在の表記は、食品そのもののカロリーを表示していて、消化のしやすさという点が考慮されていない。最近はそのあたりの点を考慮するよういろいろ見直しがされているようだが、正確なカロリー表示は難しいらしい。消化の労力と消化率の違いによる効果を証明するための情報がなかなか手に入らいないらしい。

いずれにしても、自分の食生活についても考えさせられる一冊だった。

2012年3月10日土曜日

【読書メモ】フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
サイモン シン
新潮社
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面白い数学の本をずっと探していた。たまに読んだりするがやはり文系の自分には基礎が無いので敷居が高い。そんなときにこの本を知った。HONZの村上氏も「数学だとこの一冊は外せない」と。 早速、購入して読んでみて、Amazonでも評価が高い理由がわかった。

本書は、17世紀の数学者、ピエール・ド・フェルマーが残した「フェルマーの最終定理」が1994年にアンドリュー・ワイルズによって証明されるまでについてを様々に登場する歴史上の偉人たちや、証明法、定理等、過去から順を追って述べられている。

この本が面白いのは、数学に馴染みのない人でも聞いたことのある有名人が次々に出てくることだ。数学に疎い僕でも本屋さんで名前をみかけたことのある名前が出てくる。ワイルズによる証明は、こうした過去の偉人達によって生み出された数々の証明法やテクニックを駆使している。だから、この本を読むと、少しばかり数学の有名人の自体のつながりが歴史を経て眺めることができる。ちなみに、この本には日本の数学者も登場する。ちょっと嬉しくなってしまった。

この本を読んで感じた面白さは、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』に通じるものがあった。楽しく読み進められて、あっという間に読み終えてしまった。

2012年2月27日月曜日

【読書メモ】赤めだか

赤めだか
赤めだか
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立川 談春
扶桑社
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2011年11月21日にこの世を去った落語家、立川談志。本書はその弟子である立川談春による前座時代のエピソードを綴った本。

立川談志はテレビ番組(EXテレビ)で上岡龍太郎が絶賛していた落語家ということで登場した際に初めて知った落語家。(実際に番組で落語を披露した)

普段ノンフィクションもの、科学ものを読書のジャンルとしているが、今回たまたま気になる書評を目にしたので購入してみた。立川談志が世を去ってからいろいろな「談志本」が発売されたが、本書は、2008年に講談社エッセイ賞を受賞しているもので、4年ほど前の本になる。

本書では、談志の弟子として入門した談春の失敗談から、談志からの教えなど、様々なエピソードに事欠かない。談志が談春に説教する場面は、読んでいてなんだか自分が叱られているような気分になってしまったくらい引き込まれる。

本書が特に面白いと感じるのは談春の心情の描写がとてもリアルで、志らくが入門した時の談春の描写部分は、「誰でもそう思うよな〜」と談春に感情移入しながら一気に読み進めてしまう。「叱咤とは。。。」と談志が語るところは、自分にも思い当たるところがあるだけに、とても印象的な内容だ。 談春が二つ目に上がるまでの苦労話、エピソードがその大半の内容となるが、真打昇進時も手に汗握る内容だ。最後はホロッとさせられる。やっぱり、生きるって大変だ。

2012年2月26日日曜日

【読書メモ】なかのとおるの生命科学者の伝記を読む

なかのとおるの生命科学者の伝記を読む
仲野徹
学研メディカル秀潤社
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HONZで成毛氏が紹介
した本で、書評記事を読んでついつい買ってしまった。HONZ.jpには著者を成毛氏が訪れてお話を伺うという模様も掲載されている(というか、これがかなりおもしろい内容である)ので興味のある方は是非。

著者は大阪大学大学院の教授。部類の本好きで伝記好きとのこと。そんな本好きな著者が伝記についてどのように紹介してくれるのか、興味があった。なんせ、僕は恥ずかしながら、伝記の類を読んだことがないから。。。。

本書は『細胞工学』という専門誌の著者の連載記事を加筆しまとめられたもの。『細胞工学』なんて僕が普段読むことはまずないだろうから、僕にとってはジャンルく拡大という意味で収穫。

内容は、偉大な科学者(全部で18名)の伝記ごとに著者が紹介しているスタイル。とても読みやすい。裏に潜むエピソードや著者の仮説も交えて語られていて、楽しみながらどんどん読み進められる。読んでいると著者の伝記に対する書評を読んでいるようで、著者の深い読み込みに感心させられ、読み終わった後には伝記を読んでいなくても十分楽しめる。紹介された何冊かの伝記は買って読んでみたいと思ったくらいだ。(実際にいくつかの伝記がおすすめとして紹介されている。興味はとても湧いてくるが、実際に買うとなるとちょっと躊躇してしまうほどのボリュームなんだろうなきっと。。。)

伝記を読む上での気付かされることも書かれている。特に巻末の「伝記の読み方、読まれ方」は、成功した社長が書いたいわゆる「ビジネス本」を読んだことのある人にとっては気付かされる内容かもしれない。伝記は、特に偉大な科学者の伝記は、とんでもない成功バイアスがかかっているから、それらを考慮して読み進めることが大事なのだ。成功体験を元に自分も成功するためのヒントを。。。。という感じで読まないほうがいい。なるほど〜、と気軽に楽しんで読むといい、著者の結論である。

読んでいて、ところどころに過去に読んだ科学ノンフィクション書籍で学んだ単語が出てくると思わず理解できる自分に嬉しくなってしまう。そんな感じで、あっという間に読み進められた一冊だった。個人的には、名前だけ知っていた北里柴三郎についてなるほど〜だった。

個人的に気になった内容をいくつかメモ。
・ジョン・ハンターの標本コレクションが展示してあるロンドンのハンテリアン博物館
・ジョナサン・ワイナーの著作『フィンチの嘴』
フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ジョナサン ワイナー
早川書房
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・ジャック・モノー『偶然と必然』・・・1970年代に大学に入ったら読むべき本と言われた名著中の名著らしい。
偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ
ジャック・モノー
みすず書房
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