2012年2月12日日曜日

【読書メモ】砂

砂
砂
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マイケル・ウェランド
築地書館
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HONZキュレーター久保氏の書評を読んで購入。氏も触れているとおり、装丁が美しい。確かに、本棚に置くだけでも見栄えがする本だ。
この本は「砂」という物質そのものについての掘り下げから始まって、砂にまつわる自然現象、そして、砂と文明との関わりについて触れている。タイトルからのイメージよりも壮大な内容だった。
そもそも砂の大きさってどのような定義なのだろうか。1922年に砂の大きさの区分が定義され、1から2mmから始まり、0.0625〜0.125mmまで、およそ5段階に区分けされている。これらの大きさの砂はその大きさによって砂の陸上や水中での動きも異なるわけである。
砂から岩ができる過程は興味深い内容だ。砂が厚さ10キロメートル以上積み重なると、想像を絶する重みと熱にさらされる。その状況下では砂の粒子にいろいろな変化が起きる状況が整う。これらの変化はケーキ作りに例えられて説明されている。常温なら安定しているケーキの材料がオーブンに入れると材料が化学変化を起こし、生地がケーキになるというわけだ。すごくわかりやすい。
地球の歴史を遡ると遺跡や化石といった考古学から始まり、最終的には地質学になっていく。だから、最近では、史実や神話を解明するのに地質学的な研究が有効であるらしい。砂の研究も重要なのである。このあたりは僕の好きな本のジャンルにも関わっているなと感じる。歴史学と地質学はつながっていくのである。
「砂の貯蔵庫の収支」部分を読めば、いくら人為的に砂を動かしても、砂の供給と消失にもとづいた収支や移動方向などを考慮しなければ全くの無意味になることがわかるだろう。自然のバランスに逆らうことはできないのである。この本を始め自然環境に関わる本を読めば納得する。
この本を読んだ後、普段、あまり意識しない「砂」に変に意識させられる。

2012年1月21日土曜日

【読書メモ】こころの免疫学 (新潮選書)

こころの免疫学 (新潮選書)
藤田 紘一郎
新潮社
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本書の題名を見ると、ふと、精神論的な巷にある「やれば出来る」的な本を想像したが、そうではない。この本では、うつなどの精神疾患は、心的治療だけでなく、免疫系、つまり食事や腸内細菌をも含めた見直しが必要であるという。本書の中では、腸内細菌と精神疾患との関係を明らかにすると共に、現在手軽に手に入る食事について科学的に体への影響、作用を明らかにしている。そして、どのような食事を取れば体にとって、良いことなのかを読み取ることができる。

先進国では、精神病床数は日本がダントツに多い状況である。一方で劇的に減少に成功した国がイタリアだ。そして、2000年までに国立の精神病院を廃止した。

こころの健康ではやはり大事なのが食事らしい。血糖の状態が不安定になると、それらをコントロールしようとしてアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。その結果、精神的に不安定になりやすい。だから、糖質を適切にコントロールすれば良いわけだ。 そこで、本書では「糖質制限食」というのが特におすすめだそうで、この制限食ではカロリーはそれほど気にせずに糖質を抜いた食事にすればいいらしい。今度試そうと思う。

脳にブドウ糖は必要なものだが、急激に上げてはいけない。徐々にゆっくり上げるのがいいらしい。つまり、食事をして急激に血糖値が上がってしまうものよりは徐々に上がるものを選んで食べたほうが良いということになる。そこで、血糖値が上がる指標として「GI(グリセリックインデックス)」というものがあり、その値がある程度低いものを選べば良い。本書にも、主な食事ごとに表になっているので確認するといいかもしれない。この指標はブドウ糖を100としている。

油といえば飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があることはよく耳にする。飽和脂肪酸は常温では固まってしまうが、安定している状態なので保存がきく。不飽和脂肪酸は常温では液体だから、体の血管をつまらせること無く、体にやさしい食べ物とよく言われるが、そのぶん保存がきかない。

じゃぁ、保存できるようにすれば、売れるんじゃないか、そう考えられた結果できたのがトランス脂肪酸だ。すでにマーガリンでもおなじみ。だが、トランス脂肪酸は脳にダメージを与えると言われていて、あまり評判がよろしくない。なぜか。

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の中でも多価不飽和脂肪酸に水素添加という方法で化学変化を起こして常温でも固形化できるようにしたもの。つまり安定状態にしたものだ。だから、酸化しにくい。しかし、水素添加によって出来上がったものは自然界に存在しないものであり、その結果分解されにくい。それを体内に入れれば分解にとても時間とエネルギーを必要とするのは明らかだ。その結果、体内のミネラルやビタミンを必要以上に消耗することになる。それだけではない。トランス脂肪酸は体内に入ると体内の他の脂肪酸の働きを阻害し、活性酸素を発生させる。脂質でできている細胞膜は、トランス脂肪酸が取り込まれると細胞膜としての働きが不安定になってしまうのだ。また、体内のコレステロールバランスも崩してしまう。あまりいいもんじゃないらしい。 ちなみに、トランス脂肪酸は名前を変えて色々なところに登場する。コーヒーに入れるミルク、最近はコーヒーフレッシュと呼ぶらしいが、これもトランス脂肪酸。ショートニングというポテトを揚げる油やレトルトカレー、アイスクリーム、ケーキにも使われている。。。。たくさん使われている。マーガリンは食べられる形にしたプラスチックと言う言葉があるらしい。末恐ろしい。。。

他にも色々書かれていて、個人的にショックを受けた本だった。

【読書メモ】ヤクザと原発 福島第一潜入記

ヤクザと原発 福島第一潜入記
鈴木 智彦
文藝春秋
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この本の著者、鈴木智彦氏はヤクザに関する著者を色々書いているフリーライターだ。僕は以前のHONZの書評で知った「潜入ルポ ヤクザの修羅場」を読んで、内容の凄さに引きこまれて、あっという間に読みあげてしまったことを覚えている。本書もまさにそうだった。

本書では、著者自らが原発作業員として、福島第一原発に入り、復旧作業に当たる。それを行うこと自体がすごいことである。そこでは、メディア報道ではわからないヤクザとのつながり、作業現場でのあからさまなヒエラルキーの存在等々、他にも過酷な作業員の状況が伝わってくる。

原発では、線量と汚染度を組み合わせて危険度を判断している。しかし、メディア等では線量がかりが強調されがちで、実は汚染度がより深刻なのだという。放射性物質が蓄積している道路をクルマが走ると、放射性物質を舞い上げる。おすすると、それらを吸い込む危険がより増す。だから、タイベックを着たまま移動に使ったクルマは放射性物質が舞い上がっていて、もう使えない。

原発作業の裏側ではこのような状況で様々な人達が関わっている、そういうことを知る意味でも、本書はぜひ一読を薦める。

追記
著者が出演している動画が公開されています。
ニュースの深層 2012.01.24 1/3
ニュースの深層 2012.01.24 2/3
ニュースの深層 2012.01.24 3/3


【読書メモ】実況・料理生物学 (阪大リーブル030)

実況・料理生物学 (阪大リーブル030)
小倉明彦
大阪大学出版会
売り上げランキング: 59185
常々参考にしているおすすめ本サイトのHONZ。その中でも僕の場合は村上氏の書評を読んで購入する確率が高い事がわかった。この本も村上氏の書評を読んで購入した。 著者は大阪大学教授で神経生物学を専門にする小倉明彦氏。本書では「料理生物学」という講義の中で料理を作りながら素材や調理方法などについて、その歴史から科学的なうんちくまでを講義を聞いているように書かれている。
読んでみて僕もなるほど~となることが結構あって面白かった。
コロンブスが新大陸から持って帰った赤唐辛子。本当は胡椒を探すよう命じられていたが見つけられず、トウガラシを赤い胡椒と伝えたのが元らしい。だから、トウガラシは英語でred pepperと書く。

一般のカレーは香りが飛んでいるけれど、クミンをふりかけると本来のカレーの香りを再現することができる。今度試してみよう。
ブドウ糖を分解する際に必要な酵素にピルビン酸デカルボキシラーゼというものがある。ビタミンB1はその酵素が働くのに必要となる。ビタミンB1が不足すると、ピルビン酸までしか分解されなくなるのでエネルギーが十分に取り出せなくなる。

滋養強壮剤のアリナミンもビタミンB1の話からその成り立ちがわかる。ビタミンB1は別名チアミン。ニンニクに含まれるアリインが代謝されてできるアリシンとチアミンが結合するとアリチアミンとなり、これがニンニクパワーとなる。アリシンはニンニク臭の元だが効き目のもとでもあるから、無臭ニンニクは効き目が落ちてしまっているようである。最初からビタミンB1とアリシンを結合して吸収を良くしたのが、アリナミン。「へ~」だ。

ハンバーグで必要なこねる工程。この時に水を入れるのは浸透圧を利用している。つまり、水と一緒にこねると浸透圧の関係でお肉の細胞に水が入り込み、その状態でこねられると細胞が破裂する。その結果、粘りが出てきて、お肉の旨みが出るというわけだ。
クッキーとビスケットの違いは、その呼び名をフランス語にすると明らかになる。クッキーはフランス語で焼くという意味の"cuit"。ビスケットは"biscuit"。"bis"は「二度」という意味だから、ビスケットは二度焼いたという意味になる。だから、ビスケットのほうが水分も少なく、保存も効くというわけだ。

牛乳は細かい油を水に混ぜたものという話。油のつぶが光の波長より大きいので反射する光は長波長光、短波長光にかかわらず等しく反射されるので白い。

まだまだいろいろな「へ~」があった。

2012年1月3日火曜日

【読書メモ】日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)

日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)
原 研哉
岩波書店
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HONZの書評を読んで購入。デザインに関する本なんて買ったことなかったので恐る恐る購入。著者の方も恥ずかしながら初めて聞いた名前。
普段何気なく接しているデザインにもこういう意味、見方があるんだなとしみじみ。慈照寺東求堂、行きたくなった。

2011年12月17日土曜日

【読書メモ】銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
ジャレド ダイアモンド
草思社
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 先日読み終えた上巻に引き続き下巻も読み終わった。上下巻に渡るボリュームのある本だけど、不思議とそれと感じずに読めてしまった。というか、それぐらい面白い。帯を見るとピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞している。なるほど。  本書は「文字」、「発明」、「集権国家」について。さらに、上巻での内容を踏まえて、オーストラリアとニューギニア、中国、アメリカ、アフリカへと、様々な発明、農作物などが伝える側と伝えられる側とに別れる理由を展開していく。  大陸の地形、育つ農作物と野生動物そして、当時の国家の形態。これらが全てに作用する。物事には根拠があるということですね。

2011年12月4日日曜日

【読書メモ】夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか
タラ・パーカー=ポープ
NHK出版
売り上げランキング: 2146
HONZの書評をみて購入。この本は、雑誌やテレビでよくやっている「男女の関係を長く続けるには男性はこうしたほうがいい。。。、女性はこうしたほうがいい。。。」といった点を、実際に様々な実験の結果や生物学的観点から論じている。読んでいて、いろいろ「なるほど〜」。
夫婦ゲンカは少ないほうがいい、というのはどうも一概にはそうとも言えないようで、お互いわだかまりを抱えて我慢し続けるよりは、喧嘩をしてとことん話しあったほうがいいらしい。(僕は衝突が少ないに越したことはないような気がしたけど)お互いの関係を改善する良い機会なのだそうだ。僕は、できれば喧嘩はしたくない。
本のタイトルにもなっている「夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか」。男性は女性に比べて喧嘩によるストレスに弱いそうで、心拍の上がり方も急激で回復も遅いことが研究で明らかになっている。そのため、極力喧嘩を避けるし喧嘩でもあまり声を荒げないで黙る。
でも、喧嘩はしないよりやっぱりしたほうがよいらしい。そうすると、重要なのは喧嘩の仕方だ。言葉の選び方、そして、最初の3分が大事らしい。。。。

この本にはこのあたりのことが詳細に書かれている。普段の家事の分担に対する意識の違いや、財布はひとつにすべきか別々にすべきかなど、興味深い話もある。僕はこの本を読んだ時点では独身だけど、十分楽しめる内容だった。